158.隠匿された家
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休憩を終え、墓地へと向かう。遠視を使って墓地が見え始めたのが34時過ぎ、近づいてきたという実感が出たのが35時だ。まだ暗くならないうちに着けたのは良かった。夜の墓地とか、想像しただけでも行きたくないからな。
「やっぱり墓地って怖い雰囲気あるわね・・・」
「まぁな。それより、依頼を出していた人はどこにいるんだ?」
やたらと広い敷地に、お墓が整然と並んでいるだけで、家のようなものは見当たらない。墓守、といっていたし、近くに住んでいそうなものだが・・・
ちなみにこの世界のお墓は日本と同じ感じだ。
とりあえずここに突っ立っていても何も始まらないと思い、墓地の敷地に入ろうとした次の瞬間、
「―――っ絶断壁!」
がきっ・・パリン!
割られた!?魔力障壁を突き破った謎の物体は、しっかりと視認する前に俺の心臓部に刺さ・・・らなかった。俺のDPが高すぎたせいで、体に当たっても弾かれるだけだった。
「ハッ、ハルカ!」
「大丈夫!?」
「いや、無傷だけど・・・今の何だったんだ?」
俺に弾かれて地面に落ちていたそれは、矢だった。細い木の棒の先に、返しのついた鋭い矢じりが付いた、どちらかと言えば弱そうに見える物だが、とてつもない量の魔力と何重にも重ね掛けされた魔法を感じる。
しかし、じっくり矢を観察している暇はなかった。今度はリーアに向かって矢が飛んできたのだ。速すぎて間に合わない!
「リーア!」
「よっ!」
スカッ
俺が手を伸ばした時には既に矢はリーアの位置を過ぎていた。過ぎていたということは、つまりそう、リーアはその異常なまでの反射神経で躱しきれたのだ。
「さっきから誰だ!」
矢が飛んできた方を遠視と魔力探知を駆使して見ると、低木の裏に隠れている結構な魔力量の誰かが居た。少なくとも魔物から感じる雰囲気ではない。
俺は反応があった低木に向かって、テイルとリーアに矢が届かないよう、二人と低木の間に入りながら真っすぐ歩いて行く。一応剣を構えながらだ。しかし剣は、構えても攻撃強化の効果が発動して橙色に光ることはなかった。つまり、剣は戦闘ではないと認識しているということだ。
「おぅりゃっ!」
ぶん!
低木の裏まで届くように剣を横向きに振る。さっき打ち直してもらったのが良かったのか、木の枝も紙のように斬れていく。凄すぎるだろ。
「いやっ!」
俺の剣を避けるように、何かが跳び退いた。・・・悲鳴?それも女の子?
低木の上半分が無くなり、奥まで視界が広がった。そして、そこに立っていたのは、
「あんた達!おとなしく捕まりなさい!」
白味がかった金髪をツインテールに纏め、背中には矢筒と数本の矢、手には弓。可愛らしい顔と、先がツンと立っている耳。少し年下に見える、エルフの女の子だ。ただ問題なのが服装で、淡い青色の、その、なんというか、明らかに寝間着なのだが。
「墓荒らしめ!今すぐ帰れ!」
―――ん?墓荒らし?
「空を走り地を駆ける雷が与えし閃光よ。我の元より放たれよ!双閃雷!」
訳が分からないまま上位魔法を撃ち込まれた。正面からと背中から、雷に襲われた。まぁダメージは無いのだが。
「いや、落ち着けって・・・俺達は、」
「くっ、何故効かない!電気耐性か!?」
いや別に電気耐性とか持ってないんですけど・・・
「あのさ、俺達は別に墓荒らしじゃないって。」
「―――え?」
「依頼を受けて来た冒険者。ほら、ギルドに不死が多くて困ってるって届けを出したの、君?」
「え、あ、そうだったんですか!?ごっ、ごめんなさい!」
ようやく誤解が解けたみたいだ。まぁ確かに、墓荒らしを警戒していたのなら攻撃してきても当たり前か。来る人に毎回、『あなたは墓荒らしですか?』なんて聞くわけがない。・・・墓参りに来た人達はどうなっているんだろうか。
「誰も怪我してないし、大丈夫だよ。それで、君が?」
「はい。依頼を出した、イリーナです。細かいお話は、ナーのお家で。こっちです。」
そう言ってイリーナはくるんと後ろを向き、歩いていった。とりあえず確認だけど、一人称は『ナー』ね。いやそれより、歩いていく方向に建物なんて見当たらないんだが・・・
イリーナに付いて暫くいくと、何もない所で止まった。
「ここが、ナーのお家です!」
「いや、え、どこ・・・?」
「あ、隠匿魔法を掛けているので。」
イリーナが地面に手をかざすと、石板が浮いてきた。そこには、この世界の文字で0〜9と、何も書いていない赤いボタン、計11個のボタンがついている。
パスワードみたいなものだろうか、複雑な数列を打ち込むと、石版は地面の中に戻っていった。そして、目の前にドアが現れた。ドアだけが。
「さ、入ってください。」
「お、お邪魔します。」
「お邪魔します。」
「お邪魔しまーす!」
ドアをくぐると、そこには綺麗な家が広がっていた。一階建てで、かつ丸太で作られているので、広めの小屋みたいな感じだ。こういう雰囲気って落ち着くな。
4人全員が入ると、ドアはひとりでに閉まった。
家の中で特殊なものというと、真ん中に天井からぶら下がっている電球だ。この世界に来てから、照明といえば天井が光るものか街灯しか見てこなかったから、電球で灯りを取るのは少し懐かしい感じがあるな。
「とりあえず、座ってください。一人で住んでるので、椅子が足りないですけどね。すいません・・・」
イリーナは椅子を2脚持ってきてくれた。まぁこの後のオチは見えているわけで・・・
「いーのいーの気にしないで!あと、私は床でいいから、イリーナ座って。」
「い、いや!そんな事は!ナーは床に座るので!」
「そう?」
「あー、テイル?リーア?やっぱり俺は床?」
「そうだね。」
「当たり前でしょ。」
でしょうね・・・。体の中からウェズが慰めてくれているのを感じる。味方がいてくれて俺は嬉しいよ、ほんと。
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