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164.立場が・・・

暑かったり寒かったり暑かったり暑かったり・・・

 リーアとテイルが普通に攻撃するだけで浄化できるのに対し、俺とイリーナは魔力を使わなければ浄化できない。なんだか一気に立場が逆転してしまった。ただ、二人が結構なスピードで倒していってくれるので、俺の周りに集まってくる奴もその分減り、楽になったことは事実だ。


物体操作(マリオネット)!───んんっりゃ!」


 テイルは細かく操ることをやめ、デカい頭蓋骨の不死(アンデッド)を2体引きずり、大量の不死(アンデッド)を手前に引っ張ってきては流輝鞭(ルシ・ウィップ)で浄化していっている。ただ、頭蓋骨を釣竿のように投げ、引きずって来るのを何回も見ていると可哀そうになってくる。まぁこのやり方が効率良いということと、テイルの時折出てくる狂気的な一面を考えれば仕方ないのかもしれないが・・・悲鳴が聞こえてくるようで辛い。


「ほーら、もう一回行ってきなさい!」

ぽーん、ズザザザザザ・・・

    ぽーん、ズザザザザザ・・・

        ぽーん、ズザザザザザ・・・


 俺はその光景を見ないことに決めた。


「よっ、ほっ、はっ!君達、遅いよ!遅すぎるよ!」


 リーアはリーアで殺戮状態だ。天使とか言っていたけど、あれはもう白い悪魔だ。ほとんど視認できない白い塊が向かった一帯の不死(アンデッド)が一瞬にして消えていくのだから、不死(アンデッド)に知能があればこの上ない恐怖だろう。あと、一つ補足すると、確かに不死(アンデッド)も遅いがリーアが速すぎるんだよなぁ・・・。


「逃がさないよー!よっ!」

ひゅん


 イリーナにはほとんど仕事が回ってこないと思うが、時々俺達の攻撃に当たらずに通過していた奴は確実に仕留めている。イリーナの狙撃技術も光るものがあるよな。



 しかし、良い事ばかり続くわけではない。人生山あり谷あり、谷の部分を乗り越えるのが一番辛いのだ。


「はぁ、はぁ、ハルカ!ナーに魔力分けてもらえないかな?聖属性の発動がもうできないの!」


「えぇ・・・悪いイリーナ。俺のMPももうほとんど残ってない!」


 数値で言えばあと200程。本人には言えないが、イリーナの魔力燃費は結構悪い。俺なら30発ちょっとはいけるが、イリーナなら全部渡したところであと8発が限界だろう。

 俺は自分を中心に聖属性の魔力を爆発させ、周囲の不死(アンデッド)を消したところで、一度イリーナの傍に行く。


「イリーナ。あとは俺達に任せてみてくれないか?MPが回復したら、またやってくれ。」


「・・・分かった。」


「悪いな。俺もMPを残しておかないとマズいから。・・・聖護結界ホーリープロテクション。この中にいれば、悪霊や不死(アンデッド)からは守られるから。」


「ありがと。頼んだよ。絶対に、一体も、通しちゃだめだからね?」


「あぁ。任せろ!」


 俺はこっちに向かってきていた奴らを蹴散らしながら戦線復帰する。動けなくさせておいた奴らはテイルとリーアが浄化してくれているので、俺が魔法を使わなくて済むのはありがたい。


「ハルカ、あんたも結構MP少ないでしょ。」


「あぁ。だいぶマズい。」


 ちなみにテイルの魔力も、一度イリーナに魔力譲渡(トランス)した時すべて持って行かれているので、全く残っていない。


「魔力用回復薬(ポーション)は?」


「朗報だ。1本も無い。」


 結構前に数本だけ買っただけだったので無限収納(スナフ)にはもう残っていない。この前ウェズに試しに飲ませてみた1本を残しておけばなぁ・・・。ちなみにウェズにとって魔力用回復薬(ポーション)は、エナジードリンクのような効果を発揮しただけだった。


 さらに悪いことは立て続けに起こった。


───どさっ


 この悪霊と不死(アンデッド)しかいない戦場では聞こえるはずのない、何か柔らかいものが落ちる音がしたので振り向くと、リーアが倒れていた。しかも元の姿で。大量の悪霊や不死(アンデッド)に囲まれてしまっていた。


「リーア!」


 すぐに助けに行きたいが、俺の周りにも不死(アンデッド)が多すぎて動けない。


「テイル!リーアの援護行けるか!?」


「ちょっと無理かもぉー!」


 テイルは自分で集めた不死(アンデッド)の対応に追われていた。背中を見せた瞬間にテイルがやられてしまうだろう。マズいマズいマズい。ここから魔法を撃つしかないか?でもそれだと結構な魔力を消費する・・・あぁぁぁっ!


「クワァッ!」


 俺が判断を下せないでいると、ウェズが飛んでいった。


「クゥワァッ!」

ぴかーん


 ウェズは、リーアの真横で翼を広げて光った。間一髪のところで間に合ったようで、光に当てられた悪霊や不死(アンデッド)が次々に消えていく。


「あ・・・ありがとうウェズ・・・」


「クァッ!」


 リーアが頭を撫でると、自慢気に胸を張ってみせた。いやー、それにしてもナイスタイミングだったな。ウェズを形作る魔力は聖属性なので、よくよく考えれば今回の戦いで一番適任だったかもしれない。ただ、情報が漏れることも考えるとあまりウェズは出したくないからな。


 今度からはしっかりやれよ、みたいな目で見られ、肩を叩かれた。ウェズはそんな事をしてからまた俺の中に戻っていった。


「リーア、大丈夫だったか?ウェズも、ありがとうな。」


「怪我はしてないよ。でも、祝福が解けちゃって・・・」


 恐らく今は深夜の0時ぐらい。昨日が上弦の月だったので、月の入りはもう少し遅いはずだが・・・周りが山で囲まれているせいで月光が遮られたか。月光が消え、リーアからの光も消え、バリ盆地は暗闇に包み込まれた。テイルは焦らずに暗視(ノクター)を発動しただろうか。


 残存勢力は、MP残り僅かの俺、MP0のテイル、月光の祝福を受けられないリーア、テイル同様MP0のイリーナ、ウェズ。この中で浄化できるのは基本テイル、ウェズも一応可能。俺はあと数回が限界だ。対して悪霊や不死(アンデッド)は、ピークは過ぎたもののまだまだ湧いてくる。絶体絶命だ。


───絶体絶命?いやいや、そんなことはない。


「リーア、祝福を受ければ、まだ動けるか?」


「いや、体力はまだまだ余っているけど・・・」


「じゃあやろう!」


 俺の残りの魔力全てと引き換えに最後の切り札を切るとするか。

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