148.行方不明者
明日か明後日から毎日投稿に戻ると思います。よろしくお願いします。
ムーディさんから魔法辞典を貰い、部屋を出ようとした時、扉をノックする音が聞こえた。
『スミでございます。今、よろしいでしょうか。』
「あぁ。入ってきてくれ。」
がちゃ
「失礼します。おや、ハルカ様もいらっしゃいましたか。ムーディ様、村からの要請が入りました。」
村からの要請、というのは村人から冒険者派遣の要請が来た、ということだろう。前回俺がここに来た時も、ゴブリンが出たとかで一騒ぎあったからな。
「何があったんだ?」
「昨日の夜森に薬草採集に出掛けた男性が行方不明だ、と。恐らく、魔物に襲われたとみて良いでしょう。」
薬草を取りに行って行方不明、か。確かにあの森は、迷って出て来られなくなるような場所ではない。仮に森の奥深くまで行っていれば別だが。魔物に襲われて、殺されたか捕まっているかだろう。
「分かった。すぐにギルドに連絡を・・・するまでもないな。」
そう言ってムーディさんは俺を見た。まあそうなるだろうな。
「ハルカさん、依頼、受けて頂けますか?」
「はい、勿論。」
「でしたらハルカ様、応接室へお願いします。まだ村人は帰っていないと思いますので。・・・あ、うちの領の村人はロンド家の皆様と同じく、亜人へ特別な感情を持つ者はおりませんので、リーア様も同行なさって問題ないですよ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
応接室へと向かいながら、通話の腕輪で二階にいるテイルとリーアを呼ぶ。
応接室へ行くと、村人らしき格好の人とグリルさんがいた。二人に事情を説明し、テイルとリーアが合流したところで改めて村人に挨拶する。
その後、ゴブリンの時に村に向かった道と同じ道を通って村へと向かった。村に着くと前回同様、村長さんの家に招かれた。
「これはこれは冒険者の方々、来ていただきありがとうどざいます。テイルお嬢様まで?ということは、まさかゴブリンの時の・・・」
「はい。ハルカです。こっちは新しい仲間のリーアです。」
「はじめまして。よろしくお願いします、リーアさん。」
「こ、こちらこそ!」
ペコリ、とリーアが頭を下げる。
「それで、行方不明の男性がいると聞いたのだけれど・・・」
「そうなのです。実は、今の時期、夜間にだけ採れる薬草がありまして。それを採りに行った者が、帰ってこないのです。」
今の時刻は20時過ぎ。確かに、帰ってこないとおかしい時間だな。
「その薬草が生えているのは、森の入り口からどれぐらいの場所ですか?」
「だいたい、2,30分程奥に入っていった辺りだと思いますけど・・・」
「分かりました。では、すぐに向かってみましょう。」
「よろしくお願いします。」
村長との話を終えて家の外に出ると、5歳ぐらいだろうか、小さな女の子が話しかけてきた。
「おとーさんはいつかえってくるの?」
「ん?あ、えーっと・・・」
俺は小さい子の対応は苦手なのだ。言葉に詰まっていると、後ろからテイルに肩を捕まれ、グイッと引かれた。そして、俺と入れ替わるように女の子の前に出たテイルは、しゃがんで目線を合わせた。
「おとーさん、まだかえってこないの。」
「お父さん・・・森に行ったの?」
「そう。きのういってらっしゃいしたの。でも、まだかえってこないの。まいごかな?」
「お父さんは私達が連れてくるから、心配しなくても大丈夫よ。」
「ほんと?おねーちゃんといっしょに、かえってくる?」
「ええ。任せて。でも、少し待っててね。」
女の子の頭を撫でながらテイルが優しい声で言う。
「うん!まってる!」
女の子の顔が明るくなった。やっぱりこういうのはテイルが適任だな。というか、魔物と戦っている時と別人のような優しい声だな。
女の子と別れ、三人で森に向かう。
「こりゃあ、失敗するわけにはいかないな。気合入れていくぞ!」
「えぇ。絶対見つけてみせるわ。」
「で、でも魔物に殺されちゃってる可能性も・・・」
「・・・できるだけ急ぎましょう。」
森の中は明るいが、木の本数としては多いので、すぐに村への視界は遮られた。さらに丈が高い草や低木も多く、進みにくい。
「ボク、木の上から見てみるよ。」
「分かった。」
リーアが道を木の上に移した。高い所から探した方が何か見つかる可能性は高い。だが、周りと同じ高さだと、木の葉っぱに遮られるんじゃないかな・・・もっと高い所から・・・そうだ!
「ウェズ、出てきてくれ。」
「―――クァッ!」
「ウェズ、今行方不明の人を探しているんだ。空から、何か変な場所がないか探してくれないか?」
「クァ。」
コクンと頷き、飛び去っていった。恐らく理解できているだろう。空を飛ぶ魔物もいるので若干怖いが、何かあれば魂の繋がりで気づくことができる。
何か見つけて帰ってくる時も、魂の繋がりを利用して俺の所まで来てくれるだろう。
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