94.伝言
皆さん、GWはいかがお過ごしですか?
YOPPYは一日中家に居ます。
「ハルカ!ハルカ!」
「ハルカさーん!」
がさっ
「うん、とりあえず勝手に入ってくるのは辞めてくれないかな。」
「あっ、ごめん。でさ、見た感じお昼ご飯も終わってそうだし、」
「特訓の続き、お願いします!」
「あぁ、分かった。よし、テイルも行くぞ。」
「分かったわ。・・・さっきの見学の三人は良いのかしら?」
「皆は、レベルが違い過ぎて目が回るから遠慮しておく、って言ってました。」
ハハ・・・本当は将来の為にも見ておいてほしいのだが、まぁいいか。無理に連れて行くものでもない。
俺達四人は森に移動した。この森にミア一人を放すのは危険だと分かったし、逃げている時のミアの動きを見る限り良さそうなので、ミアも模擬戦班に入れる。
「それじゃあどうしようかな・・・リーアとミアで模擬戦やってみるか。」
「え!?お姉ちゃんと!いやいや、無理ですって!」
「良いんじゃない?戦ったことなんて無いし、もしかしたらミアが勝つかもよ?」
「範囲は森全体。俺が監督として移動先でも警護を行う。どうだ?」
「え?そしたら私はどうすれば良いの?」
「テイルはスキルでも適当に使って、付いてくれば良いだろ。大丈夫。何かあった時はテイルの事も守るから。」
テイルが上手く付いてこられるかどうか心配だが、まぁその時はその時だ。個人的にリーアとミアの模擬戦にも興味がある。
「それでは、始め!」
ミアはリーアのように最初から突っ込むことはしなかった。自分のスピードに自身が無いのか、相手が速いことを考えた上での行動かは分からないが。
リーアは俺が教えた通り、まずは相手の動きを観察し、隙を作る為に動き回り始めた。だが、今回の範囲は森全体。ミアも自在に動き回れる。
枝の上を物凄いスピードで跳び移りながら、お互いにチャンスを伺っているようだ。
「ミア!もっと効率の良い動きを瞬時に判断しろ!」
「はい!」
「リーアも考えろ!どこに動けば良い!」
「―――ここっ!」
ちゃんと試合中のアドバイスも忘れない。
先に仕掛けたのはリーアだ。今まで枝の上だけだった戦場から、一度地面に降り、ミアに向かって跳ぶ。見失ってからの下方向からの攻撃は対処が難しい。俺も一度それでやられかけたしな。
「おりゃっ!」
リーアのパンチを、ミアは体を捻らせて躱し、その回転を使って上から蹴りを入れる!・・・が、そう上手くはいかない。
「カウンターなんて、余裕なんだよ!―――あっ、やばっ!」
リーアがミアの蹴りを流しつつ、足を掴んで地面に叩き付けた。頭から落ちてしまっているので、一応怪我をしないように俺が受け止めに行く。
「あ、ありがとうございますハルカさん。」
「ごめんミア!大丈夫!?ハルカも、ありがとう!」
「気にするな。今のリーアの反応は良かったぞ。ミアも躱したところまでは良かったんだけど、蹴りの動作が大き過ぎた。だから、掴まれたんだ。」
「なるほど。ありがとうございます!もう一回行ってきます!」
「それじゃ、再開!」
二人の移動速度が速いので、付いていくのは結構大変だ。テイルは何とか付いてこれている状態だ。
「はぁ、はぁ、これじゃあ私、見る事なんて出来ないわよ。遠方移動!」
「まぁ頑張ってくれ。今のテイルに模擬戦はキツいだろうし、スキル慣れと体力作りだと思えば良い。ほら、今度はあっち行ったぞ。」
今は完全に空中戦状態だ。お互いに攻撃を躱し合い、たまに当たると木の幹を蹴って反発し、それ以上の威力が返ってくる。それが、一回地面に着くまでに何往復も行われている。物凄いスピードだ。
「んやぁっ!」
ミアが唐突にパンチの方向を下向きに変える。流石のリーアも、これには反応しきれない。
ずざぁっ
「やるね!ミア!」
「リーア、大丈夫か?悪い。カバー間に合わなかった。」
「ボクは大丈夫だよー。それよりさ、今のミア、凄くなかった?」
「あぁ。方向転換のタイミングが完璧だったな。俺でもリーアのスピードに合わせるのは大変なのに。」
「そうですか?エヘヘ、ありがとうございます。」
その後も模擬戦は続き、二人共ヘロヘロになったところで終わりにして集落に戻る。ミアの身体能力は今後上げていけばいいとしても、二人共良い動きをするようになった。特にリーアは、戦況把握と判断がとても速くなった。
二人を家に帰し、俺達も借りている家に戻る。時刻は33時。そろそろ日も落ちていたと思うので、良い具合の時間に森から出てこれたな。
「なぁテイル。俺の勘なんだけどさ、明日もあの二人が朝から押しかけてくる気がするんだが。」
「ええ。私も同じ事を考えていたわ。」
「どうすっかな・・・」
その時、通話の腕輪から着信音が鳴った。
ピピピピピっ、ピピピピピっ、ピピ
「はい、ハルカです。どうされました?アルバートさん。」
『ハルカさん、今、テイルさんは?』
「私も居ます。」
『それは都合が良い。お二人は、ナシヤットのギルド出身ですよね?』
「ええ。」
『では、そこの支部長のアルバルトはご存知ですか?』
アルバルトさんね。うんうん、知ってる知ってる。アルバートさんと見た目が瓜二つのおっさんで、俺達のランクをFからEに上げる時に、酷い課題を出した人だ。
「分かります。」
『良かった。では、アルバルトからの伝言です。
ハルカさん、テイルさん、お久しぶりです。実は今朝、ナシヤットのギルドに一通の手紙が届きました。差出人は・・・魔王軍。』
「魔王―――っ!?」
「へぇ、魔王軍ねぇ・・・」
『鑑定の結果、本物であることが判明しています。そして、その内容を要約すると、明々後日ナシヤットに幹部が二人、攻めてきます。お二人には是非ナシヤットに居て頂きたいと共に、すぐに用意できる戦力を連れてきて頂きたいのです。よろしくお願いします。
・・・との事です。』
「明々後日、ですか・・・分かりました。すぐにナシヤットに向かいます。」
『よろしくお願いします。では。』
これは大変な事になってしまった。とりあえず、今日の夜にでもここを出発しよう。ここが森の中のどこらへんの位置か分からないが、シィ砂漠の広さを考えても、一日か二日、本気で移動すればナシヤットに着くだろう。
「とりあえず村長のところに話しに行くぞ。」
「ええ。」
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