92.逆襲
連休初日、一日中寝ていたYOPPYです。
完全に気を抜いていた俺は、息を殺していたクマに背中を裂かれ、そのまま連続で攻撃され続けている。リーアとミアが助けてくれようとしているが、2体ずつに阻まれて近付けない。それにしても、心臓を剣で刺したはずなのに、何故か起き上がって攻撃してきている。攻撃力も落ちていない。
―――このままじゃマズい・・・!
「プ、絶断壁!」
がきぃん
初めて手と剣先以外から魔法を使った。
はっきり言って、魔力管は体中にあるのでどこからでも魔法が使える。ただ、魔力管が集中しているため魔力を集めやすく、方向も調整しやすい掌から使うのが一般的なのだ。
ただ、防御魔法に関してははっきり言ってあまり関係ない。大量の魔力を背中側に集めるのが難しく、時間が掛かったが、背中に絶断壁を張って攻撃から逃れた。
「ハァ、ハァ。リーア!ミア!撤退するぞ!」
「駄目!こいつらを村に近付けさせるのは危険だよ!」
「それに、この強さの魔物に対抗できる人は集落に居ません!」
ここで倒しきらなきゃいけないということか。だが、背中から血がどんどん失われていく。背筋に力が入らず、真っ直ぐ立っていられない。しかも魔法は当たらない。
リーアとミアの相手をしていた2体のうち、1体ずつが俺に向かってきた。とりあえず考えがまとまるまで生き残ることが優先だ。
「重力指定!」
やはり重力系は効く。今は押し潰すというより止めておくことに重きを置き、魔力消費は少なめだ。
あまり派手に動くと、血も多く失い、傷も塞がらない。かと言って、俺の突撃に対して反応してきた奴らだ。しかも刺したはずなのにピンピンしている。一瞬でカタを付けられる気もしない。
ピピピピピっ、ピピピピピっ、
全くこんな大変な時に何だ。テイルと繋げている通話の腕輪から着信音が鳴っている。
「テイル、今話している暇はないんだが・・・」
『何かあったの?あんまりにも戻って来るのが遅いから、心配しちゃって。』
「あぁ。大問題だ。このままだと俺もリーアもミアも、全員死ぬ。」
『はぁ!?ちょっ、ちょっと!詳しく説明しなさいよ!』
「えーっとだな、まず、クソ強い魔物5体と遭遇した。俺は背中がズタボロに裂かれていて、リーアとミアは逃げ回っている。俺が今3体押さえてるが、魔力消費的にも長くは持たない。」
さっき一回絶断壁を使ったが、まぁ重力を弱く設定しているし、数十分は持つだろうけど。
『その、魔物っていうのは?』
「なんて言うかな・・・足が無くて、爪が長くて、魔法が効かなくて、刺しても死なないクマ、かな。」
『クマ、ってのがよく分からないんだけど・・・』
そうか、この世界ではクマが通じないのか。
「毛が生えてる、ゴツい4足歩行の肉食動物。今は2足歩行。」
『スピードが速い?』
「あぁ。」
『それ、知ってるわ。小さい頃読んだ絵本に、怖い魔物として出てきたの。』
「本当か!?」
『そのお話の中では、勇者が足元を斬って倒していたわ。』
「ナイスだテイル!あと10分で帰る!それじゃあまた後で!」
『えっ、ちょっと待っ』
ぶちっ
これは思わぬ所から光明が見えたぞ?足元、か。というか、絵本になる程の魔物って、結構強いんじゃないか?
「リーア!ミア!こいつらの弱点は足元だと思う!俺が斬るから、援護してくれ!」
「了解!」
「分かった!」
これは重力指定を解除して標定加反発に変えないと足元が狙えないな。背中はまだまだ痛んでいるが、魔力が尽きる前にさっさとやってしまおう。
「解除!」
押さえつける力が無くなった瞬間、一気に立ち上がって俺に襲い掛かってくる。リーアとミアが俺の後ろに来たので、二人を追っていた2体もこちらに来る。
「全てを引き込みし地の力、我が元において反せし物と成れ!重力反転!」
ピタッ
5体の動きが一瞬にして止まる。何とか動こうとしているのは伝わるが、全く逆らえていない。姿勢を低くし、手に剣を出現させる。
「超攻撃!」
足元の影部分を地面スレスレに一気に斬る。すると、体全体が影のように薄くなり、そして消えた。
「倒した、の?」
「ハルカさん、やりましたか?」
「多分・・・?」
こういう時に役立つのはあれだ。魔銅板。無限収納から魔銅板を取り出し、内容を見ていく。
ハルカ・タチバナ
職業:旅人
獲得スキル:
強攻撃
発動すると、攻撃時にAPが1.1倍に上がり、武器を使用する場合は武器の強度も上がる。
超攻撃
発動すると、攻撃時にAPが1.3倍に上がり、武器を使用する場合は武器の強度も上がる。
無限収納
時間が止まった別空間で持ち物を管理する。上限は無いが、生きていると入れない。
恒温変移
無意識でも発動する。体温を調整することができるが、極端な調整は出来ない。
回復促進
HP、MPの回復速度が速くなる。怪我などの回復も速く、生命維持に強く関わるほど促進率が高まる。
魔力探知
魔力が見えるようになる。魔力量が低いとモノクロだが、高い部分は量に応じて色が付く。また、魔力の動きを感じる事が出来る。
暗視
光を多く目に取り込み、暗い場所で視界を明るくする。明るい場所で発動すると失明する可能性があるので注意が必要。
レベル42
Dランク
ステータス
AP:2721
DP:1088
HP:3445
MP:3205
魔物討伐数
F スライム:192 スライフ:23
E クルモ:84 シイタル:82 ツノネズミ:61 カルプイル:65 ネブリア:11 べム:16 タイラメ:5 ゴブリン:63
D パウパティ:13 チェイス:8 レッサーグレイバス:2 ホブゴブリン:13 マジックゴブリン:13 ナイトゴブリン:18 ボアシシ:25 フィテラ:12
C イゼンポッド:32 グレイバス:1 スカラピア:1 ゴブリンロード:1
B モウラヘイラ:1
A メディヴェド:5
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