190.昇華
投稿誰か変わっていただけませんか・・・
「やったできた!」
練習開始から3時間。何度も魔力譲渡を行ったが、ようやく強固な障壁を一人で作ることに成功した。一度補助ありでできてからが長く、形が崩れたり、長く続かなかったりと色々大変だった。が、ついに成功させることができたのだ。
「おめでとうコウ!よく頑張ったな!」
「いや、先生の教え方が上手いからですよ!」
何故か途中から俺は先生と呼ばれていた。まあ名前を言っていないからかもしれないが。
「それじゃあ今日はもう帰って寝た方がいい。魔力を消費すると疲れるからな。」
「そうすることにします。先生は、王都に住んでいるんですか?」
「いや、俺はメーベリオン国ってところのナシヤットっていう街のギルドに住んでる。ここにもよく来るけどな。」
「そうなんですか。明日は?教えてもらえませんか?」
明日か・・・今日のブラッドベム騒動がどれくらい影響するかは分からないが、明日ずっと暇という事にはならないだろう。むしろ支部長から何か言われる気がする。
「まだ分からないけど、多分忙しいと思う。」
「そうですか・・・それじゃあまたいつか、魔法を教えてください!」
「あぁ、良いぞ。」
「それじゃあ、さようなら!」
そう言って少年は手を振りながら、訓練所を出ていった。俺も手を振って見送る。
さて、そろそろテイル達も屋敷に帰っている時間だろう。
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「え、駄目なんですか?」
「駄目です。」
「どうしても?」
「駄目です。」
「身分確認あっても?」
「絶対に入れられません。」
「そこをなんとか?」
「できません。」
「か〜ら〜の〜?」
「しつこいですね。」
「すいません・・・」
王城付近、屋敷街の周りから立ち入り禁止になっており、会うどころか近づく事もできなかった。
ちょっとふざけ過ぎて、見張りの騎士を苛つかせてしまった。
――――――――――――――――――
ということで帰ってまいりました訓練所。
「あーもう!ブラッドベムぅ!塊闇!」
ブラッドベムのせいでテイル達に会いにいけなかった。そのイライラを闇属性の魔法として壁に向かって放つ。
俺はてっきり、光線が放たれると思っていた。が、違った。
闇で形作られた、ギザギザと角の立った、龍の頭が壁に向かっていった。そして壁に当たった闇の龍は丸く広がり、じわじわとその黒い範囲を広めていった。直径が3,4m程に広がると、一瞬にして消えた。
「え、何・・・今の・・・」
明らかに闇暗線ではない。というか、殲滅魔法の喰覆蝕深闇龍ではないだろうか。
第一魔法が殲滅魔法に昇華したと思ったら、第二魔法と一緒に進化したのか?
「てことは、塊輝!」
これまた光熱線ではない。さっきと同じような、光で形作られた輝く龍頭が壁に向かっていき、白い範囲が3,4m程に広がると、一瞬にして消えた。包覆流輝光龍だ。
周りの冒険者の視線?知らんな。よし、訓練所から出よう。そうしよう。別に変なものを見るような目で見られているから、早くここから離れたいわけではない。やることが無いからだ。
更に使いにくくなってしまった自分の魔法にうんざりしながらロビーを歩いていると、支部長に呼ばれた。
「ハルカさん!」
「こんなに支部長と話す機会のある冒険者なんていませんよ?」
「勇者がいます。それでですね、・・」
嫌味というか皮肉というか、少しそういう雰囲気を含んで発した言葉は『勇者』という単語の前にバッサリと切り落とされた。
「王城にブラッドベムの組員が侵入したという話は、ハルカさんなら知っていますよね?」
えぇまぁ。それ鎮めに行ったの俺ですしね。
「この際だから言っておきましょう。ダンジョンの異変の犯人ですが、ブラッドベムでした。」
「あぁ、そうなんですか。」
グルシュ王国で詳しい話を聞けとか言われた時から怪しいと思っていたが、結局そういうことか。こりゃあダンジョンと王城強襲、犯人が同じなんだったら手間が省けていい。
「あっさりした反応ですね。」
「まあ、だいたい予想がついていましたし。」
「では明日、拠点の一つに攻め入りますので、手伝って頂きます。よろしいですね?」
なんだ、俺が手伝うのは決定事項なのか。
「ちょっと待ってください。王城の方の、屋敷街に入れるのっていつからぐらいになりそうですか?」
「あそこの管轄はギルドではなく騎士団ですのでなんとも言えませんが・・・まぁ全領会議が終わって貴族達がそれぞれの邸宅に帰るまでは無理でしょうね。」
「そうですよね・・・。それじゃあ、ブラッドベムの、手伝います。」
「ありがとうございます!ハルカさんに手伝って頂ければ、百人力ですよ!それでは、明日の18時、ロビーに来てください。」
「分かりました。」
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