78.レッサーグレイバス
題名考えるのも大変なものなんです・・・
コンコン
「アルバートさん、ハルカです。今、よろしいですか?」
俺は今支部長室の扉の前だ。物凄く綺麗な扉を前に、少し圧倒されている。
「どうぞ、入って下さい。」
「失礼します。」
がちゃ
中に入ると、支部長室という名前ではあるが、ただの執務室だ。無駄な装飾などは一切なく、絵が2枚飾られているだけだ。
アルバートさんは机の上に積み上げられた書類の山に隠れて見えない。大変な仕事だ。
「あー、えっと、アルバートさん?」
「あぁ、すみません。仕事をしながらでも良いですか?」
「全然構いませんけど・・・大変そうですね。」
「まあいつも通りなので。それで、何か御用ですか?」
「明日から俺達、途中でリーア達の集落に寄ってからナシヤットに帰ろうと思うんですけど、帰っても大丈夫ですかね?」
「・・・そんな事、わざわざ聞くほどの事じゃないですよ。ご自由にしてもらって大丈夫です。ただ、何か大きな事があった時は呼ばせて頂きます。良いですか?」
「それは承知しています。では、失礼します。」
ばたん
よし、アルバートさんのオッケーは貰った。とりあえずテイル達に伝えたら買い物に行こう。
「テイルー、入るぞ?」
「良いわよ。」
「アルバートさんの許可は貰ったから、明日からリーア達の集落に寄りつつナシヤットに帰ろう。」
「分かったわ。」
「それと、俺は買い物に行って来るから。何か買っておくものあるか?」
「うーん・・・特に無いわね。」
「じゃあ、行ってくるよ。」
「いってらっしゃい。」
廊下を通り、ギルドの表側に向かう。受付の後ろから出てきて、そのままギルドの外まで出る。武器屋は・・・あそこかな。俺も文字が読めるようになってきた。数字も覚えたので、値段も分かる。
「いらっしゃいませー」
武器屋に入ると結構大きい店で、武器や防具、薬は勿論、魔道具、日用品まで置いている。武器はやっぱり剣だろうか。折れてしまった剣は短剣やナイフと戦う時は扱いにくかったが、魔物と戦う時には使いやすかった。基本的に対人間戦は無いとして長めの剣で良いだろう。
店の中を一通り見た後、一本の剣に目を奪われていた。
「この剣、凄いな・・・」
剣の詳細が書かれた紙を見ながら思わず声が漏れてしまった。
「試しに振ってみますか?」
近くに居た店員さんに声を掛けられた。そうだな、試しに振ってみよう。
「お願いします。」
「はい、分かりました。」
ぶん!ぶん!
重さの割に振りやすく、小回りも利く。突こうとしてもブレる事なく、魔法適性もある。値段は・・・20000シェルか。少し高めだけど、まぁ良いんじゃないか?
「すいません、これくださ・・あれ、これ何ですか?」
剣がおいてる棚と今俺がいる通路を挟んだ反対側の棚に置いてある、ボタンの付いた箱に筒がくっついている、金属のような質感の物だ。引き金がボタンに変わった銃のような印象を受ける。
「そちらは、誰でも魔道弾を放つ事ができる武器です。」
あー、そういえばそんな物があるって前に聞いたな。面白そうだし使えそうだから買っていこうか。
「じゃあこの剣とそれ、ください。」
「はい!お買い上げありがとうございます!」
合計で37000シェル、アルバートさんからの報酬は結構多かったが、残高は80000シェル程しかない。まだ夕方前だし、日帰りで行ってこれそうな依頼があったら受けておくとしよう。
――――――――――――――――――
「すいません、依頼を受けたいんですけど。」
「はい、では魔銅板をお願いします。」
「あ、はい。」
「―――Dランクですね。これはお返しします。えーっと、Dランクはこちらになります。」
何だか依頼リストを久し振りに見た気がする。
「すいません、この中で一番近い所の依頼ってどれですか?」
「近い所、ですか?そうですね・・・これはどうでしょうか?」
内容:レッサーグレイバスの討伐、場所:デイラ領、依頼主:ギルド、報酬:12000シェル
デイラ領とは、確かヴァシリアの直ぐ北だ。
「じゃあ、これで。」
「分かりました。レッサーグレイバスとの戦闘経験は?」
「え?あ、ありますけど・・・」
「そうですか、なら安心です。この地図の目印辺りで目撃されています。それでは、行ってらっしゃい!」
レッサーグレイバスを一匹倒すだけで12000シェルはおいしい。しかも王都のすぐ北だ。さっさと行ってさっさと帰って来よう。戦った事があるかと聞いてきたが、確かに初見でグレイバス系と戦うのは危険が多い。そもそも地面に引きずり込んで来るのだ。
北まで全力で走り、北門に着いた。まだ明るかったので、検問の場所はすぐに分かった。
地図を頼りに、デイラ領の中の森へ向かう。
森は鬱蒼としていて、俺が何人いても囲えないような大木や、同じぐらいの大きさの倒木があったりと、凄い場所だ。ただ、大都市の近くとは思えない程に空気が澄んでいて、歩いていて気持ちが良い。
目撃されたという場所の近くまでは来た。時間も遅くなってきて、森の中はさらに暗い。
「でも森の中でタコを一匹見つけろって、結構難s・・っ!危ねえ。落ちるところだった。」
魔力探知で気付いたので良かったが、あと一歩踏み出していたら蟻地獄に落ちていたな。
―――ピィィィィ!
そこは森の中では異質な空間で、木や落ち葉を巻き込んですり鉢状の凹みができている。
「よぉ、さっさと倒させてもらうぜ!」
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