74.収容所
投稿時間バラバラで本当に申し訳ないです・・・
ギルドの中を通り、裏側に連れてこられた。そこには、街から隔離された様な空間が広がっていた。数階建ての四角い建物が連なり、空気も重い。明かりも少なく、月の光が降り注いでいる。ギルドの中とは大違いだ。
「あの、ここは?見た事が、無いんですけど・・・」
テイルが少し怯えたように言う。確かにこの空間には俺も結構恐怖を感じる。
「ここは収容所です。牢獄、と言った方が分かりやすいでしょうか。ほとんどのギルドの裏側には、こういった場所が設けられています。まぁ一般には公開されていない情報ですし、知らないのも当然です。こんな場所の事なんて、知りたくもないでしょう。」
なるほど、あの建物のどこかに、捕まえた組員が居るのだろう。そして、ここを襲いに来るだろうと予想している、と。
「ブラッドべムの奴らは一番右の建物の2階と3階に収容しています。建物内の状況は、ギルドにある部屋から確認できるので、明るい場所で待機してもらう事が出来ます。安心してください。」
「よ、良かったぁ・・・」
テイルは心の声が漏れてしまっている。俺もこの空間に居続けるのは嫌なので、内心安堵しているわけだが。
再度ギルド内に戻り、中に入ってすぐのところの部屋に通された。そこには、ベッド、椅子、冷蔵庫、そして手鏡が何個も置いてある机があった。明るく暖かく、結構くつろげそうだ。手鏡以外は。
「あの、これは?」
「対話鏡です。収容所内部を監視しているものの中から、今回の範囲のみを持ってきました。」
なるほど、つまり監視カメラか。映像を送る物は対話鏡以外にないのだろうか?目立ってはいけない筈の監視カメラが目立ってしまいそうだが、まぁいいか。
「何かありましたら、駆けつけてください。部屋を出るときに、このボタンを押して頂ければ、我々の方でここ一帯を囲みます。数はあっても、戦闘力では貴方達に頼るしかありません。どうか、お願いします。」
ばたん
そういってアルバートさんは部屋から出て行った。さて、そろそろ眠くなってきた。お腹も空いている。戦う事になる前に準備をしておかなければ。
とりあえず二人共携帯食を食べ、水を飲み、トイレに行っておく。もう48時だ。
「ハルカ、私寝てるから、鏡見ておいて。眠くなったら起こしてね。交代するから。」
「あぁ、分かった。」
無数の鏡を前にして、俺は椅子に座って何かを考える。いや、何を考えているのか自分でも分からないのだ。色々な事が混ざりあい、ただそれらのどの事も考えていなくて・・・
ふと魔銅板を見ると、3時15分と表記されている。そろそろ俺も寝たいな。
「テイル、おいテイル、起きてくれ。」ゆさゆさ
「───ふぁ?あぁ、起きるわよ。ハルカも寝ておきなさい。」
「え?あ、あぁ、ありがとう。」
まさかすんなりテイルが起きるとは思っていなかった。最近何だか優しいな?
テイルが鏡の前に座った。ちゃんと起きているので大丈夫そうだ。俺もベッドに入った瞬間に眠りに落ちて行った。
「ハルカ!起きなさい!行くわよ!」
「・・・分かった!」
一瞬で跳び起きて部屋から走って出る。ちゃんとドアの横のボタンも押し忘れない。無限収納から流輝鞭をテイルに渡しておく。
「テイル、何を見たんだ?」
「1階を通っている黒い人間よ。何人か居たわ。そして、鏡が一個破壊されたわ。」
それは不味いな。急がないと、もう殺され始めているかもしれない。
部屋から建物まではすぐに着く。階段で2階まで上がっていき、通路に目を向けr・・
「防御壁!」
パリン
ざくっ
「ハルカ!」
とっさに防御壁を張ったが、威力が強い。俺の左肩には黒いダガーナイフが真っすぐに刺さっている。
「ぐぅっ・・・」
俺にナイフを投げたやつは、恐らくあいつだ。黒い服に白い仮面、ブラッドべムのマークがついた、あいつにやられたのだ。物凄く不気味な見た目をしている上に、6人ほどいる。
さらに突っ込んできた。凄いスピードだ。
「遠方移動!」
ギリギリの所でテイルが壁に叩きつけた。と、同時に、他の5人も襲いかかって来る。壁や天井を走り、後ろも回り込まれた。サバイバルナイフやククリナイフを持っている奴もいるが、全て、吸いこまれそうな黒のナイフだ。
こいつら相手には本気を出さないといけなさそうだ。ここに居るだけじゃない可能性もあるし、さっさと終わらせたいところだ。
「射氷!射氷!射氷!」
飛び回る先々に氷柱を次々に作っていくが、当たらない。その隙に、テイルの横に一人・・・!
「危ない!」
「キャッ!」
テイルを抑えつけてセーフ。綺麗に首を狙って来ている事が分かる。ただ、近づいてきたところを逃す訳が無い。
「加重!」
久々に使ったこの魔法は、上手く強化されて重力の方向が入れ替わった。俺達に攻撃が来ないようにするには、天井に貼り付けておくのが一番だ。
「後ろも気づいてるんだよ!」
無限収納から手に出現させた剣で、ナイフを弾く。振りぬいている最中に魔法が使えるのが、この剣の強みだ。
「閃雷!そっちは重力指定!塊炎!」
テイルも、ナイフ相手に鞭で上手く戦えているようだ。
───ぞくっ
「絶断k
ざくっ
ざしゅっっ
「ぐあああああああ!!!」
さっき魔法で潰したはずの3人が、攻撃を仕掛けてきた。横腹と背中を斬られ、一本刺さっている。血が流れ出し、意識が遠のく。呼吸をするごとに肺に激痛が走り、なんとか意識を手放していない状態だ。頭の上で、6人を相手に俺を守っているテイルの悲鳴が聞こえた。
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