173.共同戦線
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「現世を流れる時の流れ、空間を支配する時の流れよ。この今という時を世界から切り離し、我が望みし形を接ぎ込んで見せよ!今は満月の夜0時である!流塞願部時更!」
またもや出ました時魔法。そういえば、何故満月の0時にこだわるのかなのだが、一つは月が見やすい。一つは暗視を使ったときの光量が丁度いい。一つはなんとなく満月が格好良い、だ。
空間の時間が変更され、竜巻は一つを残して消え去り、空には満月が昇った。
「こ、これは・・・!ハルカ!?」
「ん?時魔法だよ。」
「いやそれは知ってるが・・・」
まぁ困惑するのも仕方ないか。
「ハルカ!ボクも最初から本気で良いんだよね?」
「あぁ。」
「祝福発動!そして、開眼!」
一度白く輝いて姿が変わったリーアは、遠吠えとともに体をのけ反らせると、毛色が先端から徐々に黒く、そして開いた右目からは真っ赤な光が溢れ出た。
ニックとエスティラさんは口を開けてポカーンとしている。そんなことよりも戦闘が優先じゃないのかい?勇者様とそのお仲間さん?
───キュゥィ!
ウィーザラードが鳴いた。
「行くぞ!」
「えぇ!」
「うん!」
「あ、あぁ・・・そうだな。やるぞエスティラ!」
「え、えぇ!」
全員が戦闘態勢をとり、暗視を発動させる。竜巻が無くなり、視界は確保された。魔力探知も正常に機能している。───その中で一つ残る異常。大きな竜巻と、その前に浮かぶ小さな魔物。
どう戦えばいいだろう。まず、相手の移動速度は異様に速い。邪眼を開眼した今のリーアなら追いつけるだろうか?
そして、喰らうと止血できない斬撃。これは避け切れなかったとはいえテイルでも反応できた。爪で切り裂きに飛んできているのだろうが、魔力を感じられる今なら何とかなりそうだ。
問題は、竜巻を操れるかどうかだ。さすがにあれを攻撃や防御に使われたら対応は難しい。でもまあ、アイツが作り出しているわけだし、アイツの後ろに固定されてるし、そもそもSランクだし、操って来るだろう。風に関してはテイルのスキルも当てにならない。
「とりあえず、ボクが行ってみても良いかな?」
「分かった。援護する。」
「僕も援護に回ろう。」
「私たちは後ろに回るわね。行きましょ、テイルさん。」
エスティラさんとテイルはぐるっと回って竜巻の後ろ側へ向かった。俺達は正面からだ。リーアを真ん中に俺が右、ニックが左を行く。問題としてはリーアのスピードについていけずに援護できないことが挙げられるが、気にせず行こう。
「衝撃!」
すかっ
最初の一撃、武器屋で店員さんから聞いた通り魔力効果発動の引き金を引いてみたのだろうが、そもそも攻撃を避けられては意味がない。あのスピード、俺でも絶対に避け切れないだろうに・・・
「まだまだ!はっ!」
拳は外れたものの、リーアは攻撃の手を休めることは無かった。今の開眼中のリーアは光属性と闇属性の魔力を運用できるのだ。しかもその上限が無いので、魔力をそのまま高濃度に圧縮して光線として発射できるのだ。空中で掌から放たれた闇の光線は、これまた躱されてしまった。
地上に落ちるまでに何本も光線を発射するも、ことごとく躱されている。それも、ウィーザラードの奴、笑っていやがる。
「もう一回!っりゃ!衝g」
───キュィッ!
ごうっ
今度は思いっきり反撃を受けた。正面から風で押し戻されたのだ。物凄い勢いで背中から地面に向かって落ちている。
「リーア!」
急いで下まで行きキャッチ!祝福を受けた状態であんまりダメージは負わせられないからな。
「僕が行く!」
今度はニックが跳んだ。なんだあの跳躍力・・・とかじゃない。援護援護。
「塊輝!」
ウィーザラードを動けなくする位置に光線を撃ち込む。ちなみに何故光熱線かというと、光属性ならニックに当たっても大丈夫な気がしたからだ。いや、むしろ闇暗線の方が打ち消せたりするのかな?まあいいや。
───キュァッ!?
ざしゅっ
「なんだ・・・?」
どうしたのだろう。ニックの様子が何か変だ。俺の目にはその小さな体を剣で切り裂いたように見えたのだが。・・・いや、そうでもなさそうだ。剣は空を切っただけでその刃に何も捉えないまま、イタチの幻影が消えていった。
「駄目だ。避けられたな。」
地面に戻ってきたニックが言う。果たして避けられたのだろうか?というか今どこに?
―――っ!
がきぃん!
「っふぅ、危ねぇ・・・」
いつの間にか後ろに回り込まれていた。何とか剣で攻撃は防いだが、ここまでの移動方法と魔力隠蔽方法が分からない。コイツの動き方を完璧に把握しないと、攻撃を受ける確率が何十倍にもなってしまう。
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