Halloween ghost festival night
ぎりぎり冬童話、間にあった……
6歳になる金髪幼女のNiOちゃんには、とっても楽しみにしているお祭りがあります。
それが……。
ハロウィーンです!
だってハロウィーンでは、可愛い衣装を着ることができるんですから!
「パパ、ママ!
どう?
似合うかな?」
NiOちゃんは、テレビアニメ『ふたりはテラカワ!』に出てくる魔法少女テラカワ・インジゴブルーのドレスを着ながら、嬉しそうにクルクルと回っています。
「凄い!とっても可愛い!」
「本物のテラカワみたいだね!」
パパとママが笑顔でNiOちゃんの頭を撫でます。
「えへへ~」
NiOちゃんが照れると、パパとママから貰ったカボチャおばけのお菓子袋も、嬉しそうに緑色の蝶ネクタイを揺らすのでした。
「ゴメンねNiOちゃん。
今回はパパのお引っ越しのせいで、遊びにいけなくて」
パパが申し訳なさそうにNiOちゃんに謝ります。
「うん、私は大丈夫!
お家の中だけでも、全然平気!」
NiOちゃんは、本当はパパやママと一緒に他のお家に行って「トリック オア トリート!」をしたかったのですが。
最近パパのお仕事の都合で引っ越した先には、あまりハロウィーンのお祭りの習慣がなかったのです。
お祭りがないなら、仕方ありませんよね。
NiOちゃんは我慢することにしました。
「それにしても、新しいお家が安くて良かったね、パパ」
「あんまり信じなくていいと思うんだけど、裏になんだか道があるみたいだからね」
パパとママはよくわからないお話をした後、NiOちゃんに向き直って、ぎゅっと抱きしめました。
そのあと、ママは仲間の魔法少女のコスチュームを。
パパは敵キャラであるモンスターの服を着て、皆でテラカワごっこをしたのでした。
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「う……ん……むにゃ……」
夜中に目が覚めたNiOちゃんは、窓の外が明るいことに気が付きました。
なんだか、家の外が、にぎやかなのです。
時計を見ると、夜中の2時。
こんな時間から、お祭りでも、やっているのでしょうか?
「……あ、もしかしたら……!」
カーテンを開けると、ほら、やっぱり!
窓の外には、お化けや幽霊のコスチュームを来た人たちが、たくさんいました!
「ここでも、ハローウィンはあるんだ!
ただ、夜遅いだけ、なんだな……!」
NiOちゃんは顔をほころばせると、いそいそとテラカワのドレスに着替えます。
そして、空っぽになったカボチャおばけのお菓子袋に、お菓子をいくらか詰め込んで、窓からお祭り会場に飛び込んでいくのでした。
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真夜中だというのに、お祭り会場は賑やかでした。
道の両サイドには、たくさんの出店が立ち並んでいます。
どれも骸骨ジュースとか、人肉ソーセージとか、ハローウィンらしい食べ物を売っています。
そして、それらの食べ物を、お化けに扮した人たちが、笑い声を上げながら食べて歩いています。
「すごい、くぉりてぃーだ……」
NiOちゃんは、最近覚えた言葉を呟きます。
だって、あそこにいる人は赤ちゃんみたいな大きさだし、その隣には3階建てくらいの大男がいます。
またその隣には、紙きれみたいにペラペラな人とか、その横の人なんかは、下半身が蜘蛛みたいになっています。
一体、どんなコスチュームを着れば、そんな風に見えるのか、NiOちゃんには見当もつきませんでした。
NiOちゃんはあたりを見渡しながら、持ってきたお菓子をほおばりながら、そして鼻歌を歌いながら、祭りの道を練り歩くのでした。
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しばらく道を歩いて行くと、大きな鳥居が見えました。
鳥居の向こうには大きな森が広がっていて、その先にも道は、ずっと、ずうっと、繋がっているみたいです。
NiOちゃんは笑顔で、鳥居に向かって走ろうとして。
……気づきました。
あれ?
おかしいな?
……おうちの近くに、こんな大きな森、あったっけ?
唐突に血の気の引いたNiOちゃんは、真っ青な顔で来た道を引き返します。
なんだここ、なんだここ!
おかしい、絶対、おかしい!
通り過ぎる人たちに何故かぶつかることもなく、人込みを駆け抜けるNiOちゃん。
「ここ、どこ……?
おうちは?
どこ、どこ、どこ?」
NiOちゃんは泣きそうになりながら、自分の家を……家の窓を、探します。
でも、窓もドアもいくつもあり過ぎて、一体どこから出て来たのか、NiOちゃんは思いだすことが出来ません!
「う、う、うううううう……」
NiOちゃんは、その場でうずくまって、泣き出してしまいました。
テラカワのドレスはすっかり汚れてしまったし、いつの間にかカボチャおばけのお菓子袋はどこかへ行ってしまいました。
ああ、きっと、もうだめだ。
ここから、二度と、出られないかも。
そんなことを考えていたNiOちゃんの肩を、誰かが、叩きました。
「……え?」
そこには。
カボチャのお面をかぶって、緑色の蝶ネクタイをした小さな男の子がいました。
男の子は、右手に板チョコを持ちながら、左手でNiOちゃんに手を差し伸べます。
「……だ、だれ??」
NiOちゃんが男の子の手をつかむと。
男の子は、NiOちゃんを連れて、走り出しました。
「え、え、え?」
ハロウィーンの祭りの人込みを駆け抜ける二人。
やがて、屋台と屋台の間にある開きっぱなしの窓の前につくと、男の子はその足を止めます。
「え、え、え?」
NiOちゃんは、困惑しながら、窓を指さして、尋ねます。
「ここ、出口?
わ、私の、家?」
男の子は、カボチャのお面を縦に動かすと。
右手にいつの間にか持っていた棒付きキャンディーを、NiOちゃんに差し出しました。
「あ、ありがとう……」
NiOちゃんは戸惑いながらもそれを受け取って、窓から家の中に、入りました。
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目が覚めたNiOちゃんは、ちゃんと自分が家に着いていることに気が付きました。
「……ゆめ、だったのかなあ?」
最初にNiOちゃんが考えたことはそんなことでしたが。
「なんでこんなに衣装が汚れているの!?」
ママに怒られて、夜のことが、やっぱり夢じゃないと確信するのでした。
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あの後、昼間に窓の外を見たNiOちゃんでしたが、そこには日当たりの悪いちょっとした空間があるだけでした。
「あの時と、違う……。
変なの」
不思議に思って、もう少し奥に進みますが、すぐに壁に突き当たります。
何の変哲もない、ただの壁です。
隅っこに塩が盛られていて、壁の下の方に小さな鳥居が書かれているけど、それ以外は本当に、何の変哲もありません。
「……あれ?」
ふと気が付くと。
壁の近くに、ぼろぼろになった、カボチャおばけのお菓子袋が、ありました。
そして、何故だか、中に詰めていたはずのお菓子は。
一つ残らず、無くなっていました。
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それからNiOちゃんはカボチャおばけのお菓子袋を持ち帰って、綺麗に洗って、机の上に飾るようにしているみたいです。
でも、不思議なんですよ。
NiOちゃんがカボチャおばけのお菓子袋の中に、お菓子を入れると。
なんでか、お菓子がいくつか、なくなっちゃうんですって。
今まで書いた童話をまとめてみました。
意外と多くてビックリ。
もはや童話作家と言ってもよい(増長)
ゴブリン売りの少女
https://ncode.syosetu.com/n8131eg/
マッチ売りの少女がクリスマス・イブを焼き尽くすようです
https://ncode.syosetu.com/n6470el/
ウラシマ~海に舞い降りた天才~
https://ncode.syosetu.com/n9100en/
桃太郎よ神話になれ
https://ncode.syosetu.com/n2607el/
NiOさん(植物)
https://ncode.syosetu.com/n0763dr/
クリスマスはもともとイエス・キリストの誕生日では無くサタンとか異端の神々を祝うお祭りが起源と言う説があるなんてトリビアとは全く関係ない冬童話2016のために書いたチビで泣き虫のサンタさんが頑張る童話
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まんまる虹の森https://ncode.syosetu.com/n8480ff/