67.貧民街
新元号は「令和」でしたね。
今回短いです、すいません。
今、俺はテイルと別行動中だ。貧民街、と呼ばれている所に来ているが、見るからに貧しい。
家は家と呼べるかどうかという程の潰れかけた小屋の様なものが並び、所々に廃れた外食屋の様な場所もある。ボロボロの布を着て道の端に座り込んで居る人を何人か見かけたが、物凄い勢いで睨まれた。基本外には出てきていないのか、歩いている人は見当たらなかった。
一日中ぐるぐるしていたが、日も傾いてきたので、俺は腕輪を起動してテイルに呼びかける。
「あー、あー、テイル?聞こえるか?」
『・・・シッ!ちょっと静かにして。』
何か見つけているのだろうか。できれば合流したいが、通話出来ないとなると場所が分からない。
少ししたら、テイルの方から喋りかけてきた。
『―――ハルカ、今から言う場所に来て。・・・いや、何処って言い辛いから、射氷を撃ち上げるわ。』
「分かった。」
どこに射氷が飛んでいるか、周りをグルグル見回す。すると、日の光を反射させて眩しく輝いている物が現れた。あそこの下だな。
射氷が放たれた所まで行くと、テイルが待っていた。
「ハルカ、私のことを褒めても良いわよ。」
「何か見つけたのか?」
「貧民街にしてはちゃんとした服を着た奴が、周りをキョロキョロしながら、そこの路地裏に入って行ったの。私は怪しいと思って後をつけたわ。そしたら、地下に入って行ったの!」
「地下?」
「秘密扉みたいな感じだったわ。」
「なるほど、それは確かに普通じゃないな。でも良く一日目で見つけられたな!」
「まぁ運ってやつよ!扉を開けるとバレるからそこから追えなかったけど、あそこには何かあるわよ。」
「とりあえずアルバートさんに報告して、明日また出直そう。」
テイルが初日からやってくれた。たまたまではあるが、とても大きな収穫だ。朝なら敵の出入りは無いだろうし、安全に潜入出来るというものだ。
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「そ、それは本当かね!?」
「はい。私はこの目でちゃんと見ました。」
「貧民街の地下、か・・・今まで考えもしなかったな・・・」
「その中には明日の朝、入ってみようと思います。」
「そうですか。ただ、身の安全を第一に考えて行動してください。」
「アルバートさんの方は何かありましたか?」
「ああ、その事なのですが・・」
アルバートさんはここヴァシリアの犯罪記録を見てくれていた。ブラッドベムの組員による物だと分かっているのは全体の6割程、3割程は恐らく組員だと思われるが、情報漏れを防ぐためか拘置中に何者かによって殺されてしまっているらしい。
違法薬物の押収や、少ないが人身売買に関しては、全てが組員または組関係者による物だった。
また、一般には公開されていない情報で、何度かアジトを特定し制圧に向かった際は、全滅か既に捨てられた場所だったらしい。
とりあえず今日見つけた地下への入り口に明日潜入する方針で決まった。
アルバートさんとの話が終わり部屋に戻るかと思っていたが、テイルに連れられて魔法練習用の部屋に来た。今日は半日以上歩き回ったので疲れたんだが・・・
「ハルカ、明日は扉を開けて中に入るでしょ?開ける音が地下に響いたら困るから、対象物の音を消す魔法を覚えてもらうわ。」
「確かに言われてみればそうだな。」
「で、その魔法が無振音よ。対象物から魔力を引っ張ってくるイメージよ。結構難しい魔法だけど、ハルカから上手くできると思うわ!」
無振音は思った以上に難しかった。今までは殲滅魔法、という名の上位魔法だって直ぐに出来たのに、今回は何度も挑戦しても上手く行かなかった。自分から出すのは簡単でも、相手から持ってくるというのがこれ程難しいとは思わなかった。
まぁ15分ぐらい練習したら、貫氷に無振音を掛けた状態で炎獄を当てて水蒸気爆発を起こさせても無音に留めることに成功した。テイルも流石にここまで大きな音を消せるとは考えていなかったらしいが、これで明日の潜入時も安心だ。
ホテルのように夜ご飯の時間も決まっているので、夜ご飯を食べに行く。
部屋に帰ってからは文字の練習だ。たまに間違えるが、何となく文を読めるようになってきた。読めるということは、書けるのと同意だ。表音文字のみというのは覚える側からしたら本当に楽で嬉しい。
その後お風呂に入りに行き、布団に入る。明日は対人戦も考えておかないといけないな。
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