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145.古びた本

一日の時間が倍になればいいのに。

 次の日の朝、朝食をご馳走になった俺は、魔法部屋を借りた。リーアやテイル、ルイルは恐らく、書斎か、卵のところにいるのだろう。だが俺は、気になることがあったので魔法部屋へと向かった。


「えーっと・・・あっ!これだこれ。」


 昨日魔法部屋に来た時、本棚の中に、ある一冊の本を見つけていた。その本の背表紙には『魔法辞典』と書かれているが、俺の知っている魔法辞典とは見た目が違うのだ。本棚から取り出して表紙を見てみると、やはり違う。


「古いのかな・・・」


 古い本独特のサラサラ、フカフカとした感触と、茶色く色褪せた見た目から、そうとう古い本だと予想した。今にも崩れてしまいそうなボロボロのページを1枚1枚丁寧にめくっていく。


 最初の方はいつも使っている魔法辞典と特に違いは無かった。強いて言えば、数個、書いてある内容が少ないぐらいだ。ただ、1枚ずつ順番にめくっていってので、確認したことのなかった風属性などを見た。後で色々試してみよう。



「あれ、まだあるのか?」


 まだある、というのは、力属性の先にまだページがあったのだ。今まで使ってきた魔法辞典は、属性ごとにまとめて書かれ、力属性を最後に終わっていた。この魔法辞典も属性で分けられていたのだが、力属性の先にまだ項目があり、その項目がまた問題だった。


―――≪光属性≫


 そう、第一魔法8属性に加え、第二魔法の光属性が載っていたのだ。

 前にニックと話したとき、第二魔法の発動方法について『感覚でやればいいんじゃないか?僕もそうやっている。』とか言っていたから、この魔法辞典みたいに書いてあるものがあることを知らないだろう。


 光属性の先には予想通り、闇属性、そして時属性の魔法が載っていた。これでついに時属性の魔法が使える!


 光属性の通常低位魔法は、塊輝(シャイニーボール)、上位魔法は、光熱線(ヒート・レイ)、殲滅魔法は、包覆流輝光龍フラシエ・ルシ・ヴィット。闇属性の通常低位魔法は、塊闇(ダークボール)、上位魔法は、闇暗線(オペーク・レイ)、殲滅魔法は、喰覆蝕深闇龍スコルド・シン・ノータというらしい。


「さてと、どれから試してみるk・・

がちゃ「ハル兄いるです!?」


「うぉぉっと!何だルイルか。脅かすなよ。」


 いきなり魔法部屋の扉が開き、ルイルが入ってきた。


「それどころじゃないです!ハル兄、急いでヘイ姉の部屋に行くです!」


「ヘイルさんの?」


「あの卵が光ってるんです!」


「はぁ!?わ、分かった。すぐ行こう!」



 魔法辞典を本棚に返す暇もなく、とりあえず無限収納(スナフ)に入れ、急いでヘイルさんの部屋に向かう。

 部屋の前に来ると、扉の下の隙間から光が漏れ出ていた。


がちゃ


 部屋の中にはテイル、ヘイルさん、リーアがいた。


「連れてきたです!」


「どんな状況だ!?」


「あっ、ハルカ!ルイルありがとう。これを見て!」


 毛布に大人しく包まっていたはずの卵はむき出しになり、青白い光を放っていた。この感じる膨大な魔力で、想像創造(クリルティエイト)のように乗っかっていた毛布をどかしたのだろうか。


「何が始まるんだろうね!」


 固唾をのんで見守っているヘイルさんとは対照的に、リーアは一人興奮している。


「何が起きるか分からない。いざってときは俺が盾になるから。」


 そう言って俺は一番前に行く。何が起きるか分からない、というのは本当だが、実は一番前で見たいという欲望も半分混じった行動だ。

 と、数秒光り続けた卵だったが、


―――シュゥゥン・・・


「あれ、光が消えちゃったです?」


「どうしたのかな?おーい、卵さーん?」


 リーアが指先で突こうと、俺の後ろから体を乗り出した。次の瞬間、俺は今までとは比べ物にならない魔力の波動を感じ取った。


「リーア!危ない!」


―――カッッッ!


「「「うわっ!?」」」


「眩しいです!」


「みんな後ろに!」


 卵が完全に光の球に覆われた。一体何が起きているのだろうか。



――――――クァ・・・


 ん?何か聞こえたような気がした。


――――――クワァ!


 やっぱり聞こえる!―――しかしその正体は、すぐに分かった。卵を包んでいた光が消えるとそこには、小さな銀翼の鳥、精霊の子どもが、ちょこんと座り込んでいた。小さいが、瞳が大きいことを除けば、爪も嘴もしっかりと鋭い。


「うわぁぁ〜!可愛い〜!」


 リーアが近付こうとするのを左腕を伸ばして遮る。


「落ち着け。攻撃してくるかもしれないだろ。」


「大丈夫だって。」


「まぁまぁ。」


 それから10秒ほど、俺と精霊は睨み合っていた。いや、睨んでいたのは俺だけで、精霊はその大きな瞳で見つめていただけだった。


「・・・大丈夫そうだな。」


「ハルカ、撫でていい?撫でていいよね?」


「あぁ。」


 リーアは座ったままの精霊をそっと両手で包み、膝の上に持ってきて撫でている。しかしその間、何故か精霊はずっと俺のことを見てくるのだ。


「でもこの子、放すんでしょ?」


 テイルが聞いてくる。勿論、最初からそのつもりだった。無事に孵ったわけだし、早めに自然に戻すのが良い。


「えぇ〜!?嫌だ〜!」


「ルイも撫でたいです!リー姉!」


 身長小さい組は小さい精霊を気に入ったみたいだ。だが、自然の中で暮らす動物は、人間で言えば物心がつく前に自然に返すべきだ。


「精霊が・・・産まれた・・・」


 ちなみにヘイルさんは一人、感動で違う世界に行っていた。

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