128.灼熱の砂漠
雨は嫌ですね。でも、雨が無いと植物は枯れてしまう・・・そうだ!自分がいる空間だけ雨を降らせない機械を作ればいいんだ!
なんて考えている今日この頃のYOPPYです。
魔銅板が示している時刻は24時。スカラピアが出てくると予想している時間帯だ。気温は5~60℃にまで上がり、薄着ではあるが直射日光を避けるための長袖長ズボンとタオルを頭に巻き、万全の装備だ。携帯食を口の中に放り込み、涼しいテントの中から暑い外へと出る。テントは立てた状態を保持したまま無限収納に仕舞い、スカラピアを探して移動を始める。
「ハルカ―、喉乾いたー。」
「はぁ!?もう残ってねーよ!」
「何でよ!?」
「お前が飲み干したからだろうが!」
そう、無限収納の中にある水筒には、もう一滴も水が残っていないのだ。俺は全く飲んでいないのに、だ。さっさと2匹倒して帰らないと、死活問題だ。
しかし、もう2時間以上歩き回っているのにも関わらず一向に見つからない。
しかし、その時がついにやってきた。テイルの魔力探知の隅に反応があったのだ。
「来た!来たわよ!ハルカ、反応よ!」
「本当か!?」
捜索範囲を広げるために少し離れて歩いていたが、急いでテイルの傍まで行くと、確かに隅の方に反応が感じられた。
「ナイスだテイル!行くぞ!」
魔力探知の範囲はそこまで広くない。それこそ隅の方の反応でも、目を凝らせば何かがあることは十分に確認することができる。視界の奥になにかを捉え続けながら一直線に走って近づいていく。
近づいていくに連れて、そのなにかがはっきりとしてきた。ラッキーなことに、それはスカラピアだった。しかも2匹!
「テイル、そっち任せたぞ!」
「オッケー!」
日光浴をしていたらしいスカラピア達も俺達に気付いたらしく、戦闘態勢に入った。攻撃強化の効果でAPが一時的に上がる。今回は、テイルの邪魔をしない為と、剣の腕を磨く為、魔法を使わないというルールを自分に課す。
無限収納から剣を取り出し、構えながら一気に突っ込む。
―――キシキシキシ!
はさみの付いた尾を伸ばし、俺を挟もうと狙ってくる。それに対して俺は走るスピードを落とし、わざと攻撃させ、剣で防ぐ練習を始める。
がきっ! がきっ!
がきっ!
「・・・遅いな。十分反応できる。悪いがお前じゃ練習にならない。」
足に力を込め、頭上から迫ってくるはさみを後方に残して一瞬で間合いを0にする。
ざしゅっ
―――キシィァァァ!
スカラピアの腹の下から頭にかけて剣を振り上げて斬る。血が噴き出て、すぐに息絶えた。
さて、テイルはどうか・・・
「えいっ!やっ!あぁもう!APが足りない!」
流輝鞭で何度も叩きながらスカラピアからの攻撃は物体操作で飛び回ることで避けていた。やはり攻撃の強い意志がある尻尾は操れないのか、スカラピアの体や地面をスキルの指定先にして自分を操っていた。ダメージは入っているものの、時間がかかりそうだ。と、唐突にスカラピアの目の前に降り立った。当然、スカラピアからの攻撃は続くわけだが・・・
「あんた、そろそろ倒れなさい!これでも、喰らえっ!」
バァン!
日本で普通に生きていれば直接は聞くことのない音。強いて言えば映像の中としての音という感覚しかないそれは、こちらの世界に来たことで生で聞く機会ができた音。銃声。テイルにプレゼントとして渡していた魔力銃の発砲音。テイルの腰についていたそれは、テイルの判断で魔力の弾を発射し、スカラピアの体を頭から貫いた。
急なテイルの奇怪な行動により、はさみからテイルを守るために走り出そうとしていた俺は、その行動の無意味さに気付きその場で止まった。体に穴を開けられたスカラピアは、力なく倒れることとなった。
「やったっ!倒せた!私一人で倒せたわ!」
テイルがぴょんぴょんと跳ね、全身で喜びを表現しながら近付いてくる。何はともあれ、依頼達成だ。
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ナシヤットのギルドに帰ってきたときには既に日が傾き、空は朱く染まっていた。ちなみにスレム大森林を通ったときに、いつも通りパウパティが出てきたので倒しておいた。
「すいません、依頼の達成確認をお願いします。」
「はい。それでは、魔銅板を・・・はい、少々お待ちください。―――達成条件の3匹、確かに。では、こちらが報酬です。」
6000シェルを受け取り、訓練所へと向かう。さすがに今から特訓はしない。では何故かって?魔物の解体をするためだ。無限収納の中には今、結構いろいろ入っているのだ。
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全て解体し終わり素材を売ったところ、32000シェルになった。そういえばレオムストロフと遭遇した時、ニックはギルドの報告すると言っていたな。メギジージンの事も報告した方が良いだろう。テイルは疲れたから先に部屋に戻ると言い、俺は受付に向かった。
「何か御用でしょうか?」
「あの、今支部長はいらっしゃいますか?」
「アルバルト、ですか?申し訳ございません。アルバルトは只今外出中でして・・・」
ったくあいつは、こういう時に居ないんだから。
「あ、それじゃあ伝言って頼めます?」
「ええ。構いませんよ。」
「では、シィ砂漠にメギジージンが出た、とお願いします。ハルカが言ってたって。」
「承知いたしましt・・メギジージン!?Sランクの!?」
おっと、これは予想外の反応だ。確かにテイルによると、Sランクとの遭遇=死、という認識らしいから、無理もないか。今回は運良く生き延びただけなので、案外間違っていないのだが。慌てる受付の人を尻目に、お願いします、と再度言って部屋に戻ろうとする。―――が、誰かに肩を叩かれた。
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