恐怖 鬼と人の違い
9話
「そういえば」
私はアイスを食べながら思い出したように疑問をぶつける。
「やっぱり鬼ってことは昔結構やんちゃしてたりしたんですか?人間食べたりしますし」
「んー?ワシはそうでもなかったのう」
富士乃さんは上を向いて昔を思い出しているようだった。
「そもそもワシがこの樹海に住むようになったのは同族と鉢合わないためじゃからのう」
「ということは他の鬼の方は結構暴れてたんですか?」
「まぁ鬼じゃからのう、村々を襲っては盗みを働き人間をただただ殺す。鬼とはそういう生き物じゃ」
「でも富士乃さんはそうじゃなかったんですよね?」
「うむ、ワシはそもそもそういうのに興味なかったしの。わざわざあんな奴らを相手にしたくないし一緒にもされたくなかった。じゃからワシは人も鬼もいないここにずっと住んでおるのじゃ。ワシは生きた人間を食うた事はない。ここの死体を勝手に調理してるだけじゃからのう」
それもそれで怖いけどなぁ、という感想をグッと飲み込み話を聞いていた。
「でものう、こうして『いんたーねっと』を見て考えが変わったのじゃ。人間もまた鬼と同じく恐ろしい存在じゃとな」
そう言うと目を細めて遠くを見た。
「ここに来る大勢の自殺者達は皆社会という枠組みに殺されたのじゃないかのう。枠組みに入れないということは排除されてしまうもの、どうにか自分を殺して枠組み入ろうとした結果無理をして自ら命を絶った。そういう奴を時折見るよ、『えすえぬえす』での」
「自分を殺し続けた結果が・・それですか」
「勿論それだけではないのは分かる。じゃが、人は賢いのにどうしてそのようなことが起きてしまうのか、時折疑問に思うのじゃ。鬼は自らの手で人を殺す、人はどうじゃ?本当に鬼とは違い弱者から奪わないか?そう思ってしまうのじゃ」
富士乃さんは私の頭を撫でる。
「刹那、ヌシはどうかワシの腹に入るまではここから出ないでくれ。ヌシがワシに食われる以外で死んでしまうのは・・少し悲しい」
「富士乃さん・・分かりました」
富士乃さんも富士乃さんで人間に対して思うところはあるのかもしれない。
私は、撫でてもらった逆の手を掴みこの人から離れないと誓うように強く握りしめた。