畑 野菜畑で捕まえて
6話
樹海から家の方まで帰ると、家の後ろの方にも広大な土地があることに気づいた。
そっちの方を覗くと、富士乃さんが畑仕事をしていた。
これもまた今気付いたのだが、家以外の土地のほとんどは畑で野菜や米を育てているようだった。
「おぉ、帰ったのか」
富士乃さんが私に気付いて手を振る。
小柄な体なのに麦わら帽子とタオルを巻くその姿はどう見ても田舎のおばあちゃんだった。
「あのー、これ一人で育ててるんですか?」
広い畑を見て私は聞く。
一人で育てるには広すぎるのではないかと思ったからだ。
「まぁ最近はいわゆる『おーとめーしょん』になってみたいだからのう、実際昔よりは楽になっているのじゃ」
「えぇ・・そんなところまで最先端なんですか・・」
スマホといいこんな樹海の奥地で何故そこまでの設備が整えられるのか。
それもまた聞いてみると。
「うーむ、ワシの知り合いに物流関係の金持ちがおってな、そいつがワシの身を案じて色々してくれたのじゃ。だから機械周りはそいつや友人に任せとる」
ワッハッハと笑うその姿は豪快だった。
金持ちの知り合いもいるのかぁ・・
「まぁアレじゃ、1000年以上も生きとったら誰かしら金持ちにもなろう。じゃがワシは金になぞ興味ないからのう。こうして静かに自分で育てた美味いもんと一緒にのんびり暮らせたらええ」
「なんか・・生き方がやっぱり人間のそれとは若干離れてますね」
「まぁ、都会の人間はセコセコ忙しそうじゃからのう。ワシはああいうの無理じゃ。力仕事なら得意じゃけどな、鬼だし」
「・・」
「アレ?今のやつ、ワシお得意の『鬼じょーく』ってやつだったんじゃけど、面白くなかった?」
「あんまり・・」
「残念じゃ・・」
しゅん、と肩をすぼめる富士乃さんを、私は少し可愛いと思ってしまった。