20.太陽を背に
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まずは『黒茸の採取』から始めようという事で、俺達は東の森に向かっている。
「テイル、黒茸ってどんなのなんだ?」
「凄い高級なキノコよ。勿論、味や香りも良いけどね、黒くて小さいから見つけにくいのと、生える場所にも問題があるわ。」
「・・・それは、どんな所なんだ?」
「ある魔物に生えるの。」
つまりそいつを倒さないと駄目ってことか。なるほど、そりゃあ高くなるのも当然だな。
「お、森に着いたな。」
「その魔物が居るのはこの森の北西の方だから、そっちまで移動しないと。」
「外を回ってもいいけど、中を突っ切らないか?ここら辺にいる魔物なんてスライムぐらい・・・あとたまにパウパティだろ?」
「───そうね、経験値稼ぎながら行きましょう。」
そうして俺達は北西に向かって歩いて行った。
途中で出てくるのはスライムばかりだし、前に闘った時より格段に弱い。移動はいもむし並、ジャンプもして来ない。しかもスキルのおかげで手ぶらなまま大量に素材を手に入れられた。
この世界にも太陽のような恒星があって、今立っている星も地球のように自転、公転をしているらしい。だから、地球と同じように方角がわかる。今の時間が18時過ぎだから、北西に向かうには、常にこの世界の太陽に背を向けて歩けばいい。
背を向けて・・・右に見ながら・・・背を向けて・・・・・・正面に・・・左手にあって・・・正面に見ながら・・・違う違う背を向けて・・・・・・いや、左にあって・・・・・・ちゃんと右にしないと・・・正面にあると眩しいな・・・よし、左にあるな・・・・・・・・・
「テイル!」
「うわっ!ビックリした。急に大声出さないでよ。」
「テイル、俺達は、あの星に対してどっちに行く?」
「どうしたのハルカ?さっき確認したじゃない。私達は背を向け、て・・・あれ?左にある・・・?」
「そうだよ!しかも森に入ってから・・・もう1時間以上経ってる!?」
なんだこれ!?ずっと歩いていても辿り着けない・・・いや、考えている事が一定に保てない、のか?
「―――ハルカ!近くに紫色の花がないか探してみて。絶対にお互いを見失わない距離で!」
テイルが何か思いついたみたいだ。とりあえず紫色の花を探してみよう。・・・もしかしたら色を忘れちゃうかも知れないな。気を付けないと。
―――――――――あった!これかな?紫色の花。
「おーい!テイル!あった、ぞ・・・」
あれ?テイルは何処だ?テイルにお互いが見える位置で、って言われたからちょくちょく確認してたのに・・・さっきまであそこに居たよな?
「テイルー!おーい!テイルー?」
マズい。これはマズい。まさか俺達、はぐれたか?ただでさえ一定の方向に進めない状況で一人になるのは最悪だ。しかも万が一パウパティでも出てきたら、テイルじゃ殺されてしまうかも知れない。
「テイル!何処だ!?テイル!」
「射氷!」
ん?今頭に氷が?―――その時、俺の中の霧が晴れていった。
「ハルカ!しっかりして!ハルカ!もう一回撃つ?」
「―――大丈夫。大丈夫だから。」
どうやら俺は意識を手放してたみたいだ。テイルが気付かせてくれなかったら、あのまま違う世界に行ってたかもしれない。いや、今いるこの世界も俺からすれば違う世界だけど。
あ、そうだ。紫色の花は?
「流石だわハルカ!私が探してたのはこの花、惑香花よ。これのせいで方向が定まらなかったり、今ハルカがおかしくなったのよ。ハルカが死ななくてよかったわ。」
やっぱり俺死にかけてたんだ。ていうかそんな花があるって、意外と東の森って危険なんじゃ・・・
「これを採っちゃえば私達の勝ちよ。ついでにこの花は素材として売れるから、ハルカ持っておいて。」
よし、惑香花を無限収納にしまって、方角を再確認しよう。今の時間がだいたい21時だから、あの太陽に背を向けつつ少し右寄りに進んでいく感じか。
「ハルカ、凄いことに気付いちゃったわ。」
「なんだ?」
「私のスキルを使った方が速いんじゃない?」
あ!完全に忘れてた。そういえば移動にも使えるのか。それなら15mは方角も一定だし、最高じゃないか!
「よし、テイル、頼む!」
「ハルカはあとから引っ張るわね。遠距離引力!」
これは凄い。どんどん進める!・・・なんだか湿度が高くなって気がするな。いや、凄いジメジメしてきた。うわ〜気持ち悪い。なんでここだけこんなに湿度が高いんだ?―――でも湿度が高いって事は・・・キノコが生える環境だ!
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