45.野宿
前回の前書きは忘れてください。なかなか思いつきません・・・
砂漠は昼夜の気温差が激しい。今の時間は暑くなり始め、といったところだ。ただ、この後どんどん気温は上がっていくので、今のうちにできるだけ進んでおきたい。
「それにしても暑いな・・・」
歩いていると汗がダラダラ出てくる。砂の上では陽炎が踊っている。足場が悪くて走れないが、たまに見かけるスライフは気にせず通過していく。
テイル用の水筒は一昨日から無かったので、地球から持ってきた1本しか無い。まあ本当に水が足りなくなったら貫氷を作って削って水筒に入れておこう。
砂漠は行ったことがなかったけど、地球にある物と同じ感じだろう。一面砂、砂、砂。遮るものが無いので風が吹くと物凄く強く、そういった風で出来たであろう砂丘が広がっている。
砂丘を登るのは意外と大変で、それなりに角度がついた所を何も掴まずに登るのは慣れる必要がある。
―――!
砂漠に入って約4時間、始めて魔力探知にスライフ以外の反応があった。後ろから近づいて来ている。無限収納から剣を取り出すさまは、まるで何も無い所から武器を創り出しているかのようだ。
―――キシャァッ!
襲ってきたのはそれなりの大きさがあるヘビだった。跳んで噛みに来たので、頭の下に剣を回り込ませて首を断ち切る!
ぶしぃっ
よし、上手くいった。・・・おっと、血は浴びない方がいいな。何があるか分からない。
流血が止まったところで、無限収納の中に全部入れた。魔銅板を確認すると、名前はベム。ランクはEらしい。こんなにあっさり魔物を倒したのは久しぶりな気がする。
携帯食を口に放り込んで、水も一口飲む。何時ぐらいまで歩き続けようか。というか、野宿になるんだよな・・・テントとか買ってくれば良かった。これは結構大問題だ。吹きさらしの中で夜の砂漠を生き抜くのは辛すぎる。そもそも俺は結界魔法を使えないので、寝ているときに魔物に襲われたらどうするんだ。
べムを倒してからどれくらい経っただろうか。少し日が傾いたか?小さめの砂丘を登って降りようとした時、砂がさらさらになって足を滑らせてしまった。そして凄いスピードで落ちていく。そして俺の視界には・・・
「ここにも居るのかよ。・・・でも少し小さいか?」
俺が落ちて行く先に居るのは小さめのグレイバスだ。2m無いぐらいだ。
「面倒だな・・・塊水!」
───PGyyy!
あれ?洪水浴びただけで動かなくなったぞ?口を下にして力が抜けているように見える。結構効いたのだろうか。とりあえず剣を構えて脳を狙う。
「おりゃぁっ!」
ざきゅっ
───Pぃぃy・・・
どんどん体が白くなっていく。死んだ証だ。よし、締め完了っと。無限収納に入れて、先を急ごう。ちなみにグレイバスではなく、レッサーグレイバスというDランクの魔物だった。
こんな砂漠のど真ん中で魔物は、食料も少ないだろうし、水はどうしているんだろうか。もしかしたら要らないのかもしれない。テイルを助けたら文字や常識、魔物の知識を勉強しないとだな。魔法の勉強もしたい。
日の傾きと時間を確認することで方角を迷う事は無いが、さすがにここまで広い砂漠を一人で歩いているとつまらない。魔物も多いわけでもない。───深夜に出てきたから少し寝不足だ。まだ夕方だが眠くなってきた。そうだ、寝るときの魔物対策はどうしようか。
少し進んだところに岩があった。今までも何回か見かけたが、今回のは少し大きめで、俺の身長の2倍ぐらいだ。ああいう傍で寝るのも良いな。襲撃は魔力探知が感知してくれる事を願うしかなさそうだけど・・・しょうがない。
結局その岩の傍で寝ることにした俺は、早めの夕飯として携帯食を食べ、今日の旅をここで終わらせた。
──────────────────
───ぱちっ
良い目覚めだ。昨日の夜は特に何も無く、平穏な時間だった。強いて言えば気温が低すぎたことで体が動かない。どうしよう。
「塊炎。」
ふぅ・・・温かい。燃やすものが無いので魔力を使い続けなければいけないが、俺のMPからしたら微量なのだ。魔法は、使用者には当たらないが影響は受ける。つまり、この炎の中に突っ込んでもダメージは受けないが服は燃えてしまう。ぎりぎりの所で暖をとる。
「よし、行くか!」
時刻は16時、気温も上がり始め、動くには最適の時間帯だ。またそれは、魔物にとっても同じである。
昨日一匹しか見なかったべムが大量にいたり、砂漠にヒラメが居たりした。砂の中にヒラメが居て、襲ってくるのだ。そう、あのヒラメだ。4匹ぐらい討伐したが、名前はタイラメ、ランクはEだった。タイラメ・・・平目・・・ヒラメって事か。こっちの世界で地球と名前が似ている奴は食用として愛されているものが多い。スウモン(サーモン)とかシャリンプ(シュリンプ)とかだ。
シィ砂漠では強い魔物には会わないものの、とにかく移動が大変だ。暑い、寒い、広い、足場が悪い。
そういえばロンド一家はこの砂漠を馬車で行ったのだろうか?さすがに馬車の車輪ではすぐに埋まってしまうだろうし、砂丘の下り坂は危ない。どうやったのだろう。───テイルが『助けて』と言ってきたという事は、少なくともテイルは嫌がっているので、俺の今の行動は正しい。ただ、ムーディさんとアイリスさんの考えが分からない。どういった理由でテイルを連れて行ったのか、まずは穏やかに話し合いたい。家族の問題に他人が首を突っ込むのもどうかと思うが、テイルはパーティーを組んだ仲間であり、魂が繋がっている、家族の様なものだ。見過ごすわけにはいかない。
日が暮れ、気温が急に下がり始めたので移動を中断し、少しでも風よけになる岩を探す。明日は3日目。一般的に3、4日かかるらしいので、明日中に着けると嬉しいな。
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