144.精霊
忙しい時期に入り、一日一投稿が辛い状態です。一週間程、二日に一投稿に変更させて頂きます。
「精霊・・・?」
「精霊っていうのはね、魔物と同じように子を作り、命を繋いでいくわ。ただ、決定的な違いがあるの。」
答えてくれたのはヘイルさんだ。恐らくあの図鑑もヘイルさんのものなのだろう。
「違い?」
「魔物は、魔力を持っているの。ただ、精霊は、その体が魔力そのもの。魔力が体を形作っているの。」
魔力の体、か。だから倒した時に光の粒子となって消えていったのだろうか。強い魔力を感じたのも、そういう理由だろう。
「精霊はそれぞれに属性があって、この精霊みたいに複数の属性を持つのは珍しいの。」
「それにね、精霊の存在自体、伝説レベルなの。この本も、古い言い伝えや歴史書から、見た目や、属性を予想して書かれているだけなの。」
テイルが、ずいっ、と近付きながら補足してくる。地球でいうユニコーンやドラゴンのような、幻獣のようなものなのだろう。だとすると確かに凄いことだ。興奮するのも分かる。
「それにしても強かったよねぇ。最初ハルカの魔法が効かなかった時は、ボク達の負けかと思ったよ。」
「そこよ!精霊に出会っただけでもあり得ない事なのに、精霊を倒して卵を持ってきちゃうなんて、普通じゃないわ!」
「そういえば、卵はどこに?」
「あそこよ。」
ヘイルさんが指をさしたところには、毛布が山のようになっている。恐らくあの中に卵があるのだろう。ちゃんと温めているようで何よりだ。
もしこの卵の事をギルドに言おうものなら、研究材料にされる事間違い無しだ。それはつまり、この命の死を意味している。そんなことはさせないし、しない。
コンコン
「ヘイル様、よろしいですか。」
「えぇ。」
がちゃ
「おや、皆さんお揃いで。お食事の準備が整いましたので、お伝えに。」
「そう。ありがとう、スミ。それじゃあ食べに行きましょうか。」
――――――――――――――――――
夕飯はやはり美味しく、また人数も多いので更に美味しく感じた。
食べ終わった後、ルイルはもう眠くなってきたというのでお風呂に行き、俺とテイル、リーア、ヘイルさんは読書タイムだ。
ムーディさんやアイリスさんや執事の二人は、俺達がお客さんだから一番風呂は譲るのが常識だ、とルイルに言っていたが、そもそも俺達のいる所でそういう話をする時点で、固い雰囲気ではない。俺達も本を読みたいので、ルイルに先に入ってもらった。
屋敷の書斎に行き、精霊に関する本を探す。あの卵が凄いものだと分かったら、どんどん興味が湧いてきたのだ。
俺はさっきの精霊大図鑑を読んでいる。歴史書で分かっているものが書かれていると言っていたが、そのせいなのか、図鑑だとすると結構薄い。
「水属性、水属性、地属性・・・火と雷―――闇と風・・闇!?」
「どうしたのハルカ。急に大声出して。もう夜よ?」
「ご、ごめん。いや、闇属性の精霊がいてさ。」
そこに書いてあったのは、持ってきた卵の精霊と色が違うだけのような見た目をした闇属性と風属性をもつ精霊だった。黄色い目に真っ黒な体、黒光りする羽。鶏冠ではなく、白い螺旋状の角が一本生えている。尾羽は長く、日本で言えばオナガドリのような感じだ。こちらは先端にかけて暗い紫へとグラデーションがかかっている。
ちなみに、別に精霊全てが鳥型、さらに言えば鷹型なわけではない。今話に上がってきた二つが、たまたま鷹型だっただけで、ヘビ型やキツネ型など色々いる。
「ハルカ君、闇属性を知っているの?」
「えぇ。」
「そうなの?あまり勉強されない範囲だと思うんだけど・・・」
「まぁ勉強というか、闇属性の魔法が使えるので・・・」
「―――は?」
ヘイルさんがポカーンとしている。自分が聞いた言葉が信じられないのか、しばらくフリーズしていた。
「で、でも、ハルカ君って【旅人】よね?闇属性の魔法が使える【職業】なんて、上位職の【呪術師】ぐらいしかない筈よ!」
「お姉ちゃん、ハルカに常識は通用しないわよ。」
「・・・そうね。」
なんだろう。何故か分からないけど少し悲しい。俺って諦められているのだろうか。
その後も精霊に限らず色々な本を読んだ。いつのまにか46時を過ぎた頃、グリルさんが『いい加減寝て下さい!ご健康によろしくありません!』と言いに来た。それでようやく遅くまで読んでいたことに気付き、寝る準備を始めた。
リーア、俺、テイル、ヘイルさんの順でお風呂に入った。本への集中が無くなったことと、体が温まったことで、すぐに夢の中へと落ちていった。
感想、誤字報告、ブクマ登録、高評価、お願いします!