133.クリア
短いです。すいません。
宝箱のあった場所は少し広くなっていたので、ボタンを中心に3人で円を作り、悩んでいた。ボタンをどうするべきか悩むと共に、内心結構焦っていたのは俺だけではないだろう。
「押した方が良いのかな?」
「いや、不正解の方を押したら、罠の威力が上がるんでしょ?そんな危ない事しないでいいじゃない。」
―――っ!
「加重!」
そんなことを言っていると、俺達の背後、歩いてきた道から何かが飛んできた。空間座標を固定して空中で止めたそれは、数十分前に見たポイズンスライムの体の一部だ。つまり、猛毒の液体が飛んできたということだ。
「ギルドがこんな事して良いのかよ・・・。Eランク冒険者なら本当に死ぬぞ?」
「ハルカ君、確かに毒液も問題だけど、その空中で静止しているのは更に訳が分からないわよ!?」
「いや毒液の方が問題ですよ・・・」
ひゅん!ひゅん!ひゅひゅひゅん!
飛んでくる猛毒液の塊は一つでは済まなかった。何十発と俺達に向かって飛んでくる。
「プ、絶断壁!」
魔力の壁を大きく張り、道を塞ぐ。魔力障壁を毒素が貫通しなかったことは運が良かった。
「とっ、とりあえずどっちかボタンを押して!」
「え!?押すの!?」
「押せば止まるかもしれないだろ?強くなっても防げるし!」
「どっち!?」
「あー、青!」
「青!?本当に!?」
「じゃあ赤!」
「どっち!?」
「青!」
「分かったわよ!」
ぽちっ
リリーが青いボタンを押す。果たして止まってくれるか、強まるか・・・
シーン
「正解、か?」
地面に並行に降っていた猛毒の雨は、ボタンを押すことで止んでくれた。道を塞いでいた絶断壁を解く。
同じ場所で止め続けたせいで、地面には結構大きな水溜まりならぬ毒溜まりが出来てしまった。天井が低いので跳び越えるのは難しいだろう。吹雪で凍らせるか?
「ハルカ君、ここは私が。どうせ吹雪で凍らせようとか考えているんでしょうけど、それは駄目よ。風で毒液が飛び散っちゃうからね。」
完全に見透かされていた。確かにそう言われれば、飛び散ってしまうな。
「これを使うのよ。粘土!」
ソフィアさんが魔法を使うと、泥、ではない。粘土が現れた。それも、次々に出てくる。粘土はその名の通り、消費した魔力分粘土を作り出す、地属性の魔法だ。
結構な量を出したところで、ソフィアさんはへたり込んでしまった。
「はぁ、ふぅ、魔力切れちゃった。まだやる事はあるのよね・・・」
「いえ、十分ですソフィアさん。あとは俺が。想像創造!瞬間補強!」
ソフィアさんが出した粘土に魔力を流し、操って毒溜まりに放り込む。毒はそこまで深さが無いので、すぐに粘土が表面に出てきた。そしてその粘土を補強し、歩けるようにした。
「ソフィアさんの考えている事とは違ったかもしれないですけど、通れはしますよ。」
「いいえ。流石ね。こっちの方が耐久度も安全度も高いわ。」
「そうだ、ソフィアさん。ちょっと手を繋ぎましょう。」
「「はぁぁっ!?」」
ソフィアさんは唐突な誘いへの単純な疑問。リリーは絶望の色が濃く混じった悲鳴のような聞き返し。完全に誤解されている。
「いや、違いますよ!?魔力譲渡ですよ!魔力譲渡。」
「えっ?あ、あぁ、魔力譲渡ね。お願い。」
ソフィアさんと手を繋ぎ、魔力を渡す。その間リリーがずっとジト目、いや睨まれている?
「ありがとうハルカ君。ところで、私のMP値も高いと思うんだけど、満タンまで渡せるハルカ君ってどうなってるの?旅人よね?」
「いや旅人ではありますけど・・・」
まぁ転生者なので、ねぇ。
――――――――――――――――――
その後粘土でできた道を通り、出口を目指した。まだ行っていない所に行っても良かったのだが、目的の巻物は手に入れたので帰ることにしたのだ。帰りの道ではポイズンスライムと普通のスライムが一体ずつ出てきたが、リリーが倒した。
ダンジョンの外に出た時は24時を少し過ぎていた。思っていたより相当早く終わったな。まぁこれで、ダンジョンクリアだ。
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