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169.黒翼の精霊

ついに連載開始6か月です!

変速(ヴェンジ)!」


 間に合った。ギリギリセーフだ。リーアと闇の光線の距離は握り拳一つ入れられるかどうかといったところだ。


「え?ちょっとハルカ!?どういう状況なの?」


「ん?あぁ、時間を止めた。」


「いやそんなサラッと言わないで・・・」


 今かかっているのは時属性の基本上位魔法、時進留(ゴゾン)。対象物あるいは狭い空間の時の流れを止める。低位魔法は魔力運用の方向によって、対象物あるいは空間に干渉する時間の進むスピードを加速させたり減速させたりする魔法だ。

 補足だが、魔法が解除された後にその埋め合わせとして逆方向の同じ効果が入る。つまり、10秒間時間の進み方を3倍にしたら、その後10秒間1/3倍になってしまうという事だ。


「もうリーアが助かったから別になんでも良いわよ。傀儡操作(パペットマスター)。」


 リーアが見えない糸に引っ張られてこちらにやってくる。魔法は空間にかけたので、効果領域を脱した時点でリーアに時間が流れはじめた。


「うわぁぁ・・・ぁぁ?───え?どうなってるの?」


「ハルカが助けてくれたのよ。ほら、あいつも固まってるわ。」


「ありがとうハルカ・・・というかもうハルカって何でもできるの?」


───いや別にそんなことはないです。できないことと言えば、魔法でできないことと、()()()()です。


「あとさ、やっぱりボク一人は辛いかな・・・っていうかさ?」


「分かった。俺達は仲間なんだから、いくらでも頼ったり頼んだりして良いんだぞ?」


「うん!」


「それじゃ、私たちもやりますか!」


 俺は剣を、テイルは流輝鞭(ルシ・ウィップ)を構える。


「じゃあ行くぞ?解除!」


───ガァァッ!

どぉん!


 時の流れる世界に帰ってきた精霊は、そのまま地面に向かって光線を発射した。地面とそれなりに近い位置で放たれたそれは、地面を大きく抉った。いやぁ、さっきは本当に間に合ってよかった。


───ガァ・・・?


 一瞬にして目の前から獲物が消えたので、そりゃあ謎で謎で仕方ないだろう。しかし、首をかしげている場合ではないのだよ。


塊輝(シャイニーボール)!」


 背後から光属性の光線が体を貫く。しかしこれは、攻撃というよりも確実に注意を惹くためのものであったりするのだ。


───ガァッ!


 完全に喰いつき、こちらに体を向けた。残念だが、お前の弱点は背中側だという事は分かっているんだよなぁ。

 こちらを向いた時にはリーアが背中側に回り込んでいる。こっちの攻撃が本命だ。


「うりゃぁっ!」

ごすっ・・


 鈍い音をさせながら、黒翼の精霊は大きくバランスを崩した。


「今だテイル!」


傀儡操作(パペットマスター)!」


テイルの操り方は、繊細かつ複雑だった。まず自分を空中に持ってきて、精霊の両翼を広げて固定、そのまま地面まで落とし、押さえつける。ここまでの時間、約1秒。物体操作(マリオネット)傀儡操作(パペットマスター)になり、同時に操れるものが5つにまで増えたからこその芸当だ。

 というか、本当はストックを一つ使うだけでも自在に操ることはできる。しかし、それだと抵抗される可能性が高いので、確実な方法を取ったわけだ。


「ボクが貰うよ!」

ばきっ


───ガ・・・


 よし、倒せたかな?なんて思ってはいけない。それで前回は光線を浴びかけたのだ。最後は確実に剣で仕留める。


 この後の流れは予想がついている。精霊は光の粒子となって消え、卵を回収するのだ。なんだか卵を盗るために精霊を倒したようにも見えなくはないが、まぁ攻撃を仕掛けてきたのは向こうだし、目を瞑るという事で。それに、精霊の戦力は馬鹿にならない。魔王を倒すという最終目標の為にも、仲間としてほしいのだ。

 捨てたりせず、ちゃんと最後まで育てる。それが動物を飼う時の絶対的なルールだ。


「卵は私たちで育てるのよね?」


「そうだな。」


「どうやって持ってくるの?」


「確かに。ハルカ、どうするつもりなの?」


 これは大きな問題だろう。しかし大丈夫。さっき戦いながら考えておいたのだ。


「ウェズ、またあの巣に行って、卵を落としてくれないか?」


 ちなみにウェズの小さな足ではあの大きな卵は掴めないので、落とすのが精一杯なのだ。


「え!?」


「いやいや流石にキャッチするのは難しいんじゃない?」


「忘れたのか?俺は、時間を、止められる。それに、この木は御神木だろ?うまくいくって。」


 俺は絶対的な自信をもって再度ウェズを送り出した。一応俺だけ視覚共有(ヴィジョルニア)を使い、ウェズの行動を見ておく。


 1分後、ウェズが木のてっぺん、あの巣に辿り着いた。少しずつ慎重に卵を巣の外、できるだけ幹から離れた場所まで持ってきて・・・落とすのを確認した。そこからは視覚共有(ヴィジョルニア)を切り、遠視(ルーター)を発動。卵を視認できたらあとはこっちのものだ。


変速(ヴェンジ)!」


 20mぐらいだろうか。少し高めの所で卵を止めることに成功。あとはテイルの出番だ。射程の伸びたスキルで卵を回収することに成功した。


 これで一件落着。そしてここまでを何も言わずに後ろから見ていたイリーナが一言。


「・・・もう何も考えないことにしたよ。」

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