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184.全領会議

評価点数上がってますね。ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします。

「では初めに、今日から参加する、ロンド伯爵家のテイル嬢より、挨拶をいただこう。」


 ギール王が言った。


「えっ!?」


 つい声が出てしまった。やっちゃったわ。でも、そんなこと聞いてないんですけど!?

 カッと横のお父さんを見ると、『知らなかった。まあ頑張って。』みたいな顔でこっちをみている。いやいきなり挨拶なんて、緊張を通り越して気絶するわよ?


がたっ


 とにかく席から立つ。100人近い大人たちの視線が一気に集まってくる。落ち着こうと思えば思う程緊張し、体は硬直して頭は回らない。

 たらたらと冷や汗が流れてきて、時間だけが過ぎていく。お母さんの心配そうな表情にも気づかず、失礼と分かっていながらもただ王を凝視することしかできない。


「あ、あの、えっと、ふぅ。───テイル・ロンドと申します。きゅ、急な参加にも関わらず、こうして迎え入れて頂けたことに、感謝申し上げます。若輩者ではありますが、どうか、よろしくお願いします!」


 っなんとか、言えた!・・・でも、今ので良かったのかしら?急に不安になってきたわ。変な言葉使ってなかったかしら?


「ありがとうテイル嬢。こちらこそ、よろしく頼むよ。」


 ボーっとしてしまっていた。お父さんに引っ張られて、ようやく礼をしながら座った。


 それから会議が始まった。それぞれの報告は初日に、昨日は話し合いに入り、今日まで持ち越していた議題が2つ残っているらしいわ。配られた資料に細かい内容が書いてるのね。

 ひとつは、ここ最近の経済成長率が伸び悩んでいる件について。もうひとつは、ここ最近グルシュ王国に面するシィ砂漠において、ベムが増加している件について。


 前者に関しては、普段グルシュに居ない私が分かるわけもなく・・・ただ大人たちがああじゃないこうじゃない言いあっているのを見ている事しかできなかったわ。でも、この雰囲気には少し慣れることができた。


 でも、これだけの人数が居て、それぞれに意見があって、それぞれ譲れない部分があると、話し合いが論争になってくることも分かったわ。あまり過熱しすぎると、騎士団長とかが止めるのだけれど、あとで亜人の話題を出したらこうなりそうね。


 途中で昼食を兼ねた休憩があって、物凄く豪勢な食事が出されたの。他の人たちがどう思っているかは知らないけれど、私はこういうのあまり好きじゃないわね。

 貴重な食材なんだろうけど、何なのか良く分からないものが少しずつ色々出されて、食べて気にならなかったわ。これなら、依頼を達成した後に食べる骨付き肉の方がよっぽど美味しいわよ。


「テイル、さっきの話し合い、どう感じた?」


「少なくとも会議って感じじゃないわね・・・」


「確かにそうだな。だが、あれだけの人数がいる以上、仕方ないんだ。48家それぞれ2人以上はいるからな。」


「さっき経済の話は終わったから、この後ベムの事についてよね?」


 お母さんが資料を見ながら確認する。


「なら私も役立つかしら?一応会議に出席している人たちの中で、一番ベムと触れ合っているとは思うんだけれど・・・」


「そうだな。テイル、頑張れよ。」


 そうは言われても、緊張で何もできないかもしれない。私の意見なんて、誰も聞かないかもしれない。そして、ここで何かやらかすとあとで不利に働くかもしれない。その恐怖が余計に緊張感を高める。

 不安要素がたくさんある中で、昼休憩が終わり、会議が再開された。



「では午後は、シィ砂漠において増加しているベムについて、情報共有と今後の対策を考えていこう。」


 ギール王の言葉に続いて、一人の貴族が手を挙げた。


「では、今回この議題を提出した私からも一言。シィ砂漠はグルシュ王国の南に位置する砂漠であり、他国からシィ砂漠を通って来る人間も少なくないです。輸送ルートとしても使っており、我が国の経済を支えている柱のうちの一本です。しかし最近、シィ砂漠に出現する、ベムという魔物が異常に増加しているという観測結果が出ています。国内の輸送企業からも、危険だという声が上がっています。この問題について、対策方法を考えたいと思っています。」


 そういえば今回ここに来る時に、ベムが沢山いたわね。確かに、あの数は異常だわ。それなりの冒険者にとってはEランクのベム一匹は簡単な敵だけれど、あれだけ数が多いと倒される可能性もあるし、商人なんてひとたまりもないわね。

 あそこを通ろうとしたらそれだけの冒険者を護衛に雇わないといけないから、出費も痛いだろうし、どうにかしてくれって言われるのも納得できるわ。


「その、ベムというのはどんな魔物なんですの?」


 貴族の一人がそんな質問をした。まったく、それくらいの知識は貴族として習っているべきではないの?・・・いや、冒険者になろうとして大量にそういう知識を詰め込んでいた私の方がおかしいのかしら?


 その質問に対して最初に発言した貴族が答えた。特に間違った情報も、抜けている情報も無い。

 そのあと全員が少し無言で考えたが、すぐに次の発言者が現れた。


「そんなの、冒険者を雇えばいいだけじゃないか。魔物の中では弱い部類なのだろう?」


「ですから、その数が異常に多くなっていて、だから困っているんです。」


「なら雇う冒険者も多くすればいい、だろ?」


 こういうタイプの貴族は典型的な駄目なやつだ。財産と権力だけがあり、何も考えられないタイプの。ここで意を決して、冒険者としても活動中の私から発言してみようと思う。

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