165.時魔法
書いている時間が無く、急いで書いたので、短いかつ遅い時間の投稿になってしまいました。申し訳ないです。
「現世を流れる時の流れ、空間を支配する時の流れよ。この今という時を世界から切り離し、我が望みし形を接ぎ込んで見せよ!今は満月の夜0時である!流塞願部時更!」
詠唱とともに空に手をかざす。残りの魔力、細かく数値で表すと138のMPを絞り尽くして魔法を放つ。すると瞬く間に空には満月が昇った。成功だ。
「ちょ、ちょっとハルカ、何したの!?」
リーアが驚きのあまり耳元で叫んでくる。うるさい。鼓膜が破れそうだ。
「ねぇハルカ。この魔法、少し見覚えがあるんだけど・・・」
そう言ってきたのはテイルだ。そう、これは魔王軍幹部のバルベリスが使っていた魔法だ。時属性の特殊上位魔法に当たり、結構難易度が高い。何故バルべリスは無詠唱で使えたのかは知らないが。この周囲の空間自体に関わる時間の流れを止め、他の任意の時間帯を当てはめるものだ。つまり、この魔法の範囲内では効果が切れるまでの間、満月の0時、つまり南中が維持され続けるのだ。
「リーア、これでいいだろ?」
「う、うん・・・うん!凄いよハルカ!」
「でも俺ももう魔力切れだ。剣で打撃を与えるだけしかできない。」
「いやハルカはそれでも十分強いじゃん・・・」
ここからはまた別行動だ。
「さぁお前ら、待たせたな!おりゃぁっ!」
がきっ、ざしゅっ!
パッと無限収納から剣を取り出し、少しずつ近付いていたドラウグルを切り伏せつつ周りの不死をがんがん狩っていく。動けなくしておけばテイルかリーアがやってくれる。
「さて、ボクもやりますか!月光の祝福、発d・・ぐっ・・・がぁっ!ぁぁっ!」
「ど、どうしたリーア!?」
いくら周りに敵が居ようとも、後ろでつい今しがた別れたばかりの仲間の叫びが聞こえたらさすがに振り向くしかない。しかしそこにある光景は、想像していたものと大きく違っていた。
祝福を発動したのだろうリーアは、姿は変わっていた。しかし、見えない十字架に磔にされたような格好で空中に浮いていた。体の自由は奪われているようで、苦しんだ声を出してはいるが顔しか動いていない。
「ぐぅっ!?・・・はぁ、はぐぅ!グルルル・・・」
「どうしたリーア!大丈夫か!」
月を背景に磔にされたリーアの白い毛は先の方が真っ黒なグラデーションに変わっていき、金色の両目は右目だけが真っ赤に変わっていった。
「───っくはぁ!」
どさっ
「「リーア!」」
金縛りが解けたようで、力の抜けたリーアが地面に落ちてきた。悪霊とか不死とかそっちのけで俺とテイルはリーアのもとに駆け寄った。白い毛は四分の一ほど黒く、右目は完全に赤に染まっている。
「んん・・・」
「リーア!大丈夫か!」
───ぉぉぉ・・!
「うるっさいわよあんた達!」
ぱちぃん
近付いてきていた不死は一瞬にしてテイルの鞭に吹き飛ばされ、浄化された。───そんなことよりもリーアだ。意識は戻ってきたみたいで良かったが、何が起きたのだろう。
「あれ?二人ともどうしたの?早くあいつらの相手をしないと。」
「リーアは大丈夫なの?」
「え・・・?何が?」
「いや、さっきの金縛りとか、今の姿とか・・・」
そう言ってもリーアは首をかしげている。どうやら何も自覚が無いようだ。磔になっていた間の記憶も無いようで、今も何も変な感じは無いらしい。リーアが自分から戦闘に戻っていったので、俺とテイルも心配しつつ戦闘に戻った。
リーアを見ながら戦っていたが、別に何も動きに支障はなさそう。いや、それ以上に今までより数倍速く動いている。
「はぁぁ!」
きゅぅん!きゅんきゅんきゅん!
・・・なんだろう。リーアの体から白い光線が何本も周囲に放たれた。その光線は俺の魔法よりも太く、悪霊や不死を次々と消していった。あれは今の姿に変わったからなのか?もう訳が分からない。考えるのは諦めて今はとりあえず戦おう。
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