5.一日48時間
こんにちは。YOPPYです。更新、少し遅くなると思います。
「あ、ハルカ、起きた?」
声のした方を見てみると、隣にテイルが座っている。どうやら看病していてくれたみたいだ。ここは、ギルドの中か。
「ああ。もう大丈夫だ。ありがとう。」
「良かった~急に倒れたからびっくりしたよ。」
「うん。なんか凄い頭痛くなって、倒れたみたい。疲れてるのかな。」
「あ、そうだ!はい、これ。」
そう言ってテイルは錠剤と水を渡してきた。
「これは?」
「さっきギルドの職員の人がくれたの。起きたら飲ませなさいって。栄養剤よ。」
なるほど、これはありがたい。学校で弁当食べてから何も口にしていなかったしな。なんだか凄いお腹が空いている。ちなみに、今何時だろう?
「なあテイル、俺、どれくらい寝てた?」
「うーんと、7時間ぐらいかな。」
7時間!?俺たちがギルドに着いた時は日が傾いていたから、もう朝か!?―――いや、外はまだ真っ暗だ。どういうことだ?
「時間は、どうやってわかるんだ?」
「さっき渡された魔銅板に表示されてるよ。これ凄い便利だよー」
確かに、確認してみると数字が書いてある。えっと、42時12分?・・・は?
「テイル?」
「何?」
「一日って、何時間だっけ?」
「ハルカ、記憶に何か影響があるの!?」
「あー、大丈夫だ。ド忘れしちゃって。」
「はぁ、一日は48時間、一時間は20分でしょ?」
うっわ何それ分かりにくすぎる!いや、こっちの世界では当たり前なのか・・・つまり、地球の30分が、こっちでは1時間で、20分でもあるってことか。えっと、42時12分は・・・21時18分か。7時間前が35時、17時半だから辻褄が合うな。
「それでね?起きたばかりで悪いんだけど、一つ話があるの。聞いてくれる?」
「何だ?」
「その、私の【職業】の【傀儡師】ってさ、【特別職】の中では戦闘に向いている方なんだけど、基本サポートなんだよ。それで、レベルの低いうちは、私一人で冒険者として魔物と戦ったり、依頼を受けるのは危険だって言われたの。それでね?提案というか、お願いというか・・・その、私と、パーティーを組んでくれない?」
なるほど、そういうことか。確かに俺としては、この世界について知っている人と一緒に居ないと危険かもしれないな。テイルは同世代で話しやすいし、職業も強いらしいし、良いんじゃないか?―――なにより、テイルはかわいい。そこが最大の決定要因だ。
「いいぞ。決まりだな!」
「本当に!?ありがとう!」
こうして、俺とテイルはパーティーを組むことになった。パーティーを組む際には、お互いの魂に刻む…つまり、魔銅板を同調させる。魂を繋げることになるので、相手の事をなんとなく感じることができる。
今後ギルドの依頼を受ける時は、二人で受けることになる。経験値は山分けになるけど、強い相手を倒せばそれ相応の経験値が手に入る。なにより、俺は転生者だ。サポーターがいれば無双出来る!
「よし、じゃあ早速依頼を受けに行くか。」
「え?」
「え?」
「いやいやいや、なんでこんな時間から行かなきゃいけないの!?明日からでいいでしょ!?」
「俺は今金が無いんだよ!食べ物も住むところも何も無いんだ!」
「えぇー・・・じゃあ、とりあえず、うち、来る?」
「良いのか!?」
いや待て、本当に良いのか?年齢制限的に。
「寝るところとか、明日食べるものは提供できるよ。一人部屋だから、少し狭いけど。ハルカとは魂を結んだから信頼できるし。」
――――――――――――――――――
さて、ギルド内の貸し住居、テイルの部屋の前にきたわけだが・・・今、とても緊張しています。いやだってさ?今までの高校生活で特に女子と話す事も無く、もちろん彼女いない歴=年齢で、どう○いで・・・いや、そんなことはどうでも良い。どちらにしろ、女の子の家に泊まるとか、そりゃあ緊張しますよ。
「さ、入って入って~」
「お、おじゃまします・・・」
「なに緊張してんのっ!同じパーティーの仲間なんだから、気にすること無いって。」
「痛っ、痛いって。叩くなって。おい!」
背中が凄い痛い。いやホント。俺DP高かったはずなんだけどなぁ・・・明日中に自分の部屋を借りられるぐらいは稼ごう。体と心が持たない。
「適当にそこらへん座ってて。今、飲み物出すから。」
「あ、ありがとう。」
さて、部屋についてだが、ここがリビング&ダイニング&キッチン。だいたい15畳ぐらいか。それと、大きさ不明の部屋が二つと、トイレ、洗面所。なかなか広いじゃないか。照明器具は無く、天井全体が光っている。これは科学というより魔法っぽいな。ちなみに靴は玄関で脱ぐ風習だった。日本人にはこれが良い。
「はいよー、おまたせ。」
テイルが持ってきたのは・・・お茶?みたいなものか。
「それにしても、お金が無いの?大丈夫?」
「いや、だから直ぐに稼ごうと思ってたんだけどね・・・」
「なんとなく分かるけど、荷物はそれだけ?」
「ああ。中身は、教科書とノートと、筆箱。空の水筒と、使えない硬貨が入った財布と、使えない通信機器だ。」
「のーと?とつうしんきき?ってのがよく分からないんだけど・・・」
つまり教科書とか筆箱とか水筒は、この世界にあるってことか。
「ノートっていうのは、習った事を書き留めるための紙のことで、通信機器は・・・まあ使う事無いから、懐中電灯だと思ってくれていい。」
「教科書は、何が書いてあるの?魔法とか?」
「いや、文芸作品が数個と数学の解き方だ。」
「ちょっと何言ってるのか分からないけど、ハルカは、戦闘経験はある?」
あるわけないだろ!体育の成績は平均並み。足の早さも普通。空手とかはやったこと無いし・・・剣道部だったから、剣道はそれなりに出来る。ただ魔物とかとの戦闘において使えるかと言うと、怪しい所があるな・・・
「少し、剣を握っていた頃はあるけど、戦闘経験は皆無だ。強いて言えば、ドッジボールは強かった。」
「また知らない言葉が出てきたけど、良かった。全くの初心者じゃないのね。それなら、ハルカのステータスで何とかなるわ。」
そうだ、俺にはぶっとんだステータスがあったな。これなら安心だ。さっさと風呂入って寝て、明日に備えよう。
ちなみに風呂は銭湯だが、お金はテイルが出してくれた。それなりに収入が入ったら、テイルに返そう。
「それじゃ、私はこっちで寝るから、ハルカ、ベッド使っていいよ。」
「え!?いやいや、さすがに普段がテイルが寝てるベッドは・・・その、精神的なものが辛すぎるので・・・」
「そお?じゃあ、ベッドはもらうね。―――寝てる間に襲っちゃ駄目だからね?」
「す!る!わ!け!な!い!だ!ろ!」
「はいはい、冗談だって。それじゃ、おやすみ~」
まったく、調子を狂わされる。でも、今日初めて会ってこんなに優しくしてくれるなんて、本当に俺はテイルと出会えて運が良かったな。
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