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171.砂煙の平野へ

眠いです。

「タチバナくん!タチバナくん!」


 俺達が美味しく夕食を食べていると、アルバルト支部長が受付の方から小走りにやってきた。今度は何を言われるのやら・・・


「いろいろと大変なことになってる。君達にも助けてもらいたい。」


「何がですか?」


 そこから俺達3人をぐっと近寄らせ、周りに聞こえないようにしながら小声で話し始めた。


「ほら、この間のダンジョンの設備がおかしいという話なんだが・・・」


「え?なにそれ。」


「あぁ、俺がソフィアさん達と行ってきたんだよ。そこで視覚共有(ヴィジョルニア)を手に入れた。」


「それで、その原因が分かったんだ。───詳しい事は、グルシュ王国のギルドで聞いてくれ。」


 なんだ、結局また違う場所に移動しなければいけないのか。ただ、あれの原因が分かったのならどうにかするしかないだろう。


「という訳だそうだ。二人とも付き合ってくれるか?」


「勿論!」

「ボクも手伝うよ。」


 ということで次の目的地はグルシュ王国だ。そろそろ行き飽きてくる気もしないでもないが、仕方ない。

 夕飯を食べ終えたらお風呂に入り、少し早めの時間ではあるが眠りにつく。



 次の日の朝、グルシュに向かう前に買っておきたいものが二つある。一つはこの前痛い目をみた魔力用回復薬(ポーション)、そしてもう一つは、リーアと繋がる通話の腕輪だ。後者に限っては、何故こんなものを忘れていたのか疑問で仕方ない。こんなにも重要なものなのに。



――――――――――――――――――



「いらっしゃいませー。おぉ!皆さん!すっかり常連さんですね!」


「そんなに来てますか?」


「常連って言っていただけると私達が嬉しいというか・・・アハハ。」


 まぁでもここに多く来ているのは確かだろう。一度魔力銃を買った店には入ったが、武器屋、というとここ以外入ったことがない。でも、このこぢんまりした感じとこの店員さんがいるこの店が、心のどこかで無意識に落ち着けるのだ。


「今日は、どうされたんですか?」


「魔力用回復薬(ポーション)を5本。あと通話の腕輪を。」


 俺達が棚から取り出したり、店員さんが裏から持ってきたりと、まるでお互いの次の行動が分かっているようなスピードで会計に移る。


「そういえば、あのナックルダスター、使いこなせてます?」


 質問先はリーアだ。


「はい。結構使いやすくて、良い買い物でした!」


「すいませんね、不良品で。本当は衝撃を与えた時に任意で爆破を付与できるんですけどね・・・」


 俺も半分忘れかけていたが、あのナックルダスターには炎属性の魔力が付与されているのだ。いや、それはリーアが持っているものと同タイプの他の商品に限り、リーアが持っているものは炎属性が付いていない。―――武器屋の店員さんも気付いていない、闇属性が付与されている、《不良品》だ。


「ちなみに、その爆破ってどうやったら発動するんです?」


 何も魔力が付与されていない、と思い込んでいる物を持っている人からこんな事を聞かれたら訳が分からないだろう。怪しむかもしれない。でも、そこを教えてくれるのがこの店員さんだ。


「当てた瞬間、衝撃(インパクト)!と叫ぶだけです。うちの商品の場合、例えば炎属性なら爆破が、例えば雷属性の剣なら電流が、例えば氷属性の斧なら冷気が。全てにおいて、引き金は『衝撃(インパクト)』です。」


「そうなんですか。ありがとうございます。・・・ちなみに、俺の剣の麻痺効果も?」


「あ、いえ、そちらは付与するか否か、考えただけで問題ありません。」


 ・・・なんだろう、そのハイスペックモデル。それはそれとして、リーアのナックルダスター、闇属性の発動も『衝撃(インパクト)』と言えばできるだろうか?今まで発動方法知らなくて、あんまり意味がなかったからな。

 まぁ炎属性の魔力が付与されているものを買えば、ちゃんと説明はあったんだろうけど。


 会計を済ませ、店を出る。さて、グルシュを目指そう。


 俺達はピソイム平野を突っ切っていくルートで行くことにした。森の中の方がテイルは移動速度が上がるが、森を通ってフェルミまで行くのは結構な遠回りなのだ。


 街を外れて平野に向かって歩いていくと、前から十人程の冒険者と思われる格好の人達が走ってきた。焦っているような、怯えているような表情だ。何事だろうか。


「あなた達、砂煙の平野へ行くつもりですか!?」


 砂煙の平野?―――あぁ!そういえばピソイム平野の俗称だったか。


「そうですけど。」


「今行くのは絶対に駄目です!」


「何かあったんですか?」


「今、Sランクの魔物が出現しているんです!通りがかった勇者様のパーティーに助けて頂きました。でも、今も勇者様方は戦っているかと・・・」


 なにやってんだニック。エスティラさんもいるのか。で、Sランクねぇ。加勢しに行ったほうが良いかな?


 テイルとリーアの方を無言で見ると、テイルは首が取れそうなほどに横に振り、リーアは既にナックルダスターをはめて少し笑っている。


「よし、多数決2―1で、俺達も行くぞ。」


「えぇ・・・仕方ないわね!」


 なんだ、テイルも少しやる気だったんじゃないか。


「情報、ありがとうございました。それじゃ、お気をつけて。」


 冒険者達に別れを告げ、今まで通りまっすぐ歩き出す。


「ちょ、ちょ、ちょっと!あなた達も逃げましょうよ!」


「私達は大丈夫よ。ちょぉっと行って、Sランクを倒してくるだけよ。」


「だいぶ強気だな、テイル。ということですので、俺達は行きます。心配していただき、ありがとうございます。」


 ぺこっと一礼してから走ってその場を去る。これ以上長引くと腕を引かれて無理にでも街に戻されそうだったからだ。

 後ろの方では冒険者達が動けないでいた。

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