149.異様な木
書きたいネタが増えてきました。
ウェズを放ってから2時間ほど経っただろうか。何の進展も無いまま、森の中を歩き回っていた。魔力探知に最大限集中して何かないか探しているのだが、ここまでに見つかったものといえば、スライムが二匹だけだ。リーアが倒して、素材は無限収納に入れてある。
しかしここで、転機が訪れた。
「クァァ!」
「ハルカ!ウェズが帰ってきたよー!」
木の上に居たリーアが真っ先に見つけ、地上の俺に報告してくる。俺も魂の繋がりで感じていた。ウェズとの繋がりは、テイルやリーアと比べて、結構強く感じられるのだ。
木々の間をすり抜けて俺の腕へと戻ってきた。と思ったらすぐに飛び、西側の木にとまった。ちなみに何故方角が分かるかというと、俺は、方角が分かる方角確申とかいう使いどころ無さそうなスキルを持っているのだ。
「もしかして、付いて来いって事か?」
「クァ。」
「分かった。リーア!ウェズに付いていくぞ!」
「了解だよー。」
ここから西に進むと、王都とは反対側だな。ロンド領の西に誰かの領地があるのか、グルシュ王国の西端まで繋がっているかは知らないが、仮に他の貴族の領地だったら面倒なことになったりしないか心配だ。
ウェズに導かれて進んでいくと、徐々に森の雰囲気が変わってきた。長草や低木は無くなり、木も大きく、太くなっている。巨木、といったかんじだ。低めの枝も無く、リーアは地上に降りてきていた。
木の間隔が広いので何の支障もなく動けるが、20m程ある巨木の上の方では葉が生い茂り、森の中への光を遮っている。
「ハ、ハルカ、ちょっと不気味じゃない・・・?」
リーアが俺の服の裾を掴んでくる。確かに不気味だ。光が遮られて暗いことに加え、湿度も高くなっている。木の間隔が広いので遠くまで見えるが、暗さと静けさが相まって、森がどこまでも続いているかのようだ。見やすい視界が余計に恐怖を煽る。
ウェズは何の迷いもなく飛び続けている。それだけを頼りに西へ向かって進んでいく。
―――っ!
魔力、それも魔物の放つタイプだ。それと同時に、ウェズが俺の腕にとまった。
「お疲れウェズ。休んでてくれ。」
ずっと飛び続けて疲れただろう。最も安全な休憩場所、俺の魂の傍へと帰っていった。
「ハルカ!テイル!あれ見て!」
リーアが指さした先には、無数の魔物が木の幹にくっついていた。正確に言えば、貼り付けられていた。あれは・・・糸?
魔物は様々な種類がいる。ゴブリン、ツノネズミ、一番驚いたのはグレイバスまで貼り付けられていることだ。しかも全部生きたまま。魔力探知に反応したのはこいつらだったのだろう。
「でも・・・これ、何だ?」
「分からないわ。ハルカ、ちょっと近付いてみて。」
「危険な役割って俺に回ってくるの?」
「当たり前でしょ!」
はぁ、と溜め息をつきながら魔物に近づいていく。
「―――ぃ!ぉーぃ!」
ん?何か聞こえた気がしたけど、気のせいだろうか。
「ぉーい!ここだよ!助けてくれ!」
上から人の声!?急いで見上げると、地上から5mぐらいのところに人が貼り付けられていた。辛うじて顔は糸の捕縛から外れているようだが、体は動かせないようだ。
恐らくあの人が探していた村人だろう。何故こんな事になっているのかは知らないが、生きていてよかった。
「い、今助けます!リーア!」
「任せて!」
リーアが一跳びで村人の近くまで行き、幹に爪を立てながら糸を切っていく。
「ボク達が来ましたから、もう大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。ですが、あなた達は一体・・・?」
「東の方の村から昨日の夜薬草を採りに出掛けた人ですよね?」
「そ、そうです!」
「ボク達はその村から依頼を受けた冒険者なんですよ。」
「そうでしたか!本当に、ありがとうございます。」
「でも、何でこんな事に?」
「それはですね、この―――う、うし、後ろ!奴が!奴が来ました!」
リーアはまだ村人の糸を切り終わっていない。村人がいう奴とは何なのか、目線を追って上の方を見ると・・・
「モウラヘイラだな。リーア、そのままやっててくれ。」
「はいよー。」
モウラヘイラが糸を伝って木の上の方から下りてきていた。よくよく見ると、木の一番上の方には蜘蛛の巣のように糸が張り巡らされている。
モウラヘイラは、リーア達の集落へ向かっていた時に出会った巨大なクモだ。確か、攻撃に毒が含まれているのと、炎の耐性があったな。というか、4m以上ある巨体のくせに、普通のクモみたいに糸の上を歩けるのかよ・・・
「敵は下にも居るんだけどな。余所見は良くないぞ!闇塊!」
強化された闇の光線が俺の掌から放たれ、モウラヘイラの体を貫く。
「まだまだ!閃雷!」
───GRrr・・
モウラヘイラがバランスを崩し、糸に捕まる形になった。足での攻撃は来ない。あとは心臓を一突きしたいのだが、高さが若干届かない───ことはないのだ。
「テイル!」
「物体操作!」
テイルの手の動きに連動して空中を走る俺は、無限収納から剣を取り出してそのまま止めを刺した。
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