29.懐かしの教会
花粉は美味しいらしいです。
俺達はカルプイルの討伐を行うために、中央公園へと向かっている。この街は教会を中心として道が広がっているが、中央公園は教会の横にあって、とても広いらしい。―――そういえば教会に行ったとき、視界の端に緑が見えたな。あそこか。
「テイル、カルプイルってどんな魔物なんだ?公園に住み着いているって・・・」
「カルプイルは水中に住む魔物よ。中央公園には大きな池があるみたいだから、多分そこじゃないかしら。」
水中か・・・なかなか面倒そうだな。魔物の呼吸方法とかは知らないけど、もし地球で言う鰓呼吸だったら、テイルのスキルで陸上にあげちゃえば楽勝じゃないか。
「カルプイルは基本海に住んでるんだけど、海水でも淡水でも生きる事ができるわ。ちなみに、スウモンみたいな見た目をしているわ。」
スウモンとは、食用の魔物だ。一部の食用として好まれる魔物は養殖され、市場でよく出回っているらしい。俺も食べたが、食べた感じは完全にサーモン、鮭だ。つまり魚。これは鰓呼吸が期待できるか!?
「ん?海に住んでるって、じゃあなんで公園の池にいるんだ?」
「中央公園の池は川と繋がっているから、いろんな生き物が居るのよ。」
そういうことか。・・・なんて話をしていたら教会はもう目の前。
「・・・ここでハルカに出会えて良かったわ。ハルカがたまたま来てくれたから、私は冒険者として、こんなに濃い日々を過ごせているの。ありがとうね、ハルカ!」
「いや、それは、まあ、俺もテイルに会えてなかったら、右も左もわからなくて行き先も無くてあてが無くて、直ぐに倒れてただろうな。・・・でもちょっと濃すぎる気がするんだけど?」
「そうとも言えるわね。確かにちょっと濃すぎるかも?・・・まあ、魔王を討伐するっていう目標があるんだから、当然よね!」
忘れてたぁぁぁ!!!そうだった!テイルが勝手に方針決めたんだったぁぁぁ!!俺嫌だって言ってるのに・・・怖いじゃん!?魔王怖いじゃん!?
「ハルカ、着いたわよ。中央公園。」
「・・・おぉ・・・」
本当に広いなこれは・・・教会の裏側に広がっている中央公園は、とにかく広い。その真ん中の方に池が見えた。あそこか。
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池の中には・・・おお!確かにたくさんの魚?が居るな。種類もいっぱいだ。
「テイル、どれがカルプイルだ?」
「水の上からだと分かりにくいわ。魔力探知を使って見てみて、魔力数が高いのがカルプイルよ。」
どれどれ・・・視界を切り替えてみると、ほとんどがモノクロになる。ん?あそこに生えてる木、なんだか魔力が多いな。あっちの方で動いているのは人か。子供はやっぱり魔力が少ないな。隣を見てみると・・・おぉ、テイル凄いな。もう色が付いている。紫、緑、赤、・・・魔力が高いとこうやって見えるのか。で、池の中は、あ、こいつらか。サバぐらいの大きさだ。
「ハルカ。分かった?」
「ああ。」
「じゃあそのまま突いていくわよ!」
「え!?ちょっと待って。テイルのスキルで陸に揚げれば呼吸が出来なくなるとか無いのか?」
「確かにそうすれば討伐した事にはなるけど、私のスキルは対象との間に空気以外の何かがあると駄目なのよ。」
そうか、今までは空気だったから大丈夫だったけど、今は水があるから無理、と。しょうがない。頑張るしかないか。───網を使うことも考えたけど、それは他の魚も巻き添えになるから辞めよう。
カルプイルの動きは予想以上に速く、剣で突こうとして水面に触った瞬間どこかに行ってしまう。テイルは、流輝鞭に硬化という魔法をかけて槍のように使っている。
「ここだ!───やった!一匹目!」
「ハルカ!?どうやったの!?」
「いや、真上から水面に影を作らないように近づいて、一気に突いただけ。」
地球での勉強に役立たない勉強が役立った。魔法が上手く発動できるのも、昔読んでいた魔法に関する大量の本のお陰だろう。他にもいろいろなどうでも良い知識があるが、今回はその中の一つ。
海にすんでいる小魚は、海鳥に食べられないように背中側は水上からは分かりにくい色になっている。だから見えにくかったのだ。また、魚は基本水の動きで障害物を認識しているので、波をたてると一発でアウトだ。次に、蛙など陸上の小型生物は、鳥の影を恐れると言う。つまりこれを組み合わせればいいわけだ。
こいつらは逃げるのは速くても常はゆったりと泳いでいる。こんなに狙いが付けやすい獲物は無い。
そこから俺達は次々に突いていき、俺の無限収納内にもだいぶ溜まってきたと思う。でもね、楽しいんだこれが。俺達は時間を忘れてずっと池に居続けた。
「ハルカ、私そろそろ疲れたわ。」
「そうだな、じゃあ終わりにするか。」
魔力探知のモノクロ視点から切り替えると・・・あれ?何も見えない?・・・夜!?いつのまにこんなに時間が経ったんだ!?公園や通りの街灯も明かりが点いて、完全に夜だ。しかも池の近くは暗い。───暗視の出番ってわけか。
暗視視点に切り替えると、こっちはカラフルに見える。魔銅板で時刻を確認すると・・・41時。何時間居たんだ俺達・・・とりあえず帰ろう。もう疲れた。
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