表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

出処の分からない知識を持つ者は神か悪魔か

作者: 朝樹 四季

その者に初めて会ったのは、学園にその者が入学してきてからだった。


この国では貴族は必ずこの学園に通わなくてはならない。

それに則り、その者は入学してきた。


そして直ぐに頭角を現した。



既存の魔法とは全く違う威力・体系の魔法を使い、魔法界に革命をもたらした。

かと思いきや、学問でも未知の計算方法を使い、難しい計算を短時間であっさりと終わらせた。

はたまた、解読方法の分からなかった古代文字をあっさりと読んでみせた。

それでいて、武術にも優れ、課外授業で現れた強大な魔物を誰にも怪我させることなく一人で倒してみせた。


この者は神か悪魔か、非常に興味が湧いた。

同時に危険だと判断した。

もしこの力がこの国に、我々に向いた時、対抗出来るものなどいない。


少し近寄って話をしてみると、この者が根本的に貴族や王族と言った体制をどこか軽んじていることも分かった。

勿論、国家転覆しようという意思も感じられなかったが、成り行き上そうなることになったとして、この者は抵抗することはないだろうと。

つまりそれは、誰かに誘導されて牙を剥く可能性があるということだ。

危うすぎた。



そもそもこの者は根本的に我々と何かが違った。

どこから知識を得ているのかも疑問だし、価値観があからさまに違う。

この国では当たり前のことさえ、受け入れられない仕草をすることは一つや二つではなかった。


それはそう、まるで全く異なる別の国を思い浮かべているかのようだった。


誰も知らない未知の単語をいきなりさも当たり前であるかのように話し、元々あったものであるかのように説明する。

誰も知らない概念をまるでそれが絶対的に良いものであるかのように話し、この国を変えようとする。

誰も知らない手法をさも当然のようにやろうとし、元々使われている方法を根本から否定する。

誰も知らない物の作り方を具体的に話せる割に、それを実現出来る道具が存在せず道具作りから行う。


全て知っていることをこの国でも実現しようとしているかのようだった。



だから、かの者は神か悪魔から遣わされた者、もしくは当人だと思った。

まぁ、当人だとしたらお粗末すぎるので、多分遣わされた者だろう。


となれば、何が目的で遣わされたかが問題だ。


結果から見ると、この国は、我々の生活は良い方に変わっているように見える。

かの者を称賛する者が多いのがその証明だろう。

権力者ですらかの者の行動を後押しするくらいだ。


しかし、別の見方をすれば、この国が別の国に書き換えられているようにも見える。

つまり乗っ取りだ。

これが目的なら、やり方から考えても悪魔の所業としか思えない。


逆に神の御業だとしたら、理由は何だろうか。

神の御心が我々程度に分かるはずもないが、神が我々を不幸にするようなことをするはずがない。

何かしら我々の為になるからかの者を遣わしたのだろう。


分かりやすいところだと、我々の生活の向上だろうか。

先程も言った通り、実際に我々の生活は良くなっている。


特に孤児院やスラム街だったところなど分かりやすく生活が向上した。

でも、孤児院やスラム街に来る人も増えた。

就職支援をしているから出ていけるようになった人達という成果はある。

それに隠れてかの者は気付いていないか、事態を軽視している。


人が減っていない以上、就職支援はいつまでも出来るのだろうか。

何せ、病気や怪我で人が減るということにも対処し、人が死なないようにしているのだ。

人は増加の一方だ。


これは結果的に戦争を起こさせることになるのではないだろうか。

無駄に人が居るということは戦力が潤沢ということ。

戦争を起こす敷居が低くなる。

そして戦争によって人が減れば、食い扶持も減らせる。

人の命の有効な使い方だ。



ダメだ。

悪い方にしか考えられない。

やはり悪魔の所業だろうか。


人々の生活を向上させたところで、向上した生活を維持するだけの基盤がこの国にはない。

いや、周りの国も同じだろう。

やはり、どう考えても合わないのだ。

無理矢理辻褄を合わせようとしても、かの者が死んだら一気に崩れる。

そうとしか思えない。


だからと言って、今更止められるか?

それは否だろう。


人は一度贅沢を覚えると、元の暮らしには戻れない。


例え傷を小さくしようと、今かの者を殺したとしても止まらない。

皆自らかの者の意思を継ごうとするだろう。



ああ、もうとっくにこの国は終わっている。

魔女狩りが起こってもおかしくないのに、起こらないのは気付いた時には手遅れだから。

もしくは自分たちが生きている間は問題ないから。

そのどちらかではないかと思ったのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] >やはり悪魔の所業だろうか 現地人からすれば当然の恐怖だな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ