150.旗、建てるべからず
総合ポイント500pt達成、ありがとうございます!
今後も頑張っていきますので、よろしくお願いします!
「結構あっさり終わったわね。」
俺が地面に落ちたモウラヘイラを無限収納に仕舞っていると、テイルがフラグにしかならないような事を言った。こういう雰囲気の場所では駄目だろ・・・
「よし、ボクの方も終わったよー。」
リーアが村人の糸を切り終えたみたいだ。───切った?
「うわぁぁぁ!」
村人を支えるものは無くなり、案の定高さ約5mから落下している最中だった。リーアや俺だったら落ちても大丈夫だが、ただの村人は大怪我かそれ以上になってしまうだろう。
「加重ァァ!」
咄嗟に村人を空中で止める。ギリギリセーフだ。
「リーア!もっと考えて行動してくれ!」
「ご、ごめんって・・・」
「はぁ、ふぅ、助けて頂きありがとうございました。それにしても、あいつをあんな簡単に倒してしまうなんて、凄いですね。」
「いやぁ、それ程でも。」
「それじゃ、帰ろっか。」
リーアが元来た道の方を向き、俺と村人もそれに続く。
「おいテイル、帰るぞ。」
しかし、呼び掛けてもテイルは上を向いたまま動かない。何やってんだか。
「おいテイル。」
「ハ、ハルカ・・・あ、あれ・・・!」
この後俺は、この光景を見ずに帰れば良かったと心の底から思うとともに、果たしてフラグを建てたのはテイルなのか、それともフラグの話を持ち出した俺なのかと考えることになった。
「リーア、その人を守っていてくれ。できるな?」
「・・・なるほど。了解だよ。」
「ひぃぃ!?何ですかあれ!?逃げましょう!?」
村人は腰が抜けてしまったのか、座り込んでしまった。
木の上から俺達を睨む無数の赤い目。モウラヘイラ1匹なら目は4つなのだが、今回は少しわけが違う。数十、いや、百を超すかもしれない目が、薄暗い森の中で目立っている。───つまり、20かそれ以上の大量のモウラへイラがいるのだ。
「・・・ハルカ、どう戦う?」
「これだけ数が多いと、基本魔法だろうな。下りてきてくれればありがたいけど、もし高いところに居るようだったら頼む。ただ、あいつらの攻撃は少しでも掠れば毒が全身に回る。自分の身の安全を一番に考えていてくれ。」
「分かったわ。」
俺達は強い。といっても、モウラヘイラはBランク。攻撃を一度でも受けたら死ぬ可能性大。しかも数が多く、戦場は敵のホーム。十分に注意しながら戦わなければいけない。
無限収納から再度剣を取り出す。攻撃強化の効果で橙色に輝くそれは、赤に対する希望の光のように感じる。
「行くぞ!射氷!」
こういう時に加重がそのまま使えれば、木の上から引きずりおろせるんだけどなぁ・・・。とか思いながら吹雪を展開していく。
森が凍ってしまわないか心配だが、これだけ太くて生命力が強そうな木々なら大丈夫だろう。
───グrr・・・
吹雪を受けてモウラヘイラ達が木を伝って一斉に降りてきた。距離が遠すぎたか、氷への耐性を持っているのかは分からないが、吹雪でのダメージは無いように見える。
「いくよハルカ!物体操作!」
剣を握り直し、モウラヘイラに向かって物凄いスピードで飛んでいく。
「りゃっ!はぁっ!」
ざしゅ、ざしゅっ!
木の近くを飛びながら脚を切っていく。勿論近づけまいと脚で攻撃してくるが、テイルが上手く躱してくれている。
「閃光!閃光!―――輝塊!」
脚が長いので、雷で牽制と攻撃しながらでないとすぐに攻撃を喰らってしまう。左後ろの奴の脚を切り落としながら遠くの奴には光線をお見舞する。
「おっりゃぁ!」
体を回転させてモウラヘイラを体から切り刻んでいく。隙を見せると続々と集まってくるので、そのまま後ろ向きに飛びながら実戦初使用の魔法を使ってみる。
「風刃!」
空気の刃を飛ばす、風属性の低位魔法だ。上位は風切刃といって、大きさと切れ味が段違いになる。そして、殲滅魔法である暴台巻鼬斬は、風切刃が吹き荒れる竜巻で相手を一気に倒すものだ。
つまりこの殲滅魔法の一歩手前、恐らく風刃の竜巻だと予想して放った。
魔法は予想通り、竜巻にまで強化され、集まってきていたモウラヘイラ10匹程を一瞬でバラバラにした。
「ハルカ!後ろ!」
上手くキマって悦に浸っていると、テイルが叫んだ。そうだ、敵はまだまだいるのだ。急いで後ろを向くと、モウラヘイラがすぐそこまで迫っていた。テイルの考えと俺の動きが一致しなかったのだ。
「絶断壁!」
俺とモウラヘイラの脚の間に壁が現れ、なんとか攻撃を受けずに済んだ。
「このやろっ!」
壁の効果が切れたところで、脚を剣で真っ二つに切り開いていく。そのまま刺す!
ざしゅ・・・
よし次だ。今度は上の方に2匹!
「輝塊!闇塊!」
二色の光線が捻り合いながら体のど真ん中を貫いていった。だいぶ減ってきたが、まだまだいる。リーアと村人を狙う奴もいるが、リーアが村人を掴んで逃げているので攻撃を当てれないでいる。しかも、大きな隙を作りながら。
「テイル!リーアの方だ!」
「分かったわ!」
モウラヘイラに見つからないよう地面スレスレを高速で飛んでいく。テイルの事を信用しているから良いが、少しでも下に行けば体中を地面に擦り付けることになる。
「よっ!はっ!こっち!」
地面に居る奴の足を次々に切り、倒れてくる前に体の下から脱出する。そして次、次。二人を襲っていた5匹が立っていられなくなったところで、空中から一気に仕留める。
「風刃!」
「ありがとうハルカ!」
「リーアもお疲れ。」
だが俺にはまだ仕事がある。あと1匹、ずっと木の上にいて一向に降りてこない奴が居るのだ。
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