195.手術
前書き、書くことないです。
早く行けと促されて、銃弾を撃ち込まれた足の治療のためにギルドに来た。病院もあるらしいが、病院がどこにあるか分からなかったのとギルドでも病院と同じような設備が整っているという事だったのでギルドにしたのだ。
が、まず向かうのは今借りている部屋だ。先に何日も連続で借りているのでチェックアウトしたり職員が部屋に入ってりする事は無いが、朝急いで部屋を飛び出してきたので卵がそのままなのだ。部屋にウェズを残して来ればよかったかな・・・
『クァ?』
「うぉっと。急に鳴かれると驚くぞ。」
体の中に入っていても会話はできる。はたして会話と言って良いものなのか分からないが、ウェズの声は直接脳に届いてくるのだ。
痛む右足に体重を掛けないように注意しながら部屋まで戻り、卵を包んで置いてあるベッドに辿り着く。
「ふぅ、何も変わりないな。」
そろそろ生まれるような気がしなくもない。長い時間外出している間に生まれたりしたら大変なことだ。運が良いと物凄く運が良くなるとかいう俺の謎スキル、稀強運が発動して、俺が近くにいる時に生まれてきてほしいものだ。
「ウェズ。」
「クァ!」
勢いよく出てきた。勢いが強すぎて天井に頭ぶつけてたけど、大丈夫か?
「卵を見ていてくれないか?誰か来たら、卵を持ってお前も隠れろ。良いな?」
「クワァ!」
任せろ、と言わんばかりに胸を張り、翼でポンポンやっている。可愛い。
「それじゃ、頼んだぞ。」
部屋を出てしっかりと鍵を閉め、受付へ行く。
「あのー、すいません。」
「どうされましたか?」
「なんかギルドで病院みたいな事やってるって聞いたんですけど。」
「でしたら、あちらになります。」
受付の人が指した先には白いドアがあった。
「あ、ありがとうございます。」
どんどん痛みが増してくる右足を軽く引きずりながりら、そっちに向かう。
中に入るといかにも大型病院といった感じで、長椅子が並べられて待合室になっており、受付には看護師が立っている。
「身分証をお願いします。」
「はい。」
冒険者カードを差し出す。
「ハルカ様ですね。本日は、どうされましたか?」
「えっと、右足首に銃弾が撃ち込まれたので、それを診てもらいたくて。」
「分かりました。右足首に銃弾、と。それでは、待合室の方でお待ちくだ・・銃弾!?」
医者に渡すのだろう、患者の様態を書く書類に何かを書いていたので反応が遅れたが、銃弾というパワーワードに手が止まった。
「え、え、銃弾を撃ち込まれたんですか・・・?」
「撃ち込まれました。」
「し、至急対応します!こちらへ!あー、いや、歩けますか!?」
「歩けますけど・・・」
そんなに慌てられると、任せて大丈夫か心配になってくる。
受付の看護師に連れられて奥へと入る。受付の横にあるドアの奥には、長い廊下と沢山のドア、それぞれに何科、何科とかかれた小さな看板がある。
その後いろいろあった。通話の腕輪により連絡が成され、とりあえずベッドに横にされ、消毒と怪我の度合いの確認。準備が整ったのかベッドごと移動され、今に至るわけだが。
「手術を行います。よろしいですか?」
「え、え?いきなりですか?」
「同意書にサインさえ頂ければ、すぐにでも。」
「やっぱり、弾って取り除かないと駄目ですか?」
「あと数日で足首が使い物にならなくなりますけどね。」
「お願いします。」
ざっと同意書に目を通す。術後のなんとかがかんとかだの、手術の内容はどうだの、別に気になる点とか怪しい点は無かったので、即刻サインを書いた。
そこからは早かった。記憶にあるのは麻酔が打たれたところまで。麻酔と言っても注射ではなく、何か魔道具が心臓の上に置かれた瞬間に全身に麻酔が回り、意識が途切れた。次に起きたときには、光の当てられた手術室ではなく白い天井だった。
そして白い天井を見つめてから数秒、ある事に思い当たった。
「麻酔って、あれ魔道具だったよな・・・。つまりは、魔力・・・」
これは大変な事になってしまったかもしれない。
俺は転生特典で、魔力を用いて何か効果を起こすものを一度受けると、二度目以降が効かなくなる。戦闘で相手が魔法で戦う場合は強い。が、今後麻酔が効かなくなってしまった。
「これは、もう大怪我できないな・・・」
無限収納の中に入れておいた魔銅板と通話の腕輪を取り出す。
「えっと時間は―――40時か。」
26時過ぎぐらいにギルドに帰ってきたので、まあそんなものか。
というかお腹が空いた。朝に一粒携帯食を食べただけで、何も口にしていない。携帯食は持っているが、術後ってそんな栄養食食べない方がいいのかな?分からない。
それは保留として、通話の腕輪でテイルに連絡を入れる。
ピピピピピっ、ピピピ、
『もしもし?』
「テイル、一つ聞きたいんだけど。」
『えぇ。』
「拳銃って違法だよな?」
『弾が発射されるものは違法よ。殺傷能力が高いからね。でも、なんで急にそんなこと聞くの?』
「右足首を銃で撃ち抜かれたから?」
『なんで疑問系なの?』
「知らない。」
『そう。じゃ、おやすみ。』
「おやすみ。」
撃たれたことについて何も触れないその感じ、テイルらしいが少し悲しい。ちょっとぐらい心配してくれても良いんじゃないか・・・?
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