27.攻略法
万年草という植物が実在すると知って驚きました。万年緑、と改めさせて頂きます。
今後もよろしくお願いします。
「テイル、万年緑の攻撃方法は、茎と根以外にあると思うか?」
「・・・無いと思うわ。根っこの察知は私もやっておくけど、ハルカも気を抜かないでね。」
「そうだ、テイルに回復薬を一本渡しておくよ。」
「分かった。気をつけてね。」
「任せろ!」
俺は今一度万年緑に向き合う。ここはまだ相手の射程外だけど、射程内、特に根の射程内は危険だ。いつでも無限収納を発動できるように準備しておこう。指先が一瞬でも触れれば、俺の勝ちだ。
「行くぞっ!」
とにかく走る。茎がしなって・・・振り下ろされる。ここは避ける!俺の横で地面に縦にくぼみが出来る。───振り上げられて・・・また来る!今度は横!
ガキィッン!
強攻撃を発動したままにしておいたので、綺麗に弾くことができた。そういえばこのツルツルした表面も、この固さも、見た目も、やっぱり竹みたいだ。というより竹だ。・・・動くけど。
そろそろ根の射程内だ。下からの攻撃も気を付けなければいけない。ある程度は魔力探知で感じられるものの、常に横移動しておかないと危ないな。
「おりゃっ!」
横から薙ぎ払う様に攻撃してきた茎をジャンプでかわしたら、生えている目の前に来た。今だ!根っこまで吸収するように地面の近くを握、
「ハルカ!」
ごすっ
どしゃっ
「ハルカ!大丈夫!?」
テイルが駆け寄って来る。さっき避けたと思った茎がそのままUターンしてきたらしい。それで俺は吹き飛ばされたわけだ。───痛みは、ない。HPも削られていない。BPが高くて良かったと思ったのは(テイルに)崖から落ち(とされ)た時と二回目だ。パウパティとニックの攻撃力が高すぎるんだよなぁ。
「ハルカ、回復薬は?」
「大丈夫。全くダメージは無いから。」
「そう。なら良いんだけど、油断は駄目よ。常に魔力探知で感じられる、空気中の魔力の流れを感じとってね。」
「分かったって。次は成功させるから。」
もう一回万年緑を向いて、構える。それにしても憎たらしいぐらい真っすぐピーンとなっているな。あれだけ動いて疲れないのだろうか。・・・そういえば一応植物だから、疲れてても見ただけじゃ分からないか。
「強攻撃!」
効果が切れているので発動させておく。今度こそ成功させてやる!
突っ込んでくる奴を簡単に近づける訳もなく、万年緑も攻撃を開始する。
「もう合わせるのも慣れてきたぜ!切ってやるよ!」
縦・・・縦・・・横!ここ合わせる!
がきっ!
やっぱり固くて切れたものじゃない。弾くのが精一杯だ。しかも弾くにしても上手くやらないと腕を負傷するだろう。
根に串刺しにされないように気を付けながら、どんどんと距離を詰めていって・・・ここまで来た!根元を触れれば・・・
「ハルカ!横!」
「防御壁!」
よし、俺にダメージを入れられないような攻撃じゃ、この魔法は壊せない。そして俺は根元を握れた。
「無限収納解放!」
俺がスキルを発動すると、万年緑はどんどんと別空間へと吸い込まれて・・・行かない。え?何で?
「危ない!遠距離引力!」
おっと引っ張られた。俺の居た所は・・・うおぅ・・・鋭い根っこが飛び出していますね。
「ありがとうテイル。危なかった。」
「どうしたのハルカ?何で吸い込まないの?」
「いや、俺も吸い込もうとしたんだけど・・・」
「ちゃんと触ったわよね?」
それは確かだ。俺はしっかりと万年緑を握った。なら何故だろう?無限収納に限度は無いし、入れるのも俺の意思で強制的に入る。
じゃあ入らない場合ってなんだ?―――『生きていると入れない』って、生きていると入れられないって事か。・・・黒茸は採取した状態だったから入れられたけど、今この万年緑はしっかりと生命活動をしている。どうすれば良い?
「テイル、無限収納に入らなかったのは、あいつが生きているからだと思う。仮死状態にでもすれば入れられるかもしれない。」
「万年緑を仮死状態に!?無理よ。そんなこと。」
「―――一定の空間を操作する魔法があれば?」
万年緑は逆さまにした状態で熱を加えると死ぬ、とテイルは言っていた。それは土から出した状態じゃないとできないと思っていたが、空間操作系の魔法がこの世界に存在するなら、そこだけを上下反転させれば仮死状態ぐらいには持っていけるかもしれない。
思い立ったが吉日。俺はテイルに魔法辞典を押し付ける。・・・早く文字の勉強をしないとだな。
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