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68.地下へ

どうでも良いのですが、家の中にトカゲがいました。

「ハルカ!行くわよ!」


「おう!」


 朝ごはんを食べ終えた俺達は、昨日見つけた地下への扉の中へ侵入すべく、貧民街へ向かう。


「確かここらへんに・・・あっ、ここの路地よ!」


「こっちの方に行ったのか?」


「ええ、それで―――あそこ!あそこから地下に入れると思うのよ。」


 テイルが指差した所には、ドアというよりは地下収納に近い形の物が地面に付いていた。暗い色で、布で半分程隠れており、近くに壊れた木箱が数個置かれているため、少なくとも目立つ物ではない。テイルに言われなければ見つけられなさそうだ。


「ハルカ、無振音(サイレント)をお願い。」


「ああ。―――無振音(サイレント)。」


 扉が淡く光る。


「よし、多分これで掛かった。で、次に陰隠(スカーバット)透偏光(インビジブル)。」


 気配、魔力、視覚での認識を阻害する魔法を俺とテイルの周りの空間に張る。これでぶつかったり話したりしない限り、相手からは気付かれないだろう。個人ではなく空間に発動させているので、何度でもちゃんと俺にも効果がある。個人に掛けるより魔力は多く消費するが、俺が見つかる方が問題だ。


「・・・開けるぞ。」


「えぇ。ここからは、ジェスチャーで会話するわよ。」


 地面に付いている扉にある凹みに指を掛け、ゆっくりと持ち上げる。上手く魔法が掛かったらしく、全く音がしなかった。

 扉は狭いが、その中にあった地下への階段は二人でもゆったりと通れる幅になっている。全体的に暗めの照明が点いている。


 魔力探知(ディテクション)を使いつつ耳を澄ましているが、他の人間がいる気配は無い。無いが、道が長い。途中で階段は終わったが、ずっと横に続いている。方向は分からないが、もとの場所からは離れていっているようだ。

 道の途中に何本も別れ道があったが、全ての道が一方向に向いているようだったので、道なりに進んでいく。


 その後も少し進むと、大きめのドアが現れた。


〘開く?〙


 ジェスチャーでテイルに聞く。


〘勿論。ただ、魔法は掛けてね。〙


〘声を出さないとだけど?〙


 こんな状況だが、ジェスチャーで会話するのは意外と楽しいものだ。


〘多分大丈夫よ。〙


 俺はテイルを信じて大きく頷く。そして、ドアに手をかざしながら、


無振音(サイレント)。」


 扉が淡く光り、収まる。



――――――――――――――――――



―――ここは?地下、なのか?


 扉を開けた先には、その、何というか、商店街が広がっていた。人も多く歩いており、結構活気がある。扉が開いたのには気づかれていなさそうだが、一体ここは何処なのだろか。


〘ハルカ、見て、店に並んでいる草、○○よ。〙


 いや店の商品を見て、までは分かったが、その後が分からない。首を傾げて理解できない事をアピールする。すると、ティルが違うジェスチャーをやりだした。食べる・・・駄目・・・踊る、じゃなくて狂う?・・・薬物か?


 そして俺は地面に描かれたマークを見つけてしまった。黒いハートに二匹の蛇。アルバートさんに見せてもらったブラッドベムのマークだ。テイルにも知らせる。

 このマークがあるという事は、ここはブラッドベムのアジトだという事だ。アジトというより裏市場のような感じがする。ここに来る途中であった別れ道は、他の場所からもここに入れるという事だろう。


〘とりあえず見て回ろう。情報は沢山あったほうが良い。〙


〘そうね。紙を買い足しておいて良かったわ。私もメモを取るから、少し分けて。〙


 無限収納(スナフ)からメモ用紙と筆記用具を取り出し、二人とも持つ。

 どういった物がどれくらい売られているか、何シェルほどか。また、地下全体の雰囲気や広さ、話している内容を書き取っていく。

 ただ、歩いていて分かった有力な情報は、本拠地はここから遠い所にあり、ここはあくまで物流の中心だという事と、ブラッドベムには、リーダーと4人の幹部が居るということだけだ。違法薬物がどこから持ち込まれたのか、などは分からず仕舞いだった。


 本当は違法薬物を取り扱っている時点で、ここにいる人間全てを捕縛しても問題にはならないのだが、なにせ地下が広すぎる。本拠地はここではないが、ここの中にある施設に住んでいる下っ端も沢山居るようで、隅から一人ずつやっていこうとすると、時間も掛かるうえに逃げられる可能性が物凄く大きい。

 とりあえずは騒ぎを起こさないように商店街の中を歩きながら、どうすれば良いのだろうかと悩み続ける。



 メモを取りながら歩き続けていたら、商店街の端まで来た。反対側は何処にも繋がっておらず、ただの壁だった。ここへの出入り口は俺達が来たところ以外無さそうだ。つまり、あそこを一人が封鎖し、同じ方向から一人が全員を倒していけば、逃げられることは無い。無いが、物凄い時間と超大人数を一人で相手する事になってしまう。道の封鎖役も一気に押し寄せられたらどうしようもないだろう。



―――カンカン!カンカン!カンカン!カンカン!


 急に何だろうか。地下中に何か金属音が鳴り響いた。と、同時にほとんどの人、中には店を放って出て来る店員もいる。が、同じ方向に若干興奮気味で向かい始めた。それとは対照的に動かない人はつまらなそうにしている。一体何があるというのだろうか。

 誰かに当たらないように道の端を通りながら、俺達もそちらに向かう。

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