161.開戦
区切りの良いところで切ったら短くなり過ぎました・・・
家に戻ってきたイリーナは夕飯の準備を始めた。時刻は39時を回っており、そろそろ夕飯を食べないと対不死戦のピーク時間に間に合わなくなってしまうらしい。俺達もできる限り手伝う。
42時には食べ始めた。夕飯のメニューは、フランスパンのような固めのパンとトマトスープだ。スープには野菜もお肉も入っており、結構しっかりしている。トマトスープといったが、トマトに近いというだけでトマトではないのだが。ただ、とても美味かった。
パパっと食べ終え、事が起きるのを待つ。各々順番に仮眠を交えながら、イリーナは弓矢の点検、テイルは鞭の素振りをしながら何かを取りたいときはスキルを使い、リーアは何故か精神統一だ。俺は魔法辞典を読みながら聖属性魔法のイメトレをしている。
聖属性という魔法属性があるわけではないが、光属性の中でも高位なものはそう呼ぶらしい。悪霊や不死と戦う際、物理や普通の魔法はダメージを入れることはできても絶対に倒せない。倒せるのは聖属性の魔力のみだ。
46時。サイレン音とともに照明が暗い紫色に変わった。───来たのだ。
「みんな、行くよ!暗いから足元には気を付けてね!」
サイレンを止めるボタンを押しながら外に出る。
さっきイリーナに聞いた事をまとめよう。悪霊や不死は墓地の中心から発生する。今までは光のある方に向かってきていたが、最近急激に増え始めてからは全てが南を目指すという。何故南なのかは分からないが、進む方向が決まっているのは対処がしやすくてありがたい。
不死の動きは三種類。イリーナを見つけるとすぐに攻撃してくるもの、大量にいるうちのどれかに攻撃するのを境に攻撃してくるもの、まったく意に介さず南を目指し続けるもの。一番厄介なのは最後のタイプだが、そっちにばかり注意しているわけにもいかない。
不死から攻撃を受ければ結構なダメージが入り、悪霊に取り憑かれると自由が効かなくなるので近付かれる前に浄化することが重要だという。
俺達は急いで墓地の南側に移動する。今回は中に入ることができないので周囲を回ってだ。敷地は結構広く、不死の移動速度は遅いので、南側に着いてからも来るまでは多少の時間があった。
「あっ!忘れてた!ナーは暗くても見えるから灯りを持ってないの!これじゃみんな・・・」
「あ、いや、多分大丈夫だと思う。」
「え?」
俺が言ったのは暗視を使うというわけではない。最悪の場合それもあるが、ある可能性を俺は考えていた。ちなみにリーアは瞳孔を開いて暗くても見えるようになるので大丈夫だ。
「そろそろ来るよ・・・」
前方から物凄い魔力と圧迫感を感じる。こりゃあ大変そうだな。
俺は剣を構える。テイルは流輝鞭を腰に付け、最初はスキルを使うつもりだ。そしてリーアは、
「うわぉぉん!」
姿が変わった。月光の祝福だ。白く美しい毛は月光を反射して輝き、リーア自身も光っている。俺が考えていた方法がこれだ。明るい月明りとリーアの発する光。これだけで十分墓地全体が照らされている。
「おぉ・・・リーア、そんなことができるのか・・・」
そういえばイリーナにはこの事を説明していなかったな。いきなりこんな姿に変わったら、驚き半分、半分は恐怖に近いものがあるかもしれない。イリーナも弓を構え、準備OKだ。
───ぉぉぉぁぁ・・!
低いうめき声のようなものが聞こえ、それに続くように墓地全体から同じような声が聞こえた。不死だ。近付いてくるとその姿がはっきりと捉えられた。姿は様々だ。
人間の骸骨、これはスケルトンといったところか。2m級の頭蓋骨のみが黒いオーラとともに浮いている、名前が分からないやつ。全身に包帯が巻かれておりミイラ化しているが、真っ赤な右目だけが光っている、マミー。スケルトンがフード付きの布を被り、鎌を持った、ドラウグル。他にもいろいろいるが、ゆっくり説明していると俺の身が危険なのでここらで。
「な、なにこれ・・・こんなに増えたの・・・?昨日とは比べ物にならない。桁が違うよ!」
イリーナが叫ぶ。確かに数が尋常じゃない。数百、もしかしたら千を超すかもしれない。ただ、どれだけ数が多かろうが全て倒しきるまでだ。
「よし、やるぞ!」
「うん!」「えぇ!」「うわぉん!・・・じゃなかった。うん!」
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