192.拠点制圧
誤字報告ありがとうございました。
今後もよろしくお願いします!
やはりバレたか。急いで捕まえなければ逃げられてしまう。
「蔓振!」
蔓が物凄い勢いで伸び、逃げていた最後の一人をギリギリで捕まえた。
「ハルカさん!2人置いていきます。先に進みましょう!」
「はい!」
軽装備の男性と護衛の為に重装備の男性を一人、この部屋に残して先に進む。全員がここを離れると、その間にここから得られる情報が他の組員に掻き消されるからだ。
部屋の中は酒場のようになっていて、机と椅子が多数、カウンターが一つとその奥にお酒が並んでいる。おそらく朝から酒を呑んでいたのだろう、ジョッキや硬貨が散乱し、床には液体が広がっている。
扉はカウンターの横にあり、その上空に吊り上げられた組員が居る。
俺達が扉を抜けて部屋の奥に向かうと同時、組員は魔法と縄、二重で拘束された。それを確認して、俺は魔法を解く。
次の部屋は温室のようになっていた。俺は恒温変移のお陰で暑さは感じない。が、この異様に高い湿度は肌で嫌というほど感じる。
不思議な紫色の照明。通路と思しき一定の距離をおいて並べられた金属の棚と、その全ての段に敷き詰められた土から生えている、見たことのない小さな植物。
そして、刺激臭のような、甘いような、独特の香り。
「ハルカさん息を止めて!この植物は麻薬です!」
おっとマジか。息を止めながら急いで部屋の反対側まで走り抜ける。・・・が、そこには扉も何もない、ただの壁が広がっていた。
「こんなもので私達を止められると思っているのかしら?」
しかしこの仕掛けも、BMMのメンバーが一発で見抜いた。
壁だと思っていたが、この壁自体が引き戸。部屋の隅に取り付けられた取手を横に引くと、壁が1m程横にズレた。その隙間から急いで次に向かう。
そこには上に登る階段があり、既に上に登っている奴と、まだ途中の奴がいた。
「くそっ!もう来やがった!」
「射氷!」
一番後ろの奴が射氷を撃ってきた。が、俺は無効化できる。魔力を用いて何か作用するものは、一度受ければ二度目以降が無効化される、俺の能力だ。
自分でも忘れかけていた能力だが、今のBPがあればあまり関係ない気もする。しかも上がりすぎた身体能力のせいで魔法は当たらないし、攻撃される前に倒しきれるのだから、むしろ強化魔法や回復魔法を受けられないというデメリットが目立つ。
「なんで効かねぇんだよ!」
登り途中の二人が焦ったように何度も撃ってくる。その間に俺の後ろで詠唱が終了した。
「「全てを包み込みし力よ、不視の縄にて縛れ!硬拘束!」」
BMMのメンバー二人が一人ずつ拘束魔法で動きを封じる。恐らく重戦士だろう、大盾と大剣を持ったメンバーを念の為ここに残し、13人で先に進む。
「そこ危ない!」
「え?」
階段を登っていると、後ろにいたKが叫んだ。が、遅かった。俺の右足は階段の罠を踏み抜き、ガコン、という音とともに階段が全て無くなった。
メンバーほとんどが登り始めており、俺達先頭は結構高い位置にいた。俺は大丈夫だが、それこそKはこの高さから落ちたら怪我をしてしまうだろう。
「変速!」
第二魔法も殲滅魔法へと昇華しているので、離法時宙華龍が発動されたという事だ。
そもそもこの魔法、普通に発動しようとすると、①超高レベルの魔法職の人がMP全消費するぐらい。②詠唱が長い。とにかく長い。魔法辞典数十ページにわたり、念仏の数倍ある。読むの諦めた。③魔力操作の難易度が不可能なレベル。そもそも覚えられない気がする。
ということで、もしかしたら世界で俺しか使えないんじゃないかという魔法だ。
世界中の時が止まり、俺の意識だけが動く。まあ解除すれば、空中で止まったまま手や足だけが動かせたり、重力の影響を受けて移動することもできる。しかし、時間の止まったものに何をしても効果はないので、俺だけが動いて組員を捕まえてくることはできない。
「はーい、戻って戻って〜!」
くるくると指を回し、まあこの動きに意味は無いのだが、時間を巻き戻していく。階段は元に戻り、俺を含めた落ちている人達も階段に戻る。俺が罠を踏む少し前まで巻き戻したところで一息つく。
これを使えば、逃げた組員もここに戻ってくるじゃん!と思うかもしれないが、この時間巻き戻しは世界全体に働く。つまり、組員をここに持ってくると、俺たちも前の部屋に戻ってしまうのだ。
「よし、時属性の殲滅魔法もどんな感じがわかったし、解除!」
時の流れが元に戻った。
「そこ危ない!」
Kが叫ぶ。今度は踏み抜かない。一段とばして先に進む。
後ろのメンバー達も罠を踏まずに登ってくる。
2階に登ると、廊下の先を走る組員たちが視界に入った。
「蔓振!」
今度は4人、捕まえた。魔力をちょっと操れば、太い蔓に絡み取られた組員たちを、文字通りこのまま潰すことができる。が、それでは情報が引き出せない。力を弱めて捉えているだけだ。
「ハルカさんナイスです!」
しかしまだ全員ではない。重装備メンバーを二人残し、先へ進む。
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