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87.宴

誤字報告ありがとうございました。

今後もよろしくお願いします。

「えー、それでは、我らの仲間を救って頂いたハルカさんとテイルさんに村を代表して感謝の意を。」


 カルトさんが壇上で言う。そして俺達も同じ壇に上げられている。

 広場のような場所に机が並べられ、食事が乗っている。集落の全員が出てきており、結構な人数だ。


「ではハルカさん、乾杯の音頭をお願いしてもよろしいですか?」


「え、俺ですか?」


「お願いします。」


「私が代わってあげt・・」

「分かりました。では、やらせていただきます。」


 広場の人達の視線が俺に集まる。その中に、リーアとミアの姿が見えた。ここはバシッと決めないとな。


「えー、急に来たにも関わらず、こんな盛大に歓迎して頂き、ありがたい限りです。俺が言うのも何ですけど、皆さん!目一杯楽しみましょう!乾杯!」


『『『乾杯!』』』


 森中に声が響き渡る。そこからは俺達も壇を降り、宴に参加する。



「ハルカ!この料理すっごく美味しいわよ!」


「ん?どれどれ―――ぉ!本当に美味いな!何だろうこれ?」


 俺が食べているのは、何かしらの木の実が焼いてあるだけのものだ。ただ、その実の味が濃く、牛肉のような味と少しの甘みが口の中で広がる。


「それは、この森の特産品のようなものです。他の森では、取れる場所は限られているのですよ。」


 近くにいた獣人の人が教えてくれた。

 少し飲み食いしていると、リーアが走ってきた。


「テイル!ハルカ!どう?楽しんでる?」


「リーア!えぇ、とっても楽しいわ。皆優しく接してくれるし、食べ物も美味しいし。」


「なら良かったよ!」


「ミアはどうしたんだ?」


「ミアなら、同年代の友達とあっちで話してるよ。捕まった時のことを、武勇伝みたいに語っているわ。自分では何にもしてないのにね・・・」


 ミアはあの時の恐怖は大丈夫になったのだろう。広場の隅で、ジュースを飲みながら何人かの友達たちと話している。


「リーアは、同年代の子は?」


「それが、居ないんだよねぇ。だから普段は、少し上のグループで話したり、小さい子達の相手をしたりしているよ。」


「じゃあ俺達が、同年代で初めてってことか。」


「そう!だからとっても嬉しかったの!」


 そうそう、構ってくれる友達が居ないってのは悲しいものなんだよなぁ。分かる。分かるぞその気持ち。



 その後も宴は続き、気がつけば日が暮れ始めていた。酔っている大人や、小さい子達は寝てしまっているようだ。そんな中、壇を使って一発芸大会のような物が始まった。カルトさんは、『お恥ずかしいところをお見せして・・・』と言っていたけど、楽しいから万事オーケーだ。


 はしごを使ったバランス芸や、マジックをしている人もいた。そんな中、テイルが出る!と張り切り、俺に服を出すよう要求してきた。



「はーいそれでは!続きまして、本日の宴の本命!テイルさんが何か見せてくれるらしいぞ!」


 司会の獣人が叫ぶ。テイルは、俺に服を持たせ、壇上に場所に立った。


「それでは、今から早着替えをご覧に入れたいと思いまーす!」


パチパチパチパチ


「あの遠い場所にある服に2秒で着替えたいと思います!」


 なるほど、考えている事は分かった。俺は全員に見えるように、服を高く上げる。


「それでは行きます!一瞬ですよ・・・遠方移動(チェイラート)替装(カンザ)!」


 タイミングを合わせて俺が手を離した服は、一瞬でテイルの手元に吸い寄せられ、一瞬で服が変わった。観客は少し理解に時間を使ったあと、一気に割れんばかりの拍手を送った。


「凄ぇ!どうやってんだあれ!」

「服が飛んでったぞ!ビューンって!」

「流石、仲間を救ってくれただけのことはあるなぁ。」


 テイルは壇上でドヤ顔だ。エンターテイナーとしての潜在意識が爆発したか。

 あと、ちょっと待て。基本リーア達を救うのに戦ったのは俺の気がするが・・・まぁいいか。


 その時、俺も一つ閃いた。急いで前に行き、壇上に上がる。


「テイル、交代だ。すいません!俺も一つマジックやります!」


「おおっ!テイルさんの仲間、もう一人の英雄がマジックを披露してくれるらしいぞ!」


 俺は無限収納(スナフ)を活かして色々なものを出していく。最初は布を取り出し、あとは布を手のひらに被せてから何かを出現させるのだ。剣に始まり、骨、花、最後には壇上にモウラヘイラの死体を出して引かれたりもした。


 その後、カルトさんの言葉でお開きになった。俺とテイルは最初に案内された建物で夜を明かす事になる。昼から夜まで超長時間の宴で疲れていたので、すぐに寝てしまった。―――と、いきたいところだったのだが・・・


「まさかこれって、テイルと一緒か?」


「別に良いじゃない。今までもそうだったじゃない。」


「いや今まではさ?離れてたり、違う物で寝てたりしたけど、ここに横になったら腕伸ばして届くよ?」


「私は気にしないわよ?それともなに?私は嫌だって言うの?」


「いや、そういう事を言ってるんじゃなくてさ・・・」


 土に板、そして藁が敷き詰められている地面に寝転がり、芦みたいな植物のすだれのような物を掛けて寝るのだと言われたが、横になると結構狭いのだ。隅と隅で寝てもお互いに腕を伸ばせば、お互いの肘の辺りまで届く距離で寝ることになる。かろうじて掛け布団じゃなくて掛けすだれ?は2枚用意してもらえたが、そんなに客を招くことも無く、ここしか無いのだとか。


「もう良いわ。私は寝るわよ。」


 そういってテイルは隅の方で寝てしまった。―――色々まずい気もするが、この際仕方がない。できるだけテイルと距離を置いて横になった。

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