37.夢
誤字報告ありがとうございました!今後もよろしくお願いします。
いやー、前世の俺からはこんな事想像もつかないな。
高校は共学だったとはいえ女子と話すのは事務的な連絡だけ。そのうえ身長もルックスも勉強も普通な俺に、よく話す女子などいなかった。ましてや部活は剣道部でそんなに好まれるわけでもないし、問題があるとしたら女子マネが居なかった事。孤立していたわけでは無かったが、そんなに親密な男子も居ずに誰かの家に呼ばれることなど無かった。
―――考えてたら少し悲しくなってきた。それより今の状況だ。同年代の女の子が家に呼んでくれて夜ご飯をご馳走してくれている。確かに、俺は命の恩人に近い立場かも知れないが、こんな可愛い子とこんな事になるとは。
「ハルカ、美味しい?」
「あぁ!美味しいよ!最近朝も昼も携帯食だから、ちゃんとした料理が身体に染み渡る〜。」
「ふふっ、それなら良かった。私も誰かに料理を作るなんて初めてだから、心配だったの。」
「ソフィアさんとかは?」
「むしろ逆よ。ソフィアのお兄さんが【料理人】の職業を持っていて、ギルドの食事処の厨房で働いているんだけど、そのお兄さんが作ってくれるから、私がソフィアの家に行くことになるの。」
へー、ソフィアさんにはお兄さんが居るのか。しかもギルドの食事処で働いてるって、俺も何回かお世話になっているじゃないか。
「今日はありがとう、ハルカ。私達と一緒に依頼行ってくれて。」
「いや、俺も受けた依頼先でリリーとソフィアさんに会えて良かったよ。」
「私には凄い良い出逢いだったよ?」
「またいつか一緒に依頼受けたりしような。同じ冒険者同士としても今後も良い関係を続けていきたいからさ。」
「ええ。」
「そういえば、何でハルカは一日に二つも依頼を受けたの?」
「いや、今ギルドから挑戦?みたいなものが来ててさ、4日間に7つEランクの依頼をこなす事が出来れば、Dランクに昇格させてもらえるんだ。」
「Dランク昇格!?な、何でそんな事になってるの!?というか何その制度!?」
「ニックが紹介してくれたからな。」
いや本当にニックには感謝感謝。
「・・・一応聞くけど、ニックって?」
「あぁ、ニコラスだよ。ニコラス・フォースター。」
「やっぱりあのニコラス!?Aランク勇者の!?」
やっぱり有名だな。この街以外、例えばムーディさんとアイリスさんが行った東の森の先の街、フェルミにもギルドはあるのかどうか知らないが、少なくともこの街のギルド所属の中では一番、いや、俺の次に強い奴だしな。
「ハルカ、ニックっていう呼び方はニコラスさんが許したの?」
「うん。ニックがニックって呼んでくれ、って。」
「───やっぱりハルカは凄いわ。ニコラスさんが自分の事をニックって呼ばせるのは、ニコラスさんに認められてる証よ。あまり公の場では呼ばない方が良いかもしれないわ。」
そうか、俺は認められているのか。まあそうだよな、強化魔法を使ったニックに勝ったんだから。でも多分あれはニックの本気じゃない。本気を出していたら視界に頼らないで、魔力探知か何かで対応されていただろう。そうしたら俺の負けだ。
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いやー、リリーの料理美味かったな~!いろいろ話もできたし良い時間だったな。もう時間も時間だから寝るか、とか思いながら階段を上がって俺の部屋の前に来ると、
「おっと、なんだ?」
日本の普通のマンションとかだと郵便物は入口の近くに纏められてたりしたけど、ギルドの貸し部屋にはそれぞれに郵便受けがあって部屋まで届けてくれる。中を確認すると封筒が一つ入っていた。
封筒には住所が書いてあるっぽいがそこは読めない。けど、ちょっと歪なひらがなが三文字あるな。『はるか』と。この世界でひらがなが書けるのは、俺と、もしかしたら他の転生者と、あとテイルだ。
中に入った俺は寝間着に着替えてから読むことにした。さて、開けても大丈夫だよな?
ぴりっ
お、案外簡単に開くな。手紙か。もうひらがなを書ける辺り、テイルは天才かも知れない。なになに・・・
ハルカへ
大変だったかな?今日はお疲れ様。明日も帰れないかもしれません。ごめんね!
凄い大変だと思うけど、明日も一人で依頼受けてもらっても良いかな?
けど、私もできるだけ早く帰るから!私のランク昇格は保留にしてもらっておいて!
う~んマジか。最後は『テイルより』で終わってるから差出人も、明日帰ってこない人も誰なのか分かる。しょうがない、用事が長引いているんだろう。でも明日2つ依頼を達成すれば成功か~!よし、明日に備えて早く寝よう。
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───ル、カ・・・
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ハ、ルカ!
───
──────フェルミ!
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がばっ
夢、か。俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたんだけどな・・・あと、何だっけ・・・あー、駄目だ。眠い。
そのまま俺はまた夢の中に落ちて行った。
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