表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/430

160.若者同士

新作の投稿開始は7/31からにしたいと思います。(忘れていなければ)

「そういえばイリーナ。それって寝間着よね?」


「え?・・・あぁ!忘れてた!」


 やはり寝間着だったようだ。なんでこんな夕方に、しかもさっきの俺達を墓荒らしと勘違いして襲ってきたときは、寝間着に弓矢とかいう訳の分からない装備だったわけで・・・


「き、着替えてくる!」


 そう言ってイリーナは着替えを持ち、この家で唯一壁で区切られた部屋へと入っていった。恐らく風呂場だろう。


 少しして戻ってきたイリーナは、少し顔を赤らめていた。


「はぁ・・・やっちゃったなぁ・・・」


「なんであんな格好してたの?」


 リーアが聞く。それは大いなる疑問だ。


「皆が来る直前まで寝てたからだよ。夜が本番だから、昼間は寝てるんだけど・・・はぁ・・・。墓地に何かが来たっていう知らせで飛び起きて、そのまま行ったからね。」


 なるほどな。悪霊や不死(アンデッド)は夜に湧く。その時間帯に寝ているようでは対応できないから、昼間に寝るわけだ。ただ、昼間にも墓荒らしや魔物の侵入を防がなければいけないので、何かが来たら知らせが来るようになっているのか。それで、ベッドから直接俺達の所に来たわけだ。


 寝間着の謎が解けたところで、また雑談が再開される。


 終わるところを見せなかった17歳達と92歳の若者同士の楽しい会話は、けたたましいサイレン音と照明の色の変化によって唐突に遮られた。黄色味がかった優しい色の吊り照明は真っ赤に変わり、家の中の雰囲気をがらりと変える。


「ちょ、ちょっと!何これ!?」


 テイルが叫ぶ。が、サイレン音に掻き消されてほとんど聞こえない。


ぽちっ


 イリーナがドアの横に付いているボタンを押すと、音は止まった。しかし、照明は依然赤色のままだ。さらに、イリーナが推したボタンの横には何かが表示されている。大きな円と、その円周上に小さな青の●と離れた円周上に赤の●が2つ。


「侵入者だよ!手伝って!」


 その一言で全員が家の外に出る。イリーナは弓矢を持っている。

 さっきのが『何かが来た知らせ』か。ありゃぁ寝てても飛び起きるな・・・。むしろ起きれないほうがおかしい。



「赤の警報は魔物だから、見つかっても大丈夫だよ!」


 イリーナが走り、後ろを追っていく。イリーナもなかなかの速さだ。というか、色で人間か魔物かも判断できるなんて、どんな構造かは知らないがそうとう複雑なものなのだろう。

 ちなみに、魔物なら見つかっていい、人間には見つかってはいけない、という考え方はそれなりの強者の考え方だ。魔物相手にでも、見つからずに奇襲できればそれに越したことはない。ただ、相手を簡単に屠る事ができるだけの力が自分にあるのなら、相手から向かってきてくれた方が楽だからな。


 恐らくあのボタンの横にあった図、あれは墓地を上から見た地図と思う。青が家、赤が魔物といったところか。人間だと違う色で表示されるのだろう。


「見つけた!おーい君達!こっちこっち!」


 先頭を走っていたイリーナが魔物の注意を引くために話しかける。墓地の中を突っ切ってきたので、魔物が敷地に入る前に着くことができた。墓地にやってきた魔物は2匹のボアシシ、Dランクだ。こいつらが敷地に入ったりしたら、地面は掘られ、墓石は倒されるだろう。


 ボアシシの注意を引き付けたイリーナは敷地から離れたとこまで走り、2匹を一度遠ざける。そのまま一気に距離をとり、弓を構えた。一瞬で狙いを定め終わり、放たれた矢は真っすぐに片方のボアシシの頭を貫いた。


「・・・なるほどな。」


 放たれた矢を見て、俺はようやく納得した。それは、最初に俺達に対して放たれた矢には魔力がこもっていたのに対して、さっきイリーナの後ろを走っている時に見えた矢筒からは一切魔力を感じ取れなかったのだ。ただ、その疑問は解消された。イリーナは狙いを定めている1、2秒の間に一気に魔力を流し込んで放っていたのだ。確かにその方が、矢筒の中の矢が放つ魔力に警戒されるという事が無くなる。ただ、一瞬で魔力を染み込ませるのは簡単なことではないだろう。


 1匹倒してもまだ残っている。その残った方は突進し、距離が短かったためにすぐにイリーナの目の前に来てしまった。あとは(まばた)きでもしていれば、イリーナが弾き飛ばされて宙を舞うシーンへと突入してしまうだろう。


「「イリーナ!」」


 テイルとリーアが同時に叫ぶ。ギュッと目を瞑り、少ししてから目を開けると、そこには瀕死のイリーナ・・・ではなく、ボアシシが転がっていた。


「はい、一丁上がりー!」


 俺はさっきの発言でイリーナを信じていたので、やられる事は無いと半分信じ、半分願いながらずっと見ていた。イリーナは一瞬消えたかと錯覚させるほどに素早い動きでボアシシの左側に回り、裏拳打ちを体の真横から喰らわせた。物理攻撃も行けるってマジですか先輩・・・。しかもさっきの動き、あれは凄いな。


 俺達が付いてきた意味はあったのかどうか怪しいところだが、とにかく魔物は倒したので一件落着だ。普段は倒した魔物は素材など気にせず全て燃やしてしまっているという。勿体無い!という事でボアシシ2匹は譲ってもらった。

感想、誤字報告、ブクマ登録、高評価、お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ