82.森の中
投稿時間、早朝から夜に変えようと思います。
木が邪魔をしてテイルがスキルを使えないので、テイルが歩いてついて行けるスピードで進んでいる。ただ、リーアとミアは木の上をピョンピョン飛んでいる。まるで人が変わったようだ。
「凄いわね、あの二人。」
「まぁ獣人だしな。―――でもあの二人を見てると首が痛くなってくるな・・・」
「そうね・・・」
その時、リーアが叫んできた。
「テイル!ハルカ!魔物が来た!」
高い場所から高い視力で見ているからか、俺の魔力探知への反応より早かった。が、すぐに俺も気付いた。
「ハルカ、私はサポートはできるけど動けないから、お願いね。」
「任された。リーア、ミア、俺が仕留めて大丈夫か?」
「分かった。ボク達はこのまま木の上にいるよ。」
魔力の塊、つまり魔物が向かってくるスピード、動き―――リーア達はどっちでも良いとして、テイルを守る必要がある範囲まで来られると面倒くさい。早めに終わらせよう。
「双閃雷!」
俺の掌から放たれた雷は二つに分かれ、木々の間を縫い、俺が定めたターゲットを的確に仕留めにいく。
―――キィィィイイ!
ばぁん!
少し離れた場所から聞こえる断末魔の叫びと破裂音。イゼンポッド討伐終了だ。
「なんか・・・Cランクの魔物って、こんな簡単に終わっちゃって良いのかしら。」
「ん?まぁ俺達が強いだけだろ。こっちが強ければ、相手は弱く感じる。そういう事だ。」
「流石ハルカさん!あっという間に倒しちゃいましたね。」
「あいつはボク達にとって厄介だからね。魔法が使えるってのは羨ましいや。」
―――ん?少し引っ掛かる言い方だな。
「リーアは魔法使えないのか?ミアは?」
「ボク達、狼の獣人は、魔力管が体の機能として備わって無いんだよ。だから、魔法は使えないの。」
「あっ・・・そうだったのか。何か、ごめん・・・」
「ハルカさんが謝ることは何も無いですよー。魔法が使えない代わりに、私達は身体能力が高いですしね。」
確かに、普通の人間にあれだけの身体能力は期待できない。そう思うと、世界のパワーバランスとは良くできたものだ。
グゥゥゥ・・
―――お腹が空いた。そういえば、昨日の昼から何も食べていないな。適当に携帯食でも食べておこう。
―――何だか良い匂い・・・甘い匂いだ。デザートが欲しいな。良い匂いで鼻の中が満たされて、何だか頭がボーっとして・・・
どてっ!
「痛ぁっ!」
木の根に引っ掛かって転んでしまった。しかし、誰も手を差し伸べてくれないし、誰も声を掛けてくれない。
その時ようやく気付いた。俺は森の中を一人で歩いている事に。
――――――――――――――――――
何だか甘い匂いがしてきたわね。それにしても良い匂い・・・頭がボーっとして、目の前が白んできたわ・・・でも良い匂い・・・
―――ハッ!
いつの間にか目の前にパウパティ!?不味いわ。今の動きが遅い私じゃ、危ないかもしれない。ハルカ!お願いね!
「・・・あれ?ハルカ?」
周りには誰も居なかった。近くに居るのは、私に向けて腕を振るってきている途中のパウパティだけ。
―――っ!
「遠方移動!」
一旦遠くの木を狙って避難!皆はどこ!?急いで合流しないと!
――――――――――――――――――
木の上を通るのはやはり気持ちが良い。今はテイルに合わせているけど、集落に着いたら思いっきり森を飛び回ろう。
そういえば、最近ミアのジャンプ力が高くなってきている。ボクがミアに負けるわけにはいかない!鍛えないとだね!
それにしても、ハルカのあの強さはどうやったら手に入るんだろう・・・?
―――おっと!ちょっと考え事してたら落ちそうになっちゃった。・・・あれ?ミアは?
「ミアー・・・テイル?ハルカ!ミア!?皆、どこ!?」
――――――――――――――――――
お姉ちゃん、あんなに上手く枝を飛び移れるんだもんなぁ。凄いなぁ。
ん?何か良い匂いがする?甘い、花の蜜の匂いかな?あー、なんか何も考えられなくなってきた・・・?目の前がぼやけてきた・・・
ずるっ
あ、落ちる。
―――
――――――
――――――どさっ
「ん・・・動ける・・・」
地面がちょうど土で良かった。私って運が良いのかもしれないね。意識があったらちゃんと着地できたんだけどなぁ・・・
そこで私は、一つの違和感に気づいてしまった。
「あれ?ハルカさん?テイルさん?・・・お姉ちゃん!?え、え?ど、こ?皆?お姉ちゃん・・・!」
――――――――――――――――――
これはマズい。非常にマズい。勝手の分からない森で一人になるのは問題だ。仮にテイルとリーア達が一緒に居なかったら、特にテイルは危険だ。
俺は魔力探知に集中して、広範囲を調べ上げる。
魔力を持った土、少し反応が強い木々、そしてその奥に・・・魔力の無い部分がある。無い?空気にすら存在するのに?だが、確かにぽっかりと反応の無い空間がある。行ってみるか。
――――――――――――――――――
何で誰も居ないの・・・?お姉ちゃん・・・助けてよ・・・
普段住んでいる森だけど、ここは来たことが無い。ここがどこなのか、検討もつかない。
ガサガサ!
「ひゃぁっ!」
無理無理!もう嫌!怖い!うぅ・・・誰か・・・
―――っ!
何か近付いてくる足音がする・・・でも、怖くて顔上げられないよ・・・!
あー!もう近いー!
「あれ?ミア?」
「ふぇ?ハ、ハルカ、さん?」
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