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帰宅 樹海とは思えない場所

「えっ」

「ここがワシの家じゃ」

樹海の中をただ富士乃さんの後ろについて行ったら急に普通の一軒家が出てきた。

二階建てで部屋も部屋も一人暮らしじゃ何個か空いてそうな家族が住むそんな一軒家。

そこに私は案内された。

「何を驚いておるんじゃ?」

「いや、樹海の中にこんな立派な建物あったら誰でも驚きますって」

「心配ない心配ない、ここらへんは樹海の奥の奥じゃ。到達できるものはそうそうおらんし、おったとしても目の前で力尽きとるわい」

がっはっはと豪快に笑う彼女を見て、改めて鬼なんだなと確認してゾッとした。

多分ここら辺で死んでくれた方が色々と都合がいいんだろうな、色々と。

「ほれ、いつまでぼーっとしとるんじゃ?中に入りんしゃい」

「あ、すいません・・お邪魔します」

「他人行儀じゃのう、一時的とはいえここがおヌシの家になるんじゃから」

「はぁ・・」

中の造りも一軒家そのもので、鏡と靴箱のある玄関があって、その先にリビングが見える。

一体誰が、何のためにこんなところにこんなものを作ったんだろうか。


「さて、一息つく前に・・こっちに来んしゃい」

「はい・・」

二階に上がりとある部屋に通される。

そこに広がっていたのはあり得ない光景だった。

いや、『当たり前だからこそあり得ない光景』だった。

そこにはデスクが一つ置いてあり、その上にはそこそこ性能の良さそうなパソコンが置いてある。

その反対側にはテレビが置いてありテレビには何個かゲーム機が繋がっている。

ゲーム機自体はそんな新しいものではないように見える。

ただ、あまりにも『普通の個人部屋』だったのが驚いてしまった一番の理由だった。

「なんじゃ?なんか足りぬものでもあったか?ワシは普段ここで暮らしてるからこれで事足りると思ったのじゃが・・」

「いや、そういうことではなく・・え?なんでパソコンとかゲーム機があるんですか?」

「ネットも繋がっておるぞ、もちろん電気もな」

「えええええ・・・・」

なんでもありか、この家。

「さらに言えば『わいふぁい』も飛んでおる。ほら、これワシの『いんすたぐらむ』じゃ」

思った以上に俗世に染まった鬼娘を目の前にしてどうしようか悩んでいると。

「ヌシも『すまほ』くらい持ってるじゃろ?ここではそれも使えるから安心せい」

そう言って私が私のスマホを取り出す。

嫌なことがたくさん詰まったスマホ。

今にも投げ出したくなりそうなスマホがそこにはあった。

「・・ぬ?うむ、ちょっと待っとれ」

そう言うと富士乃さんは下に行ってしまった。

そしてすぐに戻ってきた。

「ほら、これがここでのヌシの新しい『すまほ』じゃ。よく分からんがそれは使いたくないのじゃろう?ならこれを使うが良い」

「あ、ありがとうございます・・」

「気にするな、家畜の環境を整えるのも飼い主たるワシの仕事じゃ」

「あはは・・家畜、ですか・・」

そう言うと新しいスマホを見てグッと力を入れる。

私は食べられる、いつになるのか分からないけど。

そういう意味で家畜というのは間違いない。

でもこの人は、この鬼娘は、今まで私が出会ってきた中でも全然違う人で、私のことを本気で想ってくれている人なんだと思った。

そう感じた時、なんだかフッと微笑みが溢れたようだった。

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