181.作戦
遅くなりました。すいません。
貴族が滞在しているのは王城近くの建物らしい。家に一棟、貸し与えられるという。さすが貴族。その中のロンド家の滞在場所の地図を貰い、早速向かう・・・ことはしなかった。とりあえず、寝る。
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起きたときにはまさかの25時。まあ朝方から寝始めたから仕方ないだろう。が、テイルはこの現実に絶望していた。
「やっちゃったわ!あーもう、動ける日を一日逃すなんて!」
「うん、とにかく俺はまだテイルの考えている作戦が全く分かってないんだけど?」
「はぁ、今日は情報収集だけに留めるしかないわね。細かい内容は、お昼ご飯食べながら説明するわ。」
お昼ご飯は宿泊プランの中に入っていない。ということで食事処だ。
「まず、全領会議の中には、国の方針を決める会議があるわ。」
「あぁ、そう言ってたな。」
「その会議の場で、反亜人迫害勢力の貴族達で一気に迫害勢力を叩くの。それで上手くいけば、処刑とまではならないだろうし、罪自体が無くなるかもしれないわ!」
・・・なるほど。テイルにしては考えたな。
「でも、反亜人迫害勢力なんてそんなにいるのか?」
「その情報収集を今日中に終わらせるの!夜にはロンド家の滞在場所まで行って、お父さん達に協力してもらう。私だと見向きもされないでしょうけど、お父さんから言えば、貴族達も集まるわ。」
「よし分かった!少し俺にも希望が見えてきた。それじゃあさっさと食べ終わろう。」
昼食を食べ終わり、最初にテイルがとった行動は・・・まさかのギルド受付で支部長と会わせてくれ。いや情報収集ってまさかギルド頼みなのかよ!?
でもよくよく考えればそれぞれの貴族の情報なんてどこに聞いてまわるんだという事になる。この時間帯は全員王城で会議中だろうし、直接聞けないのだから仕方ない。
支部長の時間が空いているという事で、すぐに応接室に通してくれた。
「なんか、すいません。」
「いえ、今は警備が強化されているので犯罪が減り、私が捌く資料も減っていますので。」
それ以外も色々あって忙しいとは思うのだが・・・まぁ快く会ってくれたのだ。さっそく本題に移ろう。
「アルバートギルドグルシュ支部長、テイル・ロンドとしてお願い申し上げます。この国の貴族のリストと、亜人迫害主義かそうじゃないかを知りたいんです。やっていただけますか?」
テイルが凄い真剣な顔と雰囲気で頼む。一貴族としてギルドに依頼したわけだ。
支部長は少し考えてから、口を開いた。
「良いでしょう。依頼料は支払っていただきますよ?」
「勿論です。」
細かな個人情報とかなら駄目だったろうが、亜人迫害主義か否かぐらいなら教えても大丈夫だという事だろう。
「少し、ここで待っていてください。今、資料を持ってきます。」
そう言って部屋から出ていった支部長が戻ってきたのは10分後。ただ資料を持ってくるだけにしては遅いが、そんな贅沢は言えない。手にはファイルを二つほど、そして顔には驚きと焦りとなんかいろいろ混ざったような表情を浮かべていた。
「これが、資料、ですけど、いやそれどころじゃないでしょ!」
今の支部長の状態を一言で表すならこれ以上良い言葉は無い。混乱。
「ど、どうしたんですか。」
「今ギルドの上からの連絡が来ましたけど!あんたたち何やってるんですか!」
え?何かやったっけ?リーアが捕まってワーワー言ってたら、その前にもっと重い罪を犯してたとか嫌だからな?
「Sランクを討伐したって!」
「あ、そっちか。」
つい声に出してしまった。
「そんなことよりこっちの資料を・・「そんなこと!?そんなことってなんですか!?」
あまりの威圧感に少し体が押された。今の支部長はリーアの威嚇よりも凄い気がする。
「あ、すいません。でも、Sランクの討伐なんて・・・」
「しない方が良かったですか・・・?」
俺は心配になって聞いてみた。Sランクはそれぞれ世界に1匹しかいないと言っていた。もしかしたら完全に倒さないで研究したいとかだったのかもしれないと思ったのだ。
「いえそんな!ありがたい限りですよ!もうなんか、ハルカさんも勇者様みたいですね。」
それは困る。勇者が二人いる世界なんてなんか嫌だし、そもそも俺はニックみたいになりたい訳じゃない。本人曰く、個人的な指名依頼はあるし、会食は面倒くさいし、街でも気軽に外を出歩けないらしい。
俺と支部長が話している横で、テイルは一人机に置かれた資料を読んでいた。
「ふむふむ、支部長、よくこんな資料ありましたね。」
「それぞれの家の家訓や考え方をまとめておけば、何か問題があった時にも対応しやすいですからね。貴族同士のいざこざの理由が、宗教の違いだったということもよくあります。」
テイルが数えたところ、グルシュ王国内の貴族は全部で48家。そのうち非迫害が6、明言していないのが28、迫害が14家らしい。
明言していない家のうち19家以上こちら側についてくれれば半数は超える。ただ、王が迫害勢力ということが一番の問題だ。
明言していない家は、批判や争いを避けるべく言っていない、もしくは何とも思っていないの2択だ。後者の場合、わざわざ王の意思に背いて非迫害勢力に付くとは考えにくい。だいぶ辛い戦いになりそうだ。
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