32.二度あることは三度ある
誤字報告ありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。
「ムーディさん、アイリスさん、前は私にお任せ下さい!出てくる魔物は片っ端から潰しますので!」
「あらあら、頼もしいわねぇ。ソフィアさん、無理はなさらないでね。」
ソフィアさんが前線で射氷を連射して、出てくるスライムやスライフを潰していく。それにしても凄い命中率だ。杖の先端から発射される氷は、1mmもずれる事なく核に当たっていく。俺より格段に正確な攻撃だ。
「射氷!射氷!射氷!―――ハハッ楽しい〜!」
ちょっと危ない様な気もするけど、次々に倒していくので俺とリリーは何もすることが無い。強いて言えば、俺は素材回収を行っていたが。
「ハ、ハルカ。それ、ど、どうやってるの?」
「ん?これか?これは【旅人】のスキルの無限収納って言って、別空間に物を置いておけるんだ。凄い楽だぞ。」
「へー!す、凄いね!その、ま、魔法も使えるの?」
「・・・使えるよ。」
「?そうなんだ。ま、まあMPも少ないと思うし、基本的にソフィアに任せておけば大丈夫だよ!」
うん。俺もそう思う。リリーの口調が緩くなってきたけど、一緒に歩いている内にリリーも少し緊張が和らいできたかな?
今無限収納の中に入れてる奴は後で渡そう。・・・いや、俺はもう一個依頼があるし、この量を持っていくのは辛いか?どうしようか・・・まあ後で話し合おう。
そういえばソフィアさんとリリーの服装について話そう。
ソフィアさんは暗い紫色に黄色い枠の、前をボタンで留めるタイプの服に、赤紫のズボン、そして黒いローブだ。木でできていて先端が渦を巻いている、2m弱ある杖を使って魔法を放つ、いかにもな魔法使いだ。
リリーは白の無地のセーターに黒いパーカーを羽織っていて、ジーンズの様なズボンと、明るい茶色のベルトを締めている。そしてベルトには刀の鞘がついている。あれは日本刀の鞘によく似ているな・・・武者ってことか。なんだか違和感がある。
「一度休憩にしましょう。皆さんも、くつろいで貰っていいですからね。」
森に入って4時間ぐらいした時、アイリスさんが休憩を促した。俺は全然平気なのだが、ずっと歩きっぱなしだと馬も疲れてしまう・・・いや、馬じゃないんだけど。歩いている内に気付いたんだけど、これ馬じゃないわ。凄い綺麗だし大人しいし可愛いけど、魔力が魔物並みなんだよなぁ・・・
今居る所はだいたい森を4分の3ぐらい進んだところらしいから、あと1時間もあれば着くだろう。東の森は北側は広いのだが、南側の方が薄くなっている。南北に広いため、一概に東の森の気候は決められないそうだ。
俺も少し、ほんの少し気を緩めてリリーと雑談していて、ソフィアさんは遠くから俺達を眺めてニコニコしていた、のだが、急に表情が険しくなった。
「リリー!ハルカ君!」
何事かと思ったけど、なるほど理解した。高い魔力の塊が近づいて来ているのが感じられるな。気を緩めてて察知できなかった・・・というかソフィアさんも魔力探知使えるのか、と思ったらリリーも表情が強張っている。魔力探知って一般的なスキルなのかな。
で、問題はそっちじゃない。
「ムーディさん、アイリスさん、客車の中に避難していてください!」
流石ソフィアさん、判断が早くて助かるな。俺とリリーは戦闘態勢に入る。
「ど、どうしたんですか?」
「何か強い魔物が近づいてきてます!」
「分かりました、ご武運を!」
よし、非戦闘員の避難は終わった。
「ハルカ君は危ないから下がってて!」
───え?マジですか?戦う気満々だったんだけど・・・まあいいか。俺の力を見せるのも面倒くさいと思ってたし、二人で処理できるのならそれで良い。
近づいてきて、近づいてきて・・・出てきた。
───ウェッキィッ!
またお前かぁぁぁぁぁ!!!しつけぇぇぇぇぇ!!!もう良いだろ!?何で俺がここに来ると絶対出てくるわけ!?
「ハルカ!あいつはDランク!危険すぎる!・・・私の後ろに居て!」
「わ、分かった。」
ソフィアさんの低位魔法は効かないし、俺は非戦闘員扱いされているから戦うのは・・・リリー?
「できるかどうか分からないけど・・・やってみる!」
「待ってリリー。闘攻、鉄壁、加速。」
あ、あれニックも使ってた強化魔法だ。他人に付与することもできるのか。
パウパティとリリーは互いに睨みあい、一歩も動かない。───そんな中で音も立てずにリリーが影に沈んだ。
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