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155.バルタ山脈

やっぱり、格好いいものって格好いいですよね!(何言ってんだこいつ)

 街での準備を終えた俺達は、依頼の地、バリ盆地を目指して南に向かって出発する。まずはバルタ山脈を越えなければいけないんだよな。


 バルタ山脈の麓までは結構近いので、俺達のスピードだと数分で着いてしまった。ただ、問題は登山だ。この山脈の山々、どこをとっても結構高い。体力に不安は無いが、時間はかかる。


「さて、登るか。」



 山に足を踏み入れてから数分後、すぐに魔力探知(ディテクション)に大量の魔物の反応が引っ掛かった。今すぐ気付かれて襲われる距離ではないが、この山は魔物が多いみたいだ。倒していくしかないか。


 ちなみにこの山で戦おうとすると、結構制限がかかる。木が密集している為に炎は使えず、雷でも発火してしまうだろう。吹雪も被害が出るだろうし、竜巻も駄目。木属性は場所が狭すぎるし、地属性も地盤が怖い。使えるのは水、力、光、闇、時ぐらいだろうか。いやこれは俺に限ったことであって、低位魔法なら使っても何も問題ないと思うが。


 殲滅魔法の使い勝手の悪さに失望していると、急に魔物がこちらに向かってきた。居ること自体はずっと知っていたが、襲って来ないので放置していたのだ。こちらに気付いたか。


「来るぞ。」


「あー、これが魔力探知(ディテクション)の感覚かー。」


 こうやって魔物が居るところに何回も行っていれば、リーアもすぐに慣れるだろう。なんたって、頭で考えられる感覚派、だからな。


「どうする?倒す?」


「どういうこと?」


「別に倒さなくても良いかなーって。」


 そう言ってリーアは魔物の向かってくる方に立った。すると次の瞬間、


「グルルル・・ガゥ!」


 少し姿勢を低くしたリーアが吠えた。ただ吠えるのではなく、何というか・・・そう、威嚇だ。後ろにいる俺達にまでその影響は来たようで、肌に感じる空気感が変わり、ピリピリしている。体が勝手に集中する。強敵と対峙しているような感覚だ。


 すると、魔力探知(ディテクション)の範囲に入っていた魔物のほとんどが範囲外まで逃げて行った。一番遠くの方には動きは無いが、十分凄い。


「どう?これが『威嚇』。弱い魔物なら、近寄ってこないよ。」


 リーア達の集落に向かった時、惑香花(ヨワシミ)の影響でバラバラになった後、集合するためにミアが吠えた。その影響で魔物が大量に寄ってきていたが、リーアが威嚇しながら近くまで着た瞬間、魔物が逃げていったんだっけか。


「リ、リーア?その、凄い緊張するからそれ止めてほしいんだけど・・・」


 テイルが少し強張った声で言う。そう、リーアからはまだプレッシャーが放たれ続けているのだ。


「駄目だよ。これ解いちゃったら魔物近寄ってくるし。大丈夫、すぐ慣れるって。」


 結局そのまま進むことにした。リーアのお陰で魔物は出て来ないので、ただの登山だ。───いや、ただの登山は、そう長く続かなかった。


「ん?なんかこっちに近付いてくる反応があるな。」


「えー、威嚇は発動してるんだけどな・・・。強いか、バカのどっちかだね。危険を考えられないような頭脳しか持たない魔物だと、逃げないからさ。」


 なるほどな。完全に魔物を近寄らせないわけじゃないのか。


───チュァーッ!


 襲ってきたのは6匹のツノネズミの群れだった。ツノネズミは、こっちの世界に来てから結構早い段階で討伐したことのある魔物だ。ナシヤット南の森、ここから言えば東の方にある森で討伐した。あ、そっちの森からなら山を越さなくてもバリ盆地に行けるとか、甘い考えはいけない。森はそのまま東南に延び、バリ盆地は完全に山に囲まれているのだから。


 ツノネズミ達はリーアの威嚇など気にも留めない様子で突進してくる。あの角に突かれたら致命傷、突かれなくてもぶつかれば重傷だ。なんたって、小さなサイみたいなもんだからな。


「2匹ずつで良いよね?」


「ああ。」

「良いわよ。」


 ざっ、と俺とテイルは斜め前の方に移動する。


 まず俺は真っ直ぐリーアに向かって走っていくツノネズミのうち、後ろ2匹に照準を合わせ、

輝塊(シャイニーボール)輝塊(シャイニーボール)!」


───チぁ・・・

どさっ


同時に倒す。

 群れの反対側にいるテイルは、前2匹に狙いを定める。


物体操作(マリオネット)!」


 両手を使って2匹を浮かせる。ツノネズミは弱いので、抵抗力が低く、操ることができたのだ。そのまま2匹を思いっきりぶつける。頭からぶつかった2匹は、声を出すことも許されぬうちに、鈍い音を出しながら潰れることとなった。


「さぁ、あとはボクだね!」


 突進してくるツノネズミに対してそれ以上のスピードで向かっていく。両手にはいつの間にかナックルダスターを付けていた。


「おりゃぁっ!」


 走ってくる2匹の隙間を通りながら、両拳は横にいるツノネズミを真正面から捉え、顔を潰す。そのまま腕を振り切ると拳が完全に体を貫通した。


「うわぁぁ・・・これ気持ち悪い・・・なんか臭いし~!」


「リーア、ちょっとそのまま動くなよ。洗浄(クリセント)!」


 水魔法でリーアの腕に付いていた汚れを取る。この洗浄魔法は強化されないんだよな。

 強化されるかされないかの違いは、その魔法の上位互換の魔法が存在するかしないかで決まっていると思う。その考え方でいくと、普通に殲滅魔法の詠唱から発動しても、殲滅魔法止まりになるという事だが・・・なんかそこは怪しい所があるな。怖いから試さないけど。


 ツノネズミの角は素材となるので切り落としておく。他は捨てるのだが、ここだと焼き払えないな。ごみはポイ捨てせずに、自分達で持ち帰りましょう。

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