127.見張り
短いです。すいません。
「何!?何かあったの!?」
テイルが物凄い勢いでテントから飛び出してきた。
「・・・何よこれ?」
テントの前に広がっている火の海を眺めて、呆れたようにこぼした。
「ちょっとベムに感動シーンを破壊されてな。力が入った。」
「だからってこんなにすること無いでしょ・・・。魔力を感じて飛び起きたら、こんな阿呆な話ある?ていうか寒くない?よく平気で居られたわね。」
寒いなんて感じないが、それは恐らく恒温変移のお陰だろう。ただ、そんなことを言えばあと6時間外に居させられることになる。黙っておこう。
「よし、丁度良い。テイル、交代な。炎は放っておけばそのうち消えるから。じゃ、おやすみ。」
「えっ・・・ちょっ、ちょっと!待ちなさい!物体操・・」
テイルが引き止めようとしてくるのを素早くテントの中に入る事で回避し、すぅっと眠りにつく。約束の4時間には数分及んでいないが、まあ良いだろう。
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「ハルカ起きて。起きなさいよ。ハールーカー!」
「なんだ、騒がしいな。」
「交代の時間よ。それと、お腹空いたから携帯食ちょうだい。」
そうか、そういえば疲れていて忘れていたが、夜ご飯を食べていなかったな。
「携帯食も良いけど、どうせならタイラメでも焼いて食べるか?」
「いや、面倒だし良いわよ。」
「そうか?」
そういうなら別にいいのだが。無限収納から携帯食を二粒取り出し、一つをテイルに渡す。俺も口に放り込み、見張りの交代のためにテントの外に出る。
「じゃ、おやすみ。」
また見張りの暇な時間がやってきた。空には薄く雲がかかってしまい、星も見えない。本当に暇だ。―――砂漠、砂・・・砂のお城・・・そうだ!砂のお城を作ろう!
この時すでに眠いせいで思考がおかしくなっていたが、そんなことは気にしない。時間を潰す事こそが、するべき事なのだ。
「想像創造!」
テイルの妹、ルイルが魔動弾の形を変えていた魔法だ。地面の砂に常に魔力を流し続け、その魔力を形作ることで砂も一緒に形作られていく、というやり方だ。魔力は少しづつではあるものの常に減っていくが、俺のMPをもってすれば特に問題は無い。
数十分かけて、納得の行く形に仕上がった。魔力に重力は関係ないので、重力を無視した装飾や、普通ではできない細かな装飾もできた。
「うん、久し振りに作ったけど、案外できるもんだな。」
久し振り、なんて、小さい頃に海で手を使って作ったものの事だが、それとはそもそも作り方が違う。だが、そんなことを気にしているようでは、一人前の砂職人とは言えない。・・・砂職人って何だろう。駄目だ。眠い。
魔力の流れを切り、テントの前に戻ってまた見張りを続ける。
「ずっと座っているのも疲れるな。」
そしてゴロン、と横になったら最後、一瞬のうちに眠りの世界へ落ちてしまった。起きた時には既に日が昇っていた。
「おっと・・・やっちゃったな・・・」
幸いにも眠っている間に魔物の襲撃は無く、テイルはずっとテントの中で眠っていた。砂漠の夜は0℃、氷点下まで下がることもあるが、恒温変移で体温がちょうど良いところで保たれたお陰で風邪はひかなかった。スカラピアが出てくる昼までは暇な時間があるが、何をしようか。
がさがさ
「おーいテイル?そろそろ起きたらどうだ?」
テントの中に顔を突っ込み、テイルを起こす。4人用の広いテントの筈なのに、体を大の字に広げてテントのほとんどを埋め尽くしていた。
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