69.狼の獣人
UA5000突破ありがとうございます!
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わいわい
ガヤガヤ
ざわざわ
何やらくじ引きで一等でも出たかのような音がした瞬間、人が集まり始めたので、俺達も何があるのかと情報収集に来た。
一つの店の前に90、いや100人はいるだろうか。沢山の人が集まっている。今まで賑わっていた商店街も、ほとんど人が居なくなった。
集まってきている人達は皆、興奮していたり緊張している。さらに、財布の中を確認している人も多く居る。一体何が始まるというのだろうか。
店の前に立っていた『カンカン!』という音を鳴らしたと思われる男が少し高めの壇上に上がった。まるで学校で校長先生が話す様な感じだ。
すると、壇上に上がった男が話し始めた。
「今日は物凄い物が手に入りました!皆さん、何だと思いますか!?」
競りの様なものだろうか?でも一体何が・・・
「今日は我々ブラッドベムの歴史に残る、第六回目の・・・奴隷販売だぁ!」
わぁぁぁぁ!!!
奴隷っ!?今までの人身売買の被害は少ないとは言ってたけど、5回も行方不明者が出てるって事かよ!
テイルの方を見ると、物凄い形相で睨みつけている。今にも認識阻害範囲から出て行ってしまいそうだ。
「今回の商品は、狼の獣人の姉妹!おい、上げさせろ!」
壇上の男が合図すると、壇上に二人の獣人が上がってきた。狼と言っていたが厳つい訳では無く、日本に居れば、イヌミミとふさふさの尻尾を付けた可愛らしい姉妹だ。白いフリフリのドレスを着て、可愛く見えるようにさせられているのだろうか。ただ、手錠を付けられ、口には布を噛ませれており、その顔には恐怖と絶望が混じっている。
周りには興奮が更に増す者、興奮が冷める者、中には汚物を見るような目で見る者も居る。やはり獣人への感性は人それぞれのようだ。ただ、一つ言えるのは、あの二人を助けなければいけないという事だ。でなければ、六回目の被害者になってしまう。
「テイル、突撃するか?」
周りが騒がしいので、小声ならバレる事はまずない。
「あいつら・・・!絶対に許さないわよ!」
今にも魔法を撃ちそうなテイルを抑えて、作戦を話し合う。
作戦はこうだ。まず、俺が壇上に突撃して獣人への集中を分散させると同時にテイルがスキルを発動、全員がテイルに気を引かれる。こちらを見られていない隙に手錠が繋がれている鎖を破壊。テイルが二人をスキルで引き寄せ、俺が魔法をぶち込む。その後急いで出入り口へ行き、残りを順番に倒す。
後ろに回り込むまでは俺も一緒に行き、そこからは認識阻害を解除する。一応流輝鞭も渡しておく。
「それじゃあ、解除するぞ。初めの一瞬は攻撃は来ないだろうから、安心して大丈夫だ。」
「ええ。ハルカも、気を付けてね。特に、魔法を私達に当てちゃ駄目だからね!?」
「・・・努力する。」
「ちょっと!?」
俺がテイルから離れると、テイルの姿が認識されるようになる。ただ、そこにいる人達は壇上に意識が向いているので、全く問題ない。俺も壇の横の方に来たら、魔法を解除する。
テイルの目立つ為のスキル、集知波は相手が何かに集中し過ぎていると効かない。ただ、俺が壇上に上がれば、集中は獣人から逸れ、いきなりの出来事に困惑する者も出るだろう。それなら効く。
俺は走り出し、一気に壇上まで上がる。と、同時に、
「集知波発動!」
その場に居た俺以外の全員がテイルの方を一斉に向いた。これで俺はフリーだ。剣を取り出して、振りかぶる。
「超攻撃!」
ばきっ!
ばきぃん!
二人の手錠に付いていた鎖を壊せた。急な出来事に怯えてる二人の耳元に俺は顔を近づけ、
「もう安心して大丈夫だ。」
と、声を掛けてやる。そしたら、二人を少し持ち上げて、離す!後は頼んだぞ!テイル!
「遠方移動!」
獣人二人が無事にテイルの元まで引っ張られた。それと同時ぐらいに、やっとそこに居た野郎達は現状を把握しきったらしく、一気にテイルに向かって武器を抜いた。
何やら、捕まえろ!だの、何だお前は!だの言っているが、関係ない。俺の横に居る壇上に上がって話していた奴を下に突き落とし、下の集団を囲む様にいくつもの場所に照準を合わせ・・・
「射氷!」
何十本もの氷柱で囲み、出られないようにする。この勝負、俺達の勝ちだ。
「おい!お前何者だ!」
「何だこれは!早く戻せ!」
「くそっ!この氷壊れねぇぞ!」
何か言ってるいるので、軽く挨拶だけしておこう。
「あー、俺は奴隷にさせられそうだった獣人を助けただけだ。ただ、お前らはこのままで済ますわけにいかない。では、俺の慈悲で死なない程度に殺してやろう。」
何かこうやっていると俺が悪役のようだ。いや、そんな事はない。大丈夫だ。流石に殲滅魔法はテイル達も巻き込むので、あれが有効だな。
「重力指定!」
軽く骨を折っておく。少し強めに掛けたので魔力消費が大きいが、まぁ何とかなる。ぼきっ、とかべきっ、とか鈍い音が沢山聞こえたり、悲鳴が聞こえたりしたけど、きっと気のせいだろう。近くに取りこぼしが居ないのを確認してから、急いでテイルたちを追いかける。
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