180.事情聴取
(何もネタがない)
「ハルカさん、あなたは冒険者としてパーティーを組んでいます。そして、その仲間に、リーアという亜人がいる。間違いないですか?」
俺は無言で頷く。
「そのリーアさんが本日、グルシュ王国への不法侵入を図り、逮捕されました。」
はい、そのとおりです。
「その同時刻、ハルカさんと、もう一人の仲間であるテイル・ロンドさんの入国が確認されています。間違いないですか?」
またしても俺は無言で頷く。
「ハルカさんは、リーアさんの不法侵入をご存知でしたか?」
「・・・はい。」
「それなら何故、止めなかっ―――」
その後も色々と聞かれた。俺がどれくらい関与しているのか、リーアの動機は分かるか、などなど色々と聞かれた。卵の事について聞かれなかったのは幸いだった。布にくるんで持っているので、他の何か荷物だと思われたのだろう。
事情聴取が終わり部屋を出ると、ほぼ同時に隣の部屋からテイルが出てきた。ピルネに部屋を借りたが、泊まるのはギルドに変わってしまった。代金差はギルドが払ってくれたのでその点に関してだけは良いのだが。
取ってもらった部屋に向かおうとすると、後ろから誰かに呼び止められた。
「あ・・・支部長。こんばんわ。」
「もう時間的にはおはようなんですが、大丈夫ですか?物凄く疲れているように見えるんですが・・・」
「正直なところ、かなりきついですね。」
「話は、聞いています。本当はすぐにでも休んでいただきたいんですが、少しだけ、お話良いですか?」
俺とテイルは内心あまり乗り気でないながらも、ゆっくりと頷いた。すると支部長は、俺達を支部長室へと通してくれた。支部長室は応接室のように良い机や良い椅子があるわけではない。ただ、人は来ないだろう。
一応椅子が無い訳ではなく、椅子と机、飲み物を用意してくれた。飲み物は温かく、少し落ち着いた。
「一度リーアさんがこちらにいらした時に、ここにくる方法を私も黙認した身ですが、まさか捕まってしまうとは・・・」
「なんか、警報のようなものが作動した感じでした。」
「警報?前回と、何か身に着けている物が違いましたか?」
「今までは、服を着ているだけでした。でも今回は、魔力が付与されたナックルダスターと、通話の腕輪を。」
「それが原因ですね。再外壁には、MPにして1以上の魔力を有する者が通過すると鳴る魔法警戒網が敷かれているんです。よっぽど特殊なものでなければ、服に含まれる魔力量はMPで表すと1にもなりません。ですから、魔力を持たない狼の獣人であるリーアさんには、最初反応しなかったのかと。」
「武器や魔道具の方に反応した、と。」
「おそらく。」
じゃあもし、俺があの時武器屋でナックルダスターを買う許可を出さなければ、ここに来る前に通話の腕輪を買わなければ・・・!
「ハルカ・・・駄目よ。ハルカのせいじゃないわ。」
俺の考えていることを感じ取ったのか、テイルが固く握った拳の上に手を重ねてくる。
「あの、支部長。この後、リーアは・・・」
「司法はギルドの管轄ではないです。裁くのは、王の陣営、とでも言いましょうか。ですので、亜人である以上、罪は法に反して重くなります。」
テイルからに留まらず、ギルド支部長の、言ってしまえば警視総監の口から告げられたその言葉は事実として重くのしかかってきた。俺の拳を握る力はさらに強まり、目からは抑えきれない感情が溢れ出した。屈辱、焦り、怒り、自責。もう何も考えたくない。
「───ですが、そんなすぐにとはならないでしょう。」
「どういうことですか?」
何も言えない俺に変わってテイルが言う。
「今ここグルシュ王国では、昨日から全領会議が開催されている最中なのです。テイルさんも、ご存じなのでは?」
「あぁ、そういえばそんなものがあったわね。」
「ハルカさんはご存じないかと思いますが、全領会議というのは、年に2度、グルシュ王国内全ての貴族が王都に集まり開かれる会議の事です。それぞれの報告や今後の国の方針など、様々なことが話し合われます。そしてそれは、数日にわたります。」
───それがどうしたというのだ。
「ですので今、王の陣営は司法に手を回しているほど暇ではないのです。連日慌ただしく動いていますので。」
「・・・ほう?」
「そこから何か、好転させられないかなー、と。」
なんだ、特に作戦があるわけじゃないのか。でも、それは結構大きいかもしれない。もし本当に裁判、処罰までに時間があるなら、何かできるかもしれないしな。
「ねぇ、私、良い事思いついちゃったかもしれない。支部長、ロンド家の滞在場所を教えてください。」
「本当は教えてはいけないのですが、テイルさんはロンド家の方なので良いですよね。うん。きっとそうだ。」
なんか支部長が凄い自分に言い聞かせている。・・・罪に問われたりしないよな?大丈夫だよな?
感想、誤字報告、ブクマ登録、高評価、お願いします!