44.最強の護衛
まだ決まっていないのですが、もう一本連載を始めるかもしれません(?)
ストーリーが確定してきたら書き始めようと思います。その時は皆さん、お願いします。
「ハルカ、記憶は大丈夫かな?君に使った治癒魔法『還刻限癒波』は、強過ぎるせいでたまに記憶に障害が出るんだが・・・」
治癒魔法?それは困る。まあそのお陰で今もこうして生きているのだから、感謝しないとだけどな。どこも痛くないし、抉れたはずの横腹も元の状態に戻っている。凄い魔法だ。
「色々言いたいことはあるが、大丈夫だ。ニックが助けてくれたのか?ありがとう。感謝する。」
「なに、ハルカに死なれては僕も困るのでね。」
「でも、ニックは何でここに?」
「僕は依頼の帰り道にたまたま通りかかったんだ。あと少し遅れていたら、ハルカは死んでしまっていただろう。―――あいつに会うなんて運が悪い。」
本当に死の淵を彷徨った気分だ。ニックには返しても返しきれない借りができたな。それにしてもアイツは強かったな。
「そういえばアイツは?倒したのか?」
「―――いや、恥ずかしながら、僕にも倒せなかった。最初は勇者のスキル、聖燈威圧で逃げ出さないかと試してみたんだけどね。僕より強い相手に威圧は効かなくて、このざまさ。太陽が昇ると同時にどこかに行ったよ。」
ちょっと待て。アイツの事を知ってる【勇者】ニックに倒せないのか?その戦闘で服がぼろぼろになったって事か。まあ良い身体してるんだし、ほぼ全裸だが気にする事は無いだろう。
「俺はアイツの事知らないんだが、どういうやつなんだ?」
「知らないのかい?あいつは―――」
ニックの説明によると、あの黒豹の名前は『レオムストロフ』といい、ランクS。基本的にランクS以上は世界に1体しか居ないものが多い。レオムストロフも、世界で1体しか確認されていない。
もし出会ってしまったら、倒すか死ぬかの2択と言われる。基本死ぬ。俺が幻影だと認識したのは、正確には魔力を使って影を映し出して居るらしい。空気中の魔力を操作して気配を消したり、低位魔法を受け流したり、雷を生み出すことができる。ただ、完全に日が落ちている時間帯しか活動せず、日中はどこに居るのかまだ分かっていないらしい。
「というかハルカは何であんな時間にこんな所にいたんだい?」
「そうだ!今の時間は!?」
「12時ぐらいだと思うよ。」
まずいまずいまずい。無駄に時間を食ってしまった。急いで行かなければ。
「じゃ、じゃあ、俺急ぐから!ありがとう!いつかこの借りは返すから!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。どうしたんだい。」
「テイルが大変なんだよ!急いでグルシュ王国に行かないといけないんだ!」
「グルシュ王国?ならシィ砂漠を通るのかい?そもそもこの森は?その剣で。」
ん?何を言ってるんだ?と思って腰に付けた剣を見てみると・・・粉々に割れている。レオムストロフに噛み砕かれたのか?
「おっと・・・」
「タチバナ君、ここスレム大森林はフェルミの管轄だ。強力な魔物が出た時は報告しに行かなければならない。君がやっても良いのだけれど、僕の方が信頼度がある。だから、僕もフェルミに行かなければならないんだけど、僕にフェルミまでの護衛を依頼しないかい?」
「・・・報酬は?」
「前払いで回復薬を一本。」
「そんなんで良いのか?なら、お願いするよ。───はい、回復薬だ。」
「ありがとう。では早くこの森を出よう。ここら辺は本来パウパティの生息域だ。」
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森の中ではパウパティが何回か出てきたが、ニックが聖燈威圧を使って気絶したか、一部は逃げ出して行った。隣に居た俺も少しくらっと来た程だ。強すぎるだろ。
「では僕は服を買うのと、ギルドに報告に行くから、ここでお別れになる。」
「ああ、ありがとう。」
「武器屋はあそこ、ギルドはこっちにあるから。本当は僕もロンド君を助けに同行したいのだけれど・・・」
「いや、これは俺達の問題だからな。大丈夫だ。俺に任せてくれ。」
「それじゃあ、またいつか。」
さてと、まずは武器の新調だ。魔法適性もあって気にいっていた剣だったが、しょうがない。回復薬はまだ10本以上無限収納内にあるから大丈夫だとは思うが、ギルドで携帯食は買っていこう。急がなければ。
ギルドは冒険者用の銀行の様な役割も果たしていて、報酬受け取りの際に現金で渡すか銀行に回すか決められるのだが、俺の場合全て無限収納に入れてあるので早く済む。ちなみに俺の所持金はここ5日間の報酬を半分に割って120000シェル弱だ。まぁ昨日と一昨日分をテイルに渡さないと考えると26650シェルぐらいは追加されるのだが。
「いらっしゃいませー。」
「すいません、魔法適性があって、軽めの振りやすい剣ってありますか?」
「少々お待ちください───これはどうでしょう?軽いうえに固いですし、切れ味も最高ですよ。」
店員が持ってきたのは前に使っていたものより少し厚めの剣だ。ただ、持たせてもらうと異様に軽い。あまり軽すぎるのも考え物か?
「もう少し重いのありますか?」
「うーん・・・これなんかどうでしょう。」
次に持ってきたのは前に使っていたものと同じぐらいの厚みで、少し重めの剣だ。魔法適性もあってしっくりくる。
「ちなみにこれ、おいくらですか?」
「65000シェルになります。」
高っ!いや、俺が最初に使っていたのが安いのか?基本的にどれくらいなのかは知らないけど・・・でも高い物はそれだけ良いって事だしな。これにするか。
「じゃあ、これ、お願いします。」
「ありがとうございます!」
高い剣は大切に扱っていきたいところだ。よくよく考えてみれば、腰に付けた鞘から抜くよりも無限収納から取り出した方が速いうえに重くない。さらに盗まれる事もなく安心だ。
ギルドで聞いたところ、シィ砂漠にいる魔物は最高でもBランクだという。できるだけ時間は食いたくないので、細かい説明は聞かない。グルシュ王国までは3、4日ほどかかるらしいので、俺は携帯食を多めに12粒買った。
今の時間は20時。さあ、直ぐに出発だ!
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