152.ボクボク詐欺
魔法の中でも、力属性と時属性は周りから突出して強いです。その分、必要なMPが多かったり、扱いが難しかったりします。
「ただいまー。」
玄関を入ると、スミさんが出迎えてくれていた。
「皆様おかえりなさいませ。すぐに、昼食の準備を・・・」
「あ、村で頂いてきたから、大丈夫よ。」
「そうでしたか。では、お風呂にでも・・・」
「そうね。じゃあリーア、入りましょう。ハルカ、服出して。」
「はいよ。」
無限収納から二人の服を出す。完全にタンス扱いだ。他にも、物置とか棚とか思われていそうだけど。
テイルとリーアがさっさと靴を脱いで上がっていくのを引きとめる。
「俺が後なのは決定なの?」
「当たり前でしょ。途中で入ってきたらどうなるか分かってるわよね?」
「入らねーよ!」
俺も靴を脱ぎ、二階の部屋に向かう。二人が風呂から出てきたら俺も入ろう。森の中を何時間も歩いたから疲れたな。恒温変移のおかげで、体温は快適なところに調節されるので、汗はかかない。だが、やはり外に出て戦った後はざっと浴びたいものなのだ。
二人が出てくるまでは、魔法部屋でモウラヘイラの解体をしていた。もしルイルが居たりしたら年齢制限的にアウトだったが、幸いにも自分の部屋にいるみたいだった。結構な量だったが、俺も何度も解体してきているので何とか一人でできた。
素材として売る部分以外は燃やし尽くしておく。
二人が出てからお風呂に入り、一日ゆっくり過ごした。ムーディさんから報酬を貰い、美味しい夜ご飯も食べ、さて寝ようかと思ったその時、テイルの通話の腕輪が鳴り響いた。
「だ、誰からだ?」
「えーっとこれは・・・誰だったかしら?もしもし?」
『もしもし。僕だよ。』
「オレオレ詐欺ならぬボクボク詐欺か?」
『ちょっと言っている意味が分からないんだけど、僕だよ。ニコラス。夜遅くに悪いね。』
「どうしたのニック?」
『二人とも、アルバルト支部長とは連絡が取れないのかな?』
アルバルト・・・ナシヤットの方か。確かに、繋がってないな。
「それがどうかしたのか?」
『アルバルト支部長から伝言だよ。どこに居るのかは知らないけど、できるだけ早く帰ってきてほしい。ってさ。』
「分かった。わざわざありがとう。」
『いやいや。それじゃ、僕は魔物と戦っているからここら辺で。おやすみ。』
「おやすm・・はぁっ!?」
ぶちっ
理解の範疇を超えた一言を最後に、通話は切られた。
でも、何かしらあって呼ばれているのなら早めに帰ったほうがいいな。明日にでもここを発つか。
――――――――――――――――――
次の日の朝、朝食の場で発たなければいけない旨をムーディさん達に伝えた。
20時には支度を終え、出発する。
「忙しいのですねぇ。」
アイリスさんが溜め息混じりに言う。
「ハル兄、リー姉、また来てくださいです!」
「村の事、ありがとうございました。またいつでも、お待ちしています。」
「色々とお世話になりました。」
「また適当に帰ってくるわ。お父さんもお母さんも、元気でね。」
「あなたも、気を付けるのよ。」
「ハルカ君、リーアちゃん、よろしくね。」
「はい!ボク達にお任せください!」
「気を付けてです!」
総動員で見送られた。本当に優しい人たちだ。俺達はゆっくりとロンド家の屋敷を後にするのだった。
少ししたらすぐにリーアにフード付きのコートを被せ、耳と尻尾を隠す。後は、特に目立たないように足早にグルシュ王国を出るだけだ。
俺は歩きながらふと思い出した。そういえば全く考えていなかったけど、ウェズって餌どうなってるんだ!?何もアクションがない上に色々とバタバタしていたので、まだ何も与えていない。大丈夫だろうか?急に心配になってきた。ヤバイ。
「なぁテイル。ウ・・」
「そうね、あくまで予想だけど、魔力を食べるんじゃないかしら?食べるというより、吸収の方が近い表現かもしれないけどね。」
「え?俺声に出てたか?」
「やっぱり図星みたいね。魂から感じていたわよ。ウェズを心配する気持ちが。」
「ボクにも分かったよ。」
マジかそれ。強い感情はバレるんだろうか?
そういえば魂の繋がりで思い出したけど、視覚共有っていうスキルを獲得できる魔道具をまだ使っていなかったな。
魂の繋がりがある相手同士の視覚を共有できるスキルだが、リーアがスキルを獲得できるのかどうか分からないままだったから放置しており、そのまま忘れてしまっていた。
ナシヤットに戻ったら、とりあえずリーアが魔力探知を獲得できるか試してみよう。モウラヘイラを倒したから経験値は手に入っている筈だ。視覚共有はそれからだな。
何回かの休憩のうちの一回で携帯食を食べ、昼食を済ませる。アルバルトさんの呼び出しが何かは分からないが、どうせ依頼だ。長くなるような依頼だと、携帯食生活に戻らざるを得ない。
ニックも同じ感じなのだろうが、強くなり過ぎも良くないものだ。本当に、面倒だ。
グルシュの壁を通り、シィ砂漠を猛スピードで走り抜け、ピソイム平野を通り、40時にはナシヤットの街の明かりが見えてきた。途中でちゃっかりシイタルを3匹狩った。これは高価で売れるのだ。
とりあえず今日はお風呂に入り、食事処で簡単に夕食を摂って寝た。なんだかんだ一日でこの距離は辛いのだ。
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