76.戦闘終了
前書き・・・どうしましょう・・・
「ハルカ、とりあえず上に乗っかって押さえといて。」
腕と足を押さえながら背中に座り、重力指定を解除する。その間にテイルは通話の腕輪を起動していた。
ピーっ、ピーっ、ピーっ、ピ
『はい、アルバートです。』
「テイルです。もう大丈夫ですよ。」
『分かりました。今、向かいます。』
少しして、階段を登る足音、階下からの人間の魔力反応、そしてアルバートさんと数人の騎士がやって来た。
「これは・・・?皆さん、大丈夫ですか!?」
「僕は動けないだけだが、この二人は結構傷が深い。すぐに手当を頼みたい。」
「わ、分かった。おい、二人を急いで医務室へ!ニコラスさんも、怪我をほっといてはいけません。手当をしますので、医務室まで。」
「いや、だから僕は今動けないんです・・・」
「あ、あぁ、そうでした。すみません。」
「アルバートさん、こいつはまだ押さえつけているだけなんですけど・・・」
「ん?あぁ、それは良くないですね。動かないで下さい。
全てを包み込みし力よ、不視の縄にて縛れ!硬拘束!」
アルバートさんの魔法なのか、俺が押さえつけていた奴は硬直した様に動かなくなった。あの魔法も覚えておきたいな。
俺達3人は担架のような物で医務室まで連れてこられた。治癒魔法を掛けられそうになったので、全力で拒否した。テイルの助けもあり、何とか掛けられないで済んだ。治癒魔法はいざという時に取っておきたい。一応内臓の検査を行い、回復薬を飲んで安静にするだけだ。
──────────────────
「ハルカー?そろそろ起きたらどう?」
───ぱちっ
「あ、テイル。おはよう。」
どうやら医務室で寝ていたらしい。いや、テイルが足を怪我して歩けなかったので、俺も自室に戻らなかったら、そのまま寝てしまっていたのか。
「おはようハルカ。体はどう?」
「なんとも無いと思う。背中の傷も・・・塞がっているしな。」
「凄いね、その回復促進?だっけ?」
「あぁ、旅人って案外強いんじゃないか?」
「いや、多分、ハルカが歴代の旅人の中で最高レベルだから。普通こんなに強くないから。」
その時、ドアを叩く音が聞こえた。
「僕だけど、入っていいかな?」
「ニック?どうぞ。」
がちゃ
「おや、ハルカも居たのかい。ちょうど良い。僕はもう発つから、挨拶を、と思ってね。」
「そうなのか。怪我の方はどんな具合なんだ?大丈夫なのか?」
ニックは結構普通に見える。・・・左肩に巻かれた包帯以外は。ニックも一度ナイフを刺されていた。あいつらは俺達の防御を越える攻撃力と、高い耐久力を持っていた。結構怖い相手だったな。
「戦えはする。二人は?」
「俺は完治したけど・・・」
「私はまだ走るのはキツイかな。立つぐらいなら出来るんだけどね。」
「そう、か。昨夜僕がもう少し早ければ・・・すまなかった。」
「何言ってんの!ニックが来てくれなかったら私達殺されてたよー。」
「そうだぞニック。むしろ感謝している。しかも3人も倒してくれたしな。」
「僕だけじゃ6人倒しきれなかった。まだまだ力不足さ。」
「おいおい、それじゃ大怪我して倒れた俺は何なんだよ・・・」
「ハハハ!僕は君を信頼してあの技を使ったんだ。ハルカも十分強いさ!」
そうして俺達は笑いながらハイタッチした。そこにテイルも腕を伸ばしてきた。こういう関係も良いものだ。
「あれ?そういえばエスティラさんは?」
「あぁ、今他の依頼を受けている。特別に依頼されたものだから内容は言えないが、僕も加勢に行かないと。」
「大変だな、勇者は。」
「強くなるためさ。それじゃ、またどこかで会おう。」
「えぇ。」
「またな!」
ニックと入れ替わりでアルバートさんが来た。少し話した後に、報酬を受け取った。宿代は出すからいつまでも泊まっていて良いと言われたが、さすがに遠慮した。テイルが歩けるようになったらナシヤットに帰っても良いだろう。───それまで俺は依頼でも受けて稼いでいるか。
「そうだ、アルバートさん、今お時間大丈夫ですか?」
「ブラッドべムの件の書類整理は終わったから、空いてはいるが・・・何だ?」
「いえ、アルバートさんが使っていた魔法を教えていただきたいと思いまして。」
「───あ、硬拘束ですか?」
「そう!そうです!」
「良いですよ。あれは空気中の魔力で相手を縛る魔法でして、自分の魔力は発動分しか使いません。対象の周りに縄を巻きつけ、それを四方で支えて吊るす様なイメージです。詠唱は、全てを包み込みし力よ、不視の縄にて縛れ!です。」
ん?詠唱?ちょっと待てよ?
「もしかして、上位魔法ですか?」
「そうですね。」
「同じ系統の低位魔法ってあります?」
「束縛ですかね。でも、縛る力は物凄く弱まりますし、戦闘でも使えないと思うのですが・・・」
「低位魔法があるなら、そっちの魔力操作を教えてください!」
「そ、そうですか?えーっと、相手を魔力の球の中に閉じ込めるイメージですかね。球の中は空洞にして。」
「分かりました。あの、解除方法は・・・」
「解除、といえば解けます。ただこれらの魔法は、相手が動いていると効きにくいです。というか、相手が止まっていないとほとんど成功しません。」
「はい。」
「試しに、私に掛けてみてください。束縛なら私でも自力で抜け出せます。」
「そうですか?では失礼して、束縛!」
アルバートさんの腕が体にくっつき、足は揃えられ、硬直する。
「一発で成功するなんて流石ですね。では、よいしょ・・・あれ?動けない?」
まぁ動けないのも当然だろう。何故なら今俺が掛けているのは硬拘束なのだから。
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