12.手加減
皆さん、インフルエンザには気をつけましょう。
「ハ、ハルカ…?何やったの?」
いや、俺が聞きたいぐらいだ。俺は、テイルに言われた通りのイメージで、ちゃんと『ファイアボール』と言った。それなのに、俺の目の前で起こっているのは明らかに違う。
俺のMPが高いからだろうか?―――いや、魔法の威力にMPは関係しないんだよな・・・
テイルがどんどんとページをめくっていく。―――そして、手が止まる。
「た、多分これよ!今発動したのは、上位魔法の炎獄。上位魔法の中では簡単な魔力操作で発動出来るらしいけど、難しさは桁違いだし、そもそも塊炎とは魔力の動かし方は全然違うの。それに、詠唱が必要ないなんてありえないわ!」
うん。俺も、自分がこんな凄そうな魔法を操れるなんて思ってない。本を見せてもらうと魔力の操作経路のイメージが描いてあったけど、こんな複雑なもの、覚えようという気にもならない。
「もしかして、これもハルカが異世界から来たから、なのかな?」
「その可能性はあるな。」
でも自分で制御できないのは困る。下位魔法も使えないと、限られたスペースでの戦闘に不利だ。
「ハルカ、じゃあ、魔力を出来る限り抑えながら同じように撃ってみて。」
「塊炎!」
今回は力を抑えるようにやってみた。抑えるといっても、イメージする光の線の進むスピードをゆっくりにしたり、イメージする熱の温度を低くしたりしてみるので合っているかは分からないけど。
――――――ただ一つ言える事は、俺の塊炎の発動に合わせて、炎獄が発動したという事だけだ。
「もう訳がわからない・・・」
「ま、まあ、上位魔法を簡単に使えるのは凄いメリットよ。自信を持って!」
「いやでも勝手に威力が上がるって……」
「使いどころは考えないといけないかもね。」
全く、ステータスが高いのは良いとして、使い勝手の悪いチート能力だな、これは。・・・他の魔法も試してみるか。
「テイル、他の魔法も試してみたいんだけど。」
「そうね、やってみましょうか。じゃあ、射氷とかは?私も使えるから、教えやすいわ。」
「じゃあそうするか。」
「ええ。魔力のイメージは、氷柱を作りたい数の分、魔力の塊を作って、それらを尖らせて、発射!一緒に冷気をイメージすることも忘れないで。」
確かに塊炎と少し似てるかもしれない。今度はどうなるか・・・
「射氷!」
うん。大体予想はできてたよ?やっぱり氷柱は発射されなかったね。で、その代わりに何が起きてる?狙ったところとその周りに、2mぐらいの氷の針が何本も地面から出てきたね。あんな尖った氷が急に地面から突き出してきたら、串刺しは免れられないな。
テイルは事前に上位魔法のページで待機していたのか、ページをめくる事も無く、
「今のは貫氷ね。これも上位魔法よ。これで分かったわね。ハルカは、魔法の威力が勝手に上がっちゃう性質で、制御もできない、と。」
そういえばMPの減りが低位魔法程だ。なんだこのチート能力。もともとMPの多い俺に渡したらいけないやつだろ。
さすがに上位魔法の詠唱をしてみるほど勇気は無い。いつか必要になるかも知れないが、なんとなく屋外でやった方がいい気がする。
「あとは、補助魔法がどんな風になるかも確認したいわね。灯光をやってみましょう。魔力を集中させて、そのまま外に出す感じよ。」
「分かった。―――灯光!」
掌を上に向けてそこに魔力を集中させると、これは上手くいった。俺の手の上で灯りが点いている。・・・少しテイルよりも光が強い気がするけど、変な風に変わったりしないならそれで良い。テイルがやっていた地面への固定も成功した。
「よし、あとは、防御魔法が使えるようになりたいんだけど。」
「そうね。私も使えないから、一緒に練習するわ。やっぱり、一番簡単で効果もある防御壁かしらね。」
二人で本を見てみると、
『魔力でそのまま壁を作る感覚、広げ過ぎたり、魔力の壁が薄いと失敗する。必要なMPは30。』
と書いてある。
「うわ…防御壁ってそんなに魔力が必要なの?私が使おうと思ったらMPほとんど取られるじゃない。」
そんなことをテイルが呟いた時、俺は同じページに書いてある、二人の人が手を繋いで魔力が流れている絵に目が行っていた。
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