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86.狼の獣人の集落

ゴールデンウィークまで1週間!

 俺達が来たことは直ぐに村中に伝えられ、歓迎の宴?のようなものの準備が行われている。近くに亜人を迫害している国があるというのに、俺達に悪感情を抱いている人は居ないようで、凄く良い待遇だ。


 客人用の家に通された。日本で言うところの、竪穴式住居、というやつだ。地面に穴を掘り、地上には屋根と入り口だけがある。

 家の中で座っていると、最初に会った村長さんが話しに来た。


「私がこの村の長、カルトです。我らの仲間の命を救っていただいたようで、感謝しかございません。」


「いえいえ。こちらこそ、こんなに良くして貰って、本当にありがとうございます。」


「これは私個人の話ですが、リーアとミアは、実は私の孫娘たちなのです。」


―――ふぁっ!?・・・確かによくよく考えれば、普通の16歳と17歳の二人を村の代表として出すなんておかしな話だ。

 カルトさんの奥から、男性と女性が来た。


「お話中、失礼します。私達は、リーアとミアの親です。娘たちの命を救って頂き、本当にありがとうございました。」

「ありがとうございました。」


「お二人のお手を煩わせてしまったのも、娘達のせいです。申し訳ありません。」


「若い二人を出した私のミスでもあります。本当に、申し訳ない。」


「そんな!相手は悪組織です。本当は、王がそういったことが無いようにしなければいけないのです。私達の家としても、何度もその旨を進言してはいるのですが、何とも・・・」


「それに、二人に会えて、良い友達ができましたしね。一期一会ってやつですよ。」


「イチゴイチエ?というのはよく分かりませんが、今後とも、娘達と仲良くして頂けるとありがたいです。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


 カルトさんは準備をするから、と言ってどこかへ行き、お母さんも付いていった。お父さんは、少し話したいからとテイルが無理に引き止めてしまった。何故テイルはここまで空気が読めないのだろうか。


「狼の獣人について、色々教えていただけませんか?」


「ま、まぁ良いですけど・・・えっと、我々狼の獣人は、世界中に集落を作って生活しています。月に一度、新月の夜、集落の長の会合があります。そして、その長の変わり目には他の集落へと使いを派遣させます。」


「それが、リーア達ですよね。」


「はい。ただ、他の遠い所に行った者たちはまだ帰ってきていない者もいます。本当は、全員で歓迎したかったのですが・・・」


「いえいえ!まさかこんなに歓迎して頂けるとは、嬉しい限りですよ。」


「そうですか?思う存分、楽しんでくださいね。では、話を続けます。1代前の長は、私の親で、カルトは前代の弟、私の叔父にあたります。うちは代々、長の家系なのです。」


 あれか、世襲制、というやつだ。ただ、親からすぐに子ではなく、兄弟姉妹が先に選ばれるのだろう。―――将来リーアやミアもこの集落の長になるのだろうか?


「それって、リーアやミアもいつかは長になるって事ですか?」


「いえ、長は男性と決まっていますので、リーア達が成ることはありません。」


「え?じゃあ・・・」


「心配して頂かなくても、私にも息子は居ます。」


「その息子さんは、リーア達の兄・・・弟ですか?」


「そうですね・・・年齢的には弟ですかね。義兄弟ですけど。」


 ん?義兄弟?


「あっ、狼の獣人は一夫多妻制なのです。少し違和感があるかもしれませんがね。」


「なるほど、そういうことでしたか。」


 色々な文化がある、ということだ。多文化を否定してはいけないな。つまり、リーアとミアは二人姉妹で、義兄弟に男の子がいて、そっちが将来長になる、と。


「そういえば、狼の獣人の皆さんは身体能力が凄いんですよね?リーアやミアと一緒に戦ったりもしましたが、驚かされました。」


「そうですか。娘達は戦闘で役に立ちましたか?」


「そりゃもう!あの身体能力は憧れますね。」


「嬉しい事を言ってくれますね。お二人は、戦いは?」


「俺達は、冒険者をやっています。二人でパーティーを組んで、活動しています。」


「ほぉ、お強いのですか?」


「えぇ、まぁ。」

「私はそんなにですけど、こっちのハルカは兎に角強いですよ!」


 いやテイル・・・そんなに持ち上げないでくれ・・・リーアと魔法無しの模擬戦でもしたら確実に負けると思うのだが?


「そうなのですか!―――こんな事頼むのもあれですが、もし良かったら、ミアに稽古を付けて頂く事とか、出来ませんか?」


「え、いや、良いですけど・・・俺なんかで務まるか・・・」


「ぜひ、お願いします!」


「わ、分かりました。」


「ありがとうございます。リーアは小さい頃から感覚派でしたので、他人に教える事が苦手なのです。狼の獣人は、狩りをするにしても、森に出るにしても、高い戦闘能力が必要なのですよ。」


「確かに、周りにあれだけ魔物が居ると、そうですよね。大人の方々は、もっと強いんですか?」


「まぁ、人によりますかね。でもリーアは、この村で1、2番目に戦闘能力が高いのです。ですから、姉妹だけで村から出したのですが・・・」


 リーアってそんなに強かったのか。これはいよいよ模擬戦したら負けるな。で、ミアに稽古、ねぇ・・・走るスピードはまだ俺が勝っているが、木の上での移動や俊敏性、ジャンプ力は俺が劣る。本当に大丈夫だろうか?


 その時、宴の準備が整ったようで、リーアとミアのお母さんが呼びに来てくれた。

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