15.魔王
布団で寝る日々、YOPPYです。
勝てた。勝ってしまった。まさかこんな結果になるなんて思わなかったし、戦っている途中は夢中だったからな。
「テイル、回復薬を。」
「はい。」
「ありがとう。ほら、自分で飲めるか?」
「あ、あぁ、すまない。―――ありがとう、良い試合だった。」
「こちらこそ。」
俺たちは固い握手を交わした―――と思っていた。
「痛い痛い痛い痛い!!」
「はっはっ、危険を察知できないようじゃ、まだまだだな。」
「うるせぇよ。急に何してくれるんだよ。」
「すまないすまない。」
まあ笑って許せるんだけどね。昨日の敵は今日の友、さっきの敵も今は友って事だ。それにしてもニックは強かったな。さすが勇者、って感じだった。
「まさかこの僕が旅人に負けるとはね。参ったよ。ちなみに、レベルはいくつなんだ?」
「監督視覚、だっけ?で分からないのか?」
「あいにく、レベルまではね。でも、君ほどの実力者がEランクというのも分からないな。」
「そうか、じゃあ聞いて驚くなよ?俺はレベル6だ。テイルもな。」
「106かい?」
「6だ。」
「ハルカ、魔銅板見せた方が早いわよ。」
「これ見れば信じるか?」
そうだ。魔銅板は嘘をつかないのだ。・・・視覚操作系の魔法はあるかもしれないが、それはニックには通じないしな。
「いや、信じられない・・・本当にたったレベル6の【旅人】なのか?」
「まだレベル6さ。」
「・・・そうか。君たちなら、僕の夢を叶えれそうだな。」
「夢?」
「ああ。僕の夢は・・・魔王の討伐。」
あ、やっぱりこの世界にも魔王っているんだ。そこもお約束通りみたいだな。魔物の王、魔王。そしてそれに対抗する、勇者。
「ちょっとニック、本気で言っているの!?魔王なんて、戦えるような相手じゃないわよ!?・・・魔王の城がどこにあるかも分からない上に、敵は魔王だけじゃない。そんなの、無茶苦茶よ。」
「君も、魔王本人と戦ったという伝説の勇者を知っているだろう?」
「・・・ランクSSSの勇者、通称『トリプル』。Sまでしか発行されなかった最高ランクの記録を唯一塗り替えたと言われている人ね。」
へぇ、そんな伝説があるのか。確かにニックも勇者だし、SSSを目指してるのかな?・・・俺もレベル上がればSSSランク貰えないかな?
「そう、僕は小さい頃聞かされたトリプルの話に憧れて、冒険者になった。───そして、トリプルは僕の高祖父、つまり祖父の祖父に当たる人物なんだ。」
「「───え!?」」
おっとここで衝撃の事実が出てきたぞ?伝説の勇者の孫の孫?ニックが?・・・うわぉ。
「それ、本当なの?」
「本当だ。でもトリプルは魔王討伐に至らなかった。あまりにも圧倒的な力の前に善戦し、倒れた。───だから僕が!魔王を討伐する!」
「と、そこで相談なんだけど、僕を、君たちのパーティーに入れてくれないかな?」
「・・・は?いやいや急にどうして。」
「君が仲間に居れば、魔王の城への到着、幹部の討伐、そして魔王の討伐も夢じゃない!直ぐにとは言わない。どれだけかかってもいいから、僕と一緒に魔王の討伐を手伝ってくれないか?」
さて、どうしたものか。確かにニックは強い。その実力とカリスマ性で、ギルドの中でも結構力を持っているみたいだし、パーティーを組むのも良いかもな。
「よし、いいz・・」
「駄目よ!悪いけど、それはできないわ。」
───え!?テイルさん!?何言ってるの!?
「・・・それは、何でなのか聞いても良いかな?」
「私たちは私たちで魔王を討伐するから、あなたは自分の仲間を募って挑みなさい。私たちとあなた、どっちが先に魔王討伐を果たせるか、勝負よ!」
・・・?・・・ちょっとぉぉお!?俺達だけで魔王討伐することになってるんですけど!?俺怖いの嫌だよ!?
「ふっ、つまり僕と君たちは好敵手だ、ということか。良いだろう。負けはしないからな!」
「こっちのセリフよ!」
──────えぇ・・・
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